ビジネス向けにも影響? 9万9800円の「MacBook Neo」が突きつけた低価格PCの“新基準”(2/3 ページ)
3月11日に発売された「MacBook Neo」は、9万9800円からという価格にもかかわらず、実用性は想定以上に高い。iPhoneと同じA18 Proチップを搭載し、低価格PC市場に本格参入したAppleの一手は、WindowsはもちろんChromebookを意識したビジネス市場にも波紋を広げそうだ。さらにGoogleの新OS開発も迫る中、低価格PC市場の勢力図が動き始めている。
「長く使えるのか」という話はSSDが問題ではない
メインメモリが少ない分、MacBook Neoは他のMacに比べて仮想記憶を多用する。SSDが速いために速度低下は一定の範囲内で維持できている。とはいえ、大きなサイズのデータを扱い、多数のアプリを切り替えつつ使うと、仮想記憶の利用量がより増えるため、動作の遅さを感じやすくなる。プロワークには上位機種の方がいい、というのはこのためだ。
ただ、だからといってSSDの寿命が極端に短くなるかというと、「おそらくは問題ない」。というのは、2020年発売のM1搭載MacBook Proにも8GBモデルがあったが、それらでSSDの故障が多発した......という話はないからだ。少なくとも5、6年の使用であれば、問題は起きないと想定できる。
実際問題、個人市場向けPCでのSSDの故障は「書き込みの多発による寿命」よりも、コントローラーICや電源などの絡む事例の方がずっと多いとされている。その場合、故障確率が上位モデルと下位モデルで劇的に変わると想定するのは難しい。
むしろ課題は、「OSのアップデートなどは、8GBのモデルでいつまで問題なく続くのか」という点だ。1年・2年は確実に問題ない。5年も大丈夫かもしれない。だが、その先はどうか。
買ったら10年使い続けられる......とはいかないだろう。
教育市場以上に「ビジネスシーン」にも影響か
MacBook Neoは見事なバランスの製品だ。正直なところ、MacBook Airを購入していた層がMacBook Neoを選ぶのでは......と、競合を心配してしまうほどだ。
筆者としては、やはりメモリが16GBあるMacBook AirやMacBook Proをお勧めしたくはなる。MacBook Air(M5版)の価格はMacBook Neoの2倍近い。だが、性能は確実に2.5倍以上あるので、安心してより長く「現役」として使えるだろう。だが、そこまでを求めない人もいる。20万円という予算が出せても、あえて安価なモデルを選ぶ人もいそうだ。故障や紛失、盗難のリスクを考えると、持ち出すのは安価な機器にしたい......という人もいそうだ。
MacBook Neoは「教育市場向け」と言われることがある。実際、アメリカでは中学生から大学生までの層を狙っている。日本でもその層にはウケるだろう。
ただ、いわゆる「GIGAスクール」市場向けにはこれでも高価だし、求められる要件も違う。高校・大学などでの一括納入だとMacBook Neo以前のスペックで基準が定められており、その見直しがどこまで行われるのかはなんとも言えない。
なお、「iPad」とも競合するわけだが、あちらはカメラやペンなども重視した、もう少し年齢層が低いところでの教育市場をカバーしている。
そうすると、MacBook Neoは「親が自発的に子どもに買い与える製品」もしくは「ビジネスパーソンが自分の私物として買う」パターンが多いのかもしれない。またもちろん、学生自身が「学校の推奨を意識しないで買う」というパターンもありそうだ。
すなわち、意外と「ビジネス向けノートPC」の市場にも影響が出そう、ということになる。
低価格機種では他社との差がまた開く
もちろん、コスパが良ければ売れるという簡単な話ではない。OSがWindowsであることを求められる市場は多い。これまでMacを使ったことがない人も二の足を踏むかもしれない。
一方で、Windows PCでここまでのコスパが出しにくい部分があるのも事実だ。低価格な製品はあるが、それらは「いかにも低価格」な仕上げであることも多いし、完成度の面で疑問があるものもある。Windowsは多数のハードウェアで動かすが故に、8GBでは快適な動作が見込めない。
MacBook Neoの「8GB」というメモリ量が批判されたのも、Windowsでの経験から来る部分が大きいはずだ。
だが、米Appleは米Microsoftとは異なり、少数の自社製ハードウェアだけを対象にすればいいので、最適化も進めやすい。だからMacBook Neoは快適な製品になっているのだ。
結局のところ、6年前にAppleがMacを「Apple Silicon」に移行した時から、省電力性を含めた性能の面で、Appleは他のプロセッサメーカーに対して優位な面があったのは事実だ。
こういう話をすると「Apple信者」のように反応されそうだが、そういう話ではない。
事実Microsoftは、Apple Silicon搭載MacBookとの競合を重視し、同社のPC「Surface」シリーズで米Qualcommとの協業をすすめた。ビジネス的にはまだ成功したとは言えないが、Arm版Windowsを推進する動きは、Appleへの対抗心がなければ進まなかった。
米IntelやAMDも、消費電力と処理性能、GPU性能などでAppleシリコンを強く意識している。主に処理能力の点では、優位な部分が多くなっている。メインストリームとなる15万円以上の価格帯を考えると、Windows PCのコストパフォーマンスは決して悪くない。手のひらサイズのミニPCが増加しているのも、プロセッサの進化によるものだ。
ただ、今回MacBook NeoがA18 Proを採用したことによって生まれた「低価格機種での性能」という部分では、また差が生まれたように思う。
この点は、ハードメーカーとの協業による最適化を進めないと、競合は難しいかもしれない。単純に安い製品を作ることはできても、それが不快なものになっては意味がない。
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