Nature掲載で“身バレしたVTuber”でも話題──最古のパキケファロサウルス類「ザヴァケファレ・リンポチェ」発見 その謎とは?(1/3 ページ)
恐竜の一種「パキケファロサウルス類」の新属新種の化石が見つかった。ほぼ全身がそろっていることや胃石)を含んでいたことなど、重要な発見を伴っている。今回の研究で明らかになった事実を解説する。
恐竜の一種「パキケファロサウルス類」と言えば、分厚い頭蓋骨を持つ種としてよく知られています。しかし、多くの化石が頭蓋骨しか残されていないこと、祖先とみられる恐竜と数千万年ものギャップがあることから、その生態や進化には大きな謎が残されていました。
米ノースカロライナ州立大学とモンゴル科学アカデミーのチンゾリグ・ツォクトバートル氏(Tsogtbaatar Chinzorig)などの研究チームは、モンゴル国、ゴビ砂漠にて発掘した化石が、新属新種のパキケファロサウルス類「ザヴァケファレ・リンポチェ(Zavacephale rinpoche)」だったと発表しました。
ザヴァケファレは約1億800万年前と、これまでに知られているなかで最も古いパキケファロサウルス類です。また、ほぼ全身がそろっていることや胃石(恐竜が消化のために飲み込んだ石)を含んでいたことなど、他にも重要な発見を伴っています。ザヴァケファレの発見と特徴に関する研究は科学誌「Nature」に掲載されています。
余談ですが、今回の発見を報告した論文の第2著者に岡山理科大学の高崎竜司氏がいますが、高崎氏は恐竜研究者のVTuber「古知累すすむ」としても活動しています。
論文掲載が優れた科学者としての登竜門とみられることもあるNature誌に掲載されたこと、掲載によってVTuberでは比較的禁忌とされる身バレ(?)してしまうというギャップ、名前が「竜を司る」と読めるユーモラスから、研究の発表時には高崎氏(古知累氏)のYouTube解説動画やX(旧Twitter)のポストには大きな反響がありました。
頭突き恐竜「パキケファロサウルス」は謎が多い
「パキケファロサウルス類(堅頭竜下目)」とは、白亜紀に生息した恐竜のグループです。名前には「厚い頭を持つトカゲ」という意味があり、その名の通り頭蓋骨に特徴があります。ドーム状の頭頂部の厚さは25cm前後にもなり、地球に存在した最も“石頭”な動物の1つです。また、ドームを囲むようにいくつかの装飾のような突起があります。
分厚い頭蓋骨を持つこと、ドーム状の頭頂部に多くの傷が見られることから、パキケファロサウルス類は仲間同士で頭突きをし合っていた可能性が非常に高いと指摘されています。その理由は、群れの中での順位を決定するための行動手段だったのかもしれません。
また分厚い頭蓋骨は脳を保護するのに役立ったのでしょう。あるいは、ドームそれ自体やそれを囲む装飾が、繁殖相手に対するアピールに使われたかもしれません。これらの特徴から、数多くの恐竜の中でも比較的知名度が高く、パキケファロサウルス類をモチーフとした生物は、ゲームや映画にも多数登場しています。
一方、これほど知名度のある恐竜であるにもかかわらず、パキケファロサウルス類は多くの謎に包まれています。その大きな理由は、化石記録の不完全さです。パキケファロサウルス類の化石はアジアや北アメリカで見つかっており、かなり多くの種類が記録されています。
しかし、ほとんどの化石はドーム部分しか残っておらず、身体の他の部分はわずかしか残されていません。このため「仲間同士で頭突きをし合う」という説は、かなりの支持を受けているとはいえ、異論がないわけではありません。また支持する側でも、どのような姿勢で頭突きをしていたのかに議論があり、正確なところは未解明のままです。
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