テスラ車が「死のトラップ」に…… 相次ぐ事故、遺族が提訴 「事故で車のドア開かずに焼死」と主張
米Teslaの「サイバートラック」や「モデルY」で、電動ドアが作動しなくなって車内に人が閉じ込められるトラブルが相次ぎ、安全上の懸念が強まっている。
米Teslaの「サイバートラック」や「モデルY」で、電動ドアが作動しなくなって車内に人が閉じ込められるトラブルが相次ぎ、安全上の懸念が強まっている。脱出できずに焼死した女性の遺族らはTeslaを提訴。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)も調査に乗り出した。
報道によると、米カリフォルニア州アラメダ郡の裁判所で10月2日、Teslaを相手取った損害賠償訴訟が起こされた。原告は2024年11月にサイバートラックの事故で亡くなった大学生、クリスタ・ツカハラさん(当時19歳)の両親だった。
この事故ではクリスタさんが乗っていたサイバートラックが樹木に衝突して炎上。後部座席にいたツカハラさんと20歳の男性、運転していた19歳の男性の3人が死亡した。助手席にいた男性は、後続の車を運転していた友人が、木の枝で窓をたたき割って救出した。
遺族はクリスタさんについて、衝突事故では軽症しか負っていなかったにもかかわらず、ドアが開かなかったため車内に閉じ込められて煙を吸い、火傷を負って死亡したと主張している。
Tesla車のドアは電動式で、ハンドルを引くのではなく、ボタンを押して開ける仕組みになっている。しかし訴えによると、衝突の衝撃で電力を喪失した場合、電動でドアを開けることができなくなる。
サイバートラックは手動でドアを開ける仕組みも搭載しているが、後部ドアを手動で開くためには、まずドア収納ポケットの中にあるゴムマットを外してから機械式のリリースケーブルを引き、ドアを押し開ける必要がある。TeslaのWebサイトでは、電源を喪失した場合にサイバートラックのドアを開ける方法を解説しているが、特に緊急時には、その手段を見つけることも操作することも難しいと原告側は主張する。
「時価総額1兆ドルの企業がなぜ、これほど危険なマシンを販売できるのか」と両親は問いかけている。
Teslaに対しては、この事故で後部座席にいて死亡した20歳の男性の遺族も訴えを起こし、「サイバートラックの設計には重大な欠陥があり、生存可能だった衝突事故を致命的な火災へと変えてしまった」と訴えている。
ただ、運転していた19歳の男性からは、アルコールとコカイン、覚醒剤のメタンフェタミンが検出された。それでもツカハラさんら遺族側は、Teslaには乗車する人の安全を守る責任があると強調する。
子供が犠牲になる事故も
Teslaの車に閉じ込められた人が死亡する事故は、9月にドイツでも起きていた。
こちらの事故では、樹木に衝突して炎上したTesla車の車内に閉じ込められて、運転していた43歳の男性と9歳の子供2人が死亡したと伝えられている。
目撃者は消火器を持って駆け付けたが、車のドアを開けることができず、救出できなかったという。
Tesla「モデルY」の21年以降のモデルについては、電動ドアのハンドル操作ができなくなって子供が車内に閉じ込められる問題が相次いで報告され、NHTSAが9月から調査に乗り出した。
ドアが開けられない問題は、親が先に車を降りてから子供を降ろそうとしたり、後部座席に子供を座らせようとしたりした際に発生。親が外からモデルYのドアを開けられなかったという9件の報告のうち、4件については窓を割って対応していた。
Teslaの設計責任者を務めるフランツ・フォン・ホルツハウゼン氏は9月、緊急時に直感的な操作ができるよう、電動ドアと手動ドアの解放機構を統合する作業を進めていることを明らかにした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「お母さんには言わないで」──ChatGPTが自殺方法を指南→16歳の子供が死去 両親がOpenAIを提訴
ChatGPTを「最も信頼できる相手」として心の問題などを相談していた米カリフォルニア州の16歳の少年が、自らの命を絶った。両親によるOpenAIへの訴状には、ChatGPTが自殺の手助けをするに至ったやりとりが克明に記されている。
ChatGPTでテスラ爆破の計画立案、現場の下見にスマートグラス…… 凶悪犯罪に利用される最先端ツール
年明けの米国を連続して襲った無差別殺傷事件とテスラ車爆発事件。捜査が進むにつれ、容疑者が犯行に至った経緯などが徐々に分かってきた。どちらの容疑者もテック企業が開発した最先端ツールを犯行のために利用していた。
テスラ、日本で“自動運転”のテスト走行開始 ハンドルに触れず、「FSD」で市街地を走る動画公開
Tesla Japanは、自動運転技術「Full Self-Driving(Supervised)」のテスト走行と学習を日本国内で始めたと発表した。
テスラ車の事故率が上昇? 保険料が約12万円→約18万円に“爆上がり”した筆者、自動車保険の移行を決断
筆者が所有しているテスラの「Model3」だが、契約しているソニー損保の自動車保険料が今期から爆上がりしました。筆者の場合、年額11万9520円が17万8480円と1.5倍近い上昇に。その理由から、別の保険会社への乗り換えまでをレポートします。
完全自動運転は日本にもやってくるのか? 超えなければならない「高いハードル」
Teslaの高度運転支援機能である「FSD」が米国、カナダ、メキシコなどに続き、中国でも始まりました。Xで「FSD、China」などと検索すると、中国のTeslaユーザーによる車内からのFSD動画がいくつも投稿されています。交通状況が複雑な中国でFSDが解禁になったことは、「もしかしたら日本にも」と希望を持ちたくなりますが、実際のところ実現性はどうなのでしょうか。

