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日立製作所経営陣の本棚をのぞき見 CTO、CSO、CDEIOの愛読書は……IT経営者の本棚(3/3 ページ)

今をときめくIT・Web関連企業の経営者の本棚や愛読書をのぞき見。現代社会で戦うIT経営者たちがどんな考え方に影響を受けているのか、ヒントを探る。今回は、日立製作所経営層の本棚や愛読書をのぞき見る。

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中田やよいデジタルシステム&サービスCDEIO兼コネクティブインダストリーズCDEIOの本棚

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中田CDEIOの本棚・愛読書
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中田CDEIOの本棚・愛読書
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中田CDEIOの本棚・愛読書
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中田CDEIOの本棚・愛読書

読んでいる本についての全体的な傾向

 マンガ、ミステリ、小説、絵本・ティーン向け、ビジネス実用書──面白そうだと思えば、ジャンルを問わず手に取る乱読派です。娘たち(14歳と16歳)に読ませたくて買った本も結局自分が読み、思いがけない深い学びや新しい世界の扉が開く体験につながることもしばしば。読書は、そんな宝物のような時間を日常にもたらしてくれます。

印象に残っている本

 マンガは私にとって上質な娯楽であると同時に、社会課題や多様な価値観や生き方といったテーマが、時にコミカルに時にシリアスに描かれるーその表現の自由さが魅力だと感じています。「チ。地球の運動について」 (魚豊作)は、命を懸けて信念を貫く人間の強さ、世界中を敵に回してでも守りたいものを持つことの尊さを描き、心揺さぶられます。

 「おっさんのパンツがなんでもいいじゃないか」(練馬ジム作)では、“他人事”だったはずの出来事が自分の中に入り込み、自分の“ふつう”が突如揺さぶられ、やがて、静かに自分がアップデートされていく過程がコミカルに描かれ共感を誘います。「リエゾン」(ヨンチャン・竹村優作)「ハネチンとブッキーのお子さま診療録」(佐原ミズ、北岡寛己作)は子育ての奥深さや葛藤、そして小さな希望がストーリーの中に丁寧に織り込まれ、どれも大人に読んで欲しい“著書”です。

 次にご紹介したいのは「日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学」(小熊英二著)です。外資系企業で働いてきた私にとって、“日本型雇用”とされる仕組みを体系的に理解するのに大きな助けになりました。

 “欧米型”との成り立ちの違い、そして日本型雇用は戦後から1970年代にかけて築かれた比較的新しいものであること。「一人の稼ぎ手で家族が十分な生活を営める世帯」は全体の1/3を超えたことはない事実。今、その「大企業型」に属する人口は減り続け、つまり、日本のこの仕組みは20%くらいの企業とその従業員によって築かれ支えられてきたが、もはや「日本全体」がその仕組みを支えきれない現実があります。最後に投げかけられる、「勤続10年のベテランシングルマザーのパートと昨日入った高校生のバイトの時給が同じな事を、あなたはどう考えるか」という問いを、深く考えます。

 そして「100年の旅」(ハイケ・フォーラ著)。絵本でありながら哲学書のようなこの一冊は、0歳から100歳まで、1年ごとに1ページ、短い一文と挿絵でつづられています。100歳のページは空白──人生とは結局何か、その答えを自分自身で紡ぐための余白が残されています。私はまだそこに言葉を持たず、時折この本を開いては、自分や娘たちのこれまで、と、これからをおもい、ほっこりしたり、涙ぐんだりしています。

 娯楽としての読書の中に、世界の見え方が変わる瞬間や、知らなかった世界や価値観が突然目の前に現れる、そんな体験があるから、私は今日も本やマンガ(ほとんどKindleですが……)を手に取ります。

プロフィール

 外資系金融・外資系製薬会社を経て、2022年10月日立製作所入社。Hitachi Groupの経営基盤や持続的成長を下支えする組織カルチャー変革、特に「多様性を力に変える」「インクルーシブを全ての社員の自分ゴトに」のマインド形成や行動変容に従事。インクルーシブ行動目標の全社員必須化や、ボトムアップ活性のためのEmployee Resource Group(ERG)制度の立ち上げを遂行。社員一人一人が「個」の違いを尊重し合いながら、自分らしく働き最大限の力を発揮できる組織カルチャー醸成に取り組む。


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