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大阪万博でも活躍、ドローンショー大手・レッドクリフの海外進出戦略 人気IP連携や個人向けショーで勝負ニッチ企業でもできる!IT活用で海外進出

ニッチ分野で目立たないものの、高い技術や世界シェアを持つ企業「グローバルニッチ」や、それを支える企業の声をインタビューで深堀りする。第6回はドローンショーの企画・運営を手掛けるレッドクリフ(東京都港区)を取り上げる。

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 世界でも高い技術力を持つことで知られる日本企業。ニッチ分野で目立たないものの、高い技術や世界シェアを持つ企業は少なくない。ドイツの経営思想家のハーマン・サイモン氏はこうした企業を「隠れたチャンピオン」と定義し、経済産業省も「グローバルニッチトップ企業」として支援している。

 グローバルニッチは高い技術力を持つ一方で、知名度が実力に比べて劣り、ITを駆使して海外でのブランディングや販売に生かしていることも多い。この連載では、こうした企業のIT戦略をインタビューで深堀りする。

 第6回はドローンショーの企画・運営を手掛けるレッドクリフ(東京都港区)を取り上げる。同社は日本のアニメなど人気コンテンツとのコラボや6000機を超えるドローンなどを武器に海外進出を始めている。CGなどの実務経験を持つスタッフも豊富で、ショーの繊細な表現も強みだ。

 同社の佐々木孔明社長は「世界一のクオリティーのドローンショーを目指したい」と話す。聞き手は、海外進出する中小企業のブランディング支援などを手掛けるZenkenの本村丹努琉(もとむら・たつる)。

年内に海外本格進出、IP連携で「新しいショービジネス」挑戦

──レッドクリフはドローンの大型ショーなどを手掛けています。概要と強みを教えてください

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佐々木孔明社長

佐々木社長:当社はドローンショーの企画・運営を手掛ける会社で、私が創業しました。学生時代にドローンを持って世界をまわり、ドローンビジネスへの関心が強まったことがきっかけでした。

 当時、ちょうど外資系ドローン企業が日本でのオープニングスタッフを募集しており、正社員として入社しました。その外資系企業で知識や技術を磨き、2019年に会社を設立しました。創業時はテレビや映画、ミュージックビデオ、ゴルフ場などの空撮に携わりました。

 同年に東京モーターショーの仕事に関わった際、米国のチームがドローンショーをやっており、10分間のショーで数千万円もの報酬を得ていることを知りました。ドローンショーは、複数のドローンで企業のロゴや観光コンテンツを表現できます。「これなら企業スポンサーがつき、ビジネスになる」と考え、ドローンショーを手掛けることにしました。今年の大阪・関西万博でも毎日、ショーを実施しました。

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レッドクリフのドローンショー

 当社の強みの一つは6500機ものドローンを保有していることです。また、ゲーム、CMのCG制作や建築の3DCGソフトの実務経験10年以上というスタッフが5人以上おり、ドローンショーで繊細な表現が可能なことも強みです。アニメ、ゲームなどの知的財産(IP)コンテンツを保有する会社との関係が密であることも特徴です。

──すでに海外でもドローンショーを受注していますね

佐々木社長:フィリピンや米国など複数国でドローンによるクリスマスショーに携わりました。海外の大手企業の依頼で、アニメーションの技術が高いことが当社を選んだ理由になったようです。当社はクリスマスにちなんで1225機のドローンによるショーを企画しました。

 今後は早ければ年内に海外に本格進出するほか、企業向けだけでなく、個人向けのドローンショーも手掛けたいと考えています。現地法人を東南アジア、北米、中東に設立し、ドローンショーを受注していきます。

──海外に本格進出する狙いを教えてください

佐々木社長:日本ではドローンショーのシェア1位(富士キメラ総研「映像DX市場総調査 2024」)になることができ、次は世界一を目指したいと考えているためです。

 日本は世界的にも人気のアニメやゲームなどショーのコンテンツが豊富にあります。国内では予算が限られますが、特に海外での個人向けのショーは1日数億円規模などの大きなビジネスができると考えています。

──世界一といっても、売上高やブランドイメージ、ドローンの機体数などいろいろありますが、具体的には

佐々木社長:世界でも「ドローンショーならレッドクリフ」と第一想起される存在になりたいです。機体数ではなく、世界一のクオリティーのドローンショーを企画・運営できる会社だと評価されたいと考えています。

──3DやCGなどを使って繊細なドローンショーを企画しているということですが、海外進出にこれらの技術をどう活用していきますか

佐々木社長:ドローンショーは、それぞれドローンを個別にコントロールしているのではありません。全体の飛行イメージをコンピュータ上で構成した後、それぞれの飛び方や光り方などのデータを自動的にプログラムし、そのデータを使ってドローンを飛ばしています。

 このデータは電子メールでも送ることができますから、現地企業にデータを渡してドローンを飛ばすこともできるようになります。当社が現地に行かなくても、データ作成と送付だけで海外事業ができるわけです。

──完成したデータを渡すと、現地企業にノウハウを盗まれるリスクはありませんか

佐々木社長:渡すデータを編集できないようにする技術があります。データのファイルに適切な処置をすれば、再生しかできないようになるため、ノウハウを盗むことはできません。

──大量のドローンを飛ばしてショーを運営するわけですが、技術的に難しいところはありますか

佐々木社長:ドローンの機体数が増えると、1つのテーマが終わった後の移動時間が長引き、ショーが間延びしがちです。当社の場合は、数千機のドローンをAチーム、Bチームなどに分けて、AチームがショーをやっているうちにBチームが移動します。そうした工夫をすることで間延びしません。

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現場で作業するオペレーター

 また、ドローンショーを実施するためのソフトウェアにはAIが組み込まれており、ドローンが移動する際にぶつからないようにしています。今後は音や風によってドローンの色が変わるなど、よりインタラクティブ(相互作用)なショーも企画したいと考えています。

──ショービジネスを日本が海外へ輸出し、成功するケースは多くありません。難さはありますか

佐々木社長:芸能など従来のショービジネスは分かりませんが、日本のアニメコンテンツは海外で非常に人気があります。私たちは人気コンテンツとの連携を武器に、新しいショービジネスに挑戦したいと考えています。個人がエンターテインメントにお金を払う国で質の高いショーを実施すれば、十分成功のチャンスがありますし、日本の文化を発信することもできます。

著者プロフィール:本村丹努琉 Zenken取締役

通信機器販売やエネルギーコンサルティングなどのベンチャー企業3社で営業責任者として組織構築に従事。1人のカリスマだけに頼らない組織営業スタイルを確立し、収益増に貢献した。2009年に全研本社株式会社(現:Zenken株式会社)に入社し、ウェブマーケティングを担当する「バリューイノベーション事業部」(現:グローバルニッチトップ事業本部)の立ち上げに参画。コンテンツマーケティング黎明期から、オウンドメディアを基軸とした WEBブランディングを提唱し、14年間で約8000社のインサイドセールスを構築した。

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