検索
連載

日本にも「自動運転」がやってくる 先行する海外メーカー、国内勢は“いつか来た道”を回避できるのか走るガジェット「Tesla」に乗ってます(1/3 ページ)

米テスラと日産が相次いで日本国内での自動運転走行動画を公開。横浜や銀座の複雑な道をハンズオフで走る映像は衝撃的だが、技術の中身は大きく異なる。カメラだけのテスラ、センサー多数の日産。システムも自社開発のテスラと異なり、海外メーカー英Wayveのシステムを使う日産の動画は、日本の自動車産業の未来に警鐘を鳴らしているのかもしれない。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 「iPhoneにタイヤをつけたようなクルマ」と表現される米Tesla。IT・ビジネス分野のライターである山崎潤一郎が、デジタルガジェットとして、そしてときには、ファミリーカーとしての視点で、この未来からやってきたクルマを連載形式でリポートします。


横浜の一般道でハンズオフ運転を実現

 福音は突然やってきました。Tesla Japanが自身のXアカウントに「FSD (Supervised)」(監視付自動運転)の一般道でのテスト走行の様子を動画で投稿しました。走行場所は、横浜市のみなとみらい地区です。連載開始から4年余、記念すべき連載50回目にふさわしい話題として取り上げます。


工事による車線規制も自動で右ウインカーを出し車線を変え自然に切り抜ける。ベテランドライバーの運転を見ているよう

 監視付の自動運転なので、ドライバーが運転席に座り、ハンズオフ状態ながら両手をハンドルに対し8時20分の位置に置き、いつでも介入できるようにしています。自動運転のレベル分けに照らすとドライバーによる監視が必要な「SAEレベル2」に分類されるものと思われます。いわゆる「先進運転支援」というものです。

 動画では、直進、右折の矢印信号を認識し、路肩の駐車車両を避け、工事による車線規制では、後続車との間合いを測りながら右の車線にスムーズに合流します。初めての人なら迷いそうな大桟橋入口の変則的な交差点も難なく通過します。まさに、ついに来たか!という思いで、動画を何度も見返しました。ただし、「国内リリース時期は、弊社開発状況および規制当局の許認可に依存します」と明記されているので、一般ユーザーの車両への実装がいつになるのかは分かりません。

 また、「自動車基準調和世界フォーラム(WP29)」が2025年9月に運転支援に関する法基準UN-R171を更新しました。レーンキープ機能について規定したUN-R157と併せて許認可の環境が整いつつあります。

UN Regulation No 171 – Uniform provisions concerning the approval of vehicles with regard to Driver Control Assistance Systems (DCAS) [2025/1899]

 ただ、大手国産メーカーのある自動運転開発責任者は、「WP29の基準が現実の技術に追い付かなくなっています。SAEのレベル分け自体がそのうち意味のないものになるかもしれません」と耳打ちしてくれました。技術の進化にルールが追い付かないのはありがちな話です。LLMによるEnd-to-Endな開発手法がこれまでの常識を変えたのかもしれません。

 話をFSD (Supervised)に戻します。日本経済新聞は2025年10月11日、「テスラのAI自動運転、国交省『ソフト更新で後付け可能』 日本でテスト」というタイトルで記事を配信しました。記事中では、「保安基準を満たした新車と同じ性能であれば、販売済み車両に対して自動運転関連のソフトを更新できる」という国交省のコメントを掲載しています。

 期待は否が応でも高まります。オプション料金を支払えば、自車がOTAアップデートでFSD (Supervised)搭載車になります。ただ、筆者が所有するHW3という1世代前のコンピュータ搭載車には、最新のFSD (Supervised)は非対応という言説もあります。

 しかし、Tesla, Inc.の2025年第3四半期決算説明において、CFOのヴァイバヴ・タネジャ氏は、「私たちはHW3を諦めていません。彼らは、Teslaの目的を支えてきた重要な顧客であり、必ず対応します」とコメントしました。ぬか喜びにならないことを祈るばかりです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る