中国発の詐欺広告に甘いMeta、数千億円規模の収入優先か ザッカーバーグCEO関与の疑いも(3/4 ページ)
中国からの詐欺や違法ギャンブル、ポルノ広告を一度は取り締まったMeta。しかしザッカーバーグCEOの関与により防止策が取り下げられた可能性がある。
不正助長の仕組み
Metaは中国で主に「第1級リセラー」と呼ばれる11の主要広告代理店を通して広告枠を販売している。これらの大手代理店は自前で広告枠を販売するほか、中国に拠点を置く小規模代理店を募集し、自社のシステムを通じてFacebookやInstagramの広告枠を購入させる。
一方でMetaや主要代理店と直接やりとりしない広告主と取引している「第2級」代理店もあり、結果的に仲介業者による不透明な仕組みが存在する。
内部文書や元従業員の証言、Metaが依頼したロンドンのコンサルティング会社Propellerfishによる詳細な報告によると、そうした仕組みが詐欺や違法ギャンブル、禁止商品の広告を助長しやすい環境を生み出している。
Propellerfishは、中国事業でなぜこれほど多くの不適切広告が出てくるのかを調べるためにMetaが24年採用した企業で、Metaの行動自体が不正を増幅させていると警鐘を鳴らした。
広告主がFacebookやInstagramに広告を掲載するには、ユーザーアカウントを作成しなければならないが、提供すべき情報は氏名と生年月日程度に過ぎない。ただPropellerfishの報告では、偽造・盗用アカウントが広く出回っており、詐欺的な広告主が身元を隠すのは難しくない。
さらに中国のテック企業は広告主の本当の身元を隠し、詐欺広告を無害に見せかけるツールも販売している、と報告書は指摘。Metaが広告主を確認しようとする場合に備え、AIツールで偽造書類を作成するケースもある。
このような状況を一段と悪化させているのは「広告最適化スペシャリスト」と呼ばれる業者で、Metaの取り締まりシステムの弱点を巧みに突いて、詐欺や禁止商品の広告を作成する。
報告書に基づくと、こうした怪しい広告キャンペーンはしばしば、ヤミ金融などが資金を提供している。
Propellerfishは、有害広告が中国国民を対象としていないため、中国政府も基本的には見て見ぬふりをしていると結論付けた。
他のソーシャルメディア運営企業も、中国では同じような広告代理店ネットワークを通じて広告販売をしている。しかしMetaは競合他社に比べても、中国での不正行為に対して取り締まりが甘い、とPropellerfishは指摘。例えばTikTokは「より厳格」で、米Googleは徹底した身元確認を求めていると分析した。
内部文書からは、Metaが中国の広告主に対して「寛大」な姿勢となる背景も見えてくる。
2月の内部文書には、中国には一部の広告主が安定した事業やブランド構築より短期的な利益を重視する環境があると書かれていた。また、「文化的要因」により、外国人を相手にする場合の非道徳的なビジネス慣行が正当化されているとの記述もあった。この文書には、Metaの幹部が中国の広告主による不正行為の比率が相対的に高まり続けるのを容認する方針を示したと書かれていた。

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