スマホのハイエンド撮影で直面するストレージ不足 外付けSSDを“自分で作る”という選択肢はいかが?:小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(2/2 ページ)
昨今、スマートフォン向けSSDがじわじわと人気のようだ。iPhoneもAndroidもUSB-C端子になり、背面に磁石が付いたことにより、SSDの仕様が共通化できるようになったこともあるだろう。昨今4K撮影が当たり前になったことで、ファイルサイズが飛躍的に大きくなったからではないかと思われる。そこで「自分で作る外付けSSD」という選択肢はいかがだろうか。
実際にどう運用できるか
米Blackmagic Designが提供している「Disk Speed Test」というツールを使用して、パフォーマンスを計測してみた。使用マシンは米AppleのMac mini M4で、前面のUSBーCポートを使用している。
リードの方が若干速いが、概ね800MB/s強という結果になった。そもそもMプロセッサのMacは、Thunderboltを主体に考えているのかUSBポートは速度が出ないので、約64%減というのは妥当なところである。
実際にBlackmagic designの6Kカメラ、Blackmagic PYXIS 6Kを使って撮影テストしてみた。6048×4032ドットのBlackmagic RAW、圧縮率3:1で撮影してみたところ、トータル3時間20分、無事容量いっぱいまで止まることなく記録できた。
一方で、スマートフォンでの撮影時にSSDを使いたいという人は多いだろう。クリエイターだけでなくプロでも、特殊撮影時に薄型カメラとしてスマートフォンを使うということも増えている。
先日iPhone17シリーズが発売されたが、その際にiPhone 17 ProおよびPro MAXでは、新たにApple Prores RAWの撮影に対応した。FinalCut Camera2.0およびBlackmagic Cameraにてサポートされる。Blackmagic Cameraでは、以前からApple Prores 422 HQまではサポートしており、外部ストレージに対しての直接録画にも対応している。今後、シネマ撮影の中でiPhone 17 Proシリーズが使われることになるだろう。
あいにく筆者の手元には私物のiPhone 16eしかないが、Blackmagic Cameraを使えばApple Prores 422 HQまでの撮影は可能だ。試しにSSDに対して直接録画してみたところ、4K解像度では数秒で停止した。
これはもっともな話で、iPhone 16eのUSB転送速度はUSB 2.0 相当、すなわち480Mbps=60MB/sしかないので、USB転送速度がボトルネックになっている。4K Apple Prores 422 HQはVBRなので、ビットレートは撮影条件で変わってくるが、概ね4K/30pで110MB/sぐらいと言われているので、全く足りないわけである。
一方解像度をHD/30pに落とすと、ビットレートは概ね27.5 MB/sまで下がるので、USB2.0でも対応できる。iPhone 17 ProシリーズはUSB 3クラス(10Gbps)搭載と言われており、発表時はスマホにはオーバースペックだと叩かれたりもしたが、4KのApple Prores RAWを外部ストレージに直書きすることを考えれば、USB 3クラスの採用は妥当である。
他方でAndroidのスマートフォンでも、ハイビットレートで撮影する可能性はある。機種の中には光学で高倍率レンズを搭載するものがあるため、iPhoneとはまた別のメリットがある。
こちらでもBlackmagic Cameraを使えば、外部SSDに対して直書きできる。コーデックはH.265にはなるが、ビットレートは最高240Mbps=30MB/sで撮影できる。
手元に米Google Pixel 10 XLがあるので、こちらも4K/30p撮影で試してみた。USBの規格的には3.2と言われているので、速度的には十分、仮にUSB2.0でも対応できるはずだが、こちらも何故か数秒で止まってしまう。
色々原因を探ってみたところ、どうもSSDに対する電力不足のようだ。SHARGEのケースにあるC2ポートにモバイルバッテリーを接続し、給電しながら撮影したところ、問題なく撮影できるようになった。つまり、スマホ側からの電源出力が足りてないということである。
このことから考えると、スマートフォンにSSDを繋いで直接記録する場合には、注意すべきポイントが3点ある。
- 記録コーデックとスマホ側のUSB規格のバランス
- 接続ケーブルの品質
- SSDに対する電力供給
もう1つ条件があるとすれば、SSDの冷却である。SSDケースの中にはファンを内蔵しているものもあるが、SHARGE Disk Plusの場合は冷却シートがアルミボディと密着して放熱するので、今回のテストでは問題なかった。炎天下の屋外でトラブルがあるようなら、SSDの温度も考慮すべき条件だろう。最近見かけたTipsとしては、小型の保冷剤を凍らせず常温のままで貼り付けるという方法があった。
外部SSDでの収録に対応しているデジタルカメラであれば、接続ケーブルの品質以外はカメラ側の仕様でクリアしているはずだ。一方スマートフォンでは、これまでそうした使い方を想定してこなかったので、撮影できるかどうかはユーザーの知識次第ということになる。
スマホでの外部SSD記録を計画している人は、上記の検証結果をよく確認して、準備していただければ幸いだ。
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