暗黒物質(ダークマター)がついに“見えた”? 天の川銀河で「よく似たガンマ線」、東大が発見
東京大学は11月26日、戸谷友則教授(天文学)が、天の川銀河(銀河系)の中心方向に、「暗黒物質」(ダークマター)が放つと予測されてきた性質とよく似たガンマ線の放射を検出したと発表した。もし確定すれば、「天文学・物理学史上の重大な進展といえる」という。
東京大学は11月26日、戸谷友則教授(天文学)が、天の川銀河(銀河系)の中心方向に、「暗黒物質」(ダークマター)が放つと予測されてきた性質とよく似たガンマ線の放射を検出したと発表した。宇宙に大量に存在するとされ、長年その正体が分からなかった暗黒物質を直接とらえた可能性がある。もし暗黒物質に由来する放射であると確定すれば、「天文学・物理学史上の重大な進展といえる」という。
戸谷教授は、NASAのフェルミガンマ線観測衛星が15年にわたって取得してきたデータを解析。銀河中心の方向から、およそ20ギガ電子ボルト(GeV)の高エネルギーガンマ線が、角度で30度以上の範囲にわたってぼんやりと広がっているのを確認した。
ハロー状に光るガンマ線放射の強度マップ(銀経は銀河面方向に測った経度、銀緯は銀河面から測った緯度。観測されたガンマ線強度マップから、ハロー以外の成分を除去したもの。銀緯±10度の銀河面領域は、天体起源の放射を避けるために解析から除かれた)
さらにこの放射の特徴を分析したところ、銀河を包むように分布し、その重力を担っているとされる暗黒物質の「ハロー」が放っていると考えられるガンマ線と、よく似た特徴が確認できたという。
ガンマ線は、X線よりも高エネルギーの電磁波で、通常は超新星爆発など極端な天体現象によって放たれる。だが、暗黒物質の有力な候補とされる仮説上の素粒子「WIMP」(ウィンプ)が対消滅を起こす際にも同様のガンマ線が出るとされることから、長年、暗黒物質が密集する領域からの放射が探索されてきた。
今回の研究では、天の川銀河の中心方向から60度の範囲に注目し、銀河面に沿った領域を除いて解析を実施。フェルミ衛星の最新15年分の観測データから、天体起源の放射を慎重に取り除いたうえで、暗黒物質由来の可能性がある放射を調べた。
その結果、20GeV付近で特に強く、他のエネルギーでは急激に弱まる球状の放射が見つかり、WIMPの対消滅から予想されるガンマ線の特徴とよく一致していた。放射強度から見積もった対消滅の頻度も、理論予想とおおむね合致していたことなどから、東大は「暗黒物質由来のガンマ線の有力な候補」としている。
事実として確立するには、さらなる検証が求められるといい、他の研究者による検証や、他の領域からの対消滅ガンマ線の検出などが検証の鍵となるという。東大は「今回の研究が、暗黒物質の正体解明の最初の突破口となることが期待される」としている。
論文は2025年11月25日付で、英国の学術誌「Journal of Cosmology and Astroparticle Physics」に掲載された。
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