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クマ被害、AI生成の“ニセ再現映像”TikTokやXで広がる 100万回超表示の動画も(1/2 ページ)

TikTokやXなどで、人里に現れたクマの様子を再現したフェイク動画・ジョーク動画の投稿が広がっている。実際の目撃映像やニュースを引用したように見せかけながら、生成AIで作られたとみられる映像を投稿する例が目立つ。

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 各地でクマによる人身被害が相次ぐ中、TikTokやXなどで、人里に現れたクマの様子を再現したフェイク動画・ジョーク動画の投稿が広がっている。実際の目撃映像やニュースを引用したように見せかけながら、生成AIで作られたとみられる映像を投稿する例が目立ち、中には100万回以上表示されたものも。動画を現実の出来事を誤解するようなコメントも散見される。

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TikTokで「クマ」と検索すると、生成AIによる動画が上位に表示される(ユーザー名のみ編集部加工)

 投稿されているのは、高齢の女性が保育園からクマを追い払う動画や、クマがマンションの外壁をよじ登る動画など、ヒトの至近距離にクマが出現するインパクトの強い映像だ。ただし、いずれも動画内にOpenAIの動画生成モデル「Sora」の透かしが入っている。つまり実在しない映像だ。

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Soraで生成されたTikTok動画の例
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Soraで生成されたTikTok動画の例

 また、「スーパーにクマが侵入」「岩手の保育園で園児の昼寝中にクマが出現」といった実際に報じられたニュースに便乗し、それらの出来事を“再現”したとみられるAI生成動画も多い。全く存在しない事件を捏造するのではなく、「ニュースは本物、映像は偽物」という形で人々の関心を引いている様子だ。

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Soraで生成されたTikTok動画の例
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Soraで生成されたTikTok動画の例

 AI生成であることを指摘するコメントもあるものの、「怖い」「信じられない」といった反応が目立つ投稿もあり、事実との混同が懸念される。

 10月25日には、宮城県で実際に発生した「体長80cmのクマが柴犬をくわえて森に逃げた」との報道にあわせて、「自分のペットが襲われたらと思うとぞっとする」というコメントとともに、クマが柴犬を襲う15秒ほどの動画をXに投稿するアカウントも現れた。

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投稿された動画より。AIにより生成されたものとの見方が強い

 この投稿は約130万回表示されたが、動画内のクマにはツキノワグマ(本州に生息する唯一のクマ)特有の白い模様がなく、毛色も異なる。さらに、動画内の時間表示が実際の事件と一致しない点などから、「AIで作られた偽の動画」とするコミュニティーノートが付いた。

 Soraの透かしはないものの、「尻尾の形がツキノワグマともヒグマとも異なる」との指摘もあり、Xでは生成AIの関与を疑う見方が強い。投稿者は後に「ペット仲間から送られたもので、事件とは無関係」と釈明している。

 事実として報じられたニュースと、生成AIで作られた動画が結び付くことで、クマの危険性に関する誤解が広がる懸念もある。社会的に注目度の高い出来事を巡っては、フェイク動画の流通にいっそうの警戒が求められるといえそうだ。

「屋外にいた赤ちゃんにクマが襲い掛かり、ペットの犬や猫が果敢にクマを撃退する」というシチュエーションの、海外発の動画も目立つ

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