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自民・山田太郎氏語る知財/無形資産活用 「技術作るだけでは勝てない」日本の勝ち筋は<前編>(2/2 ページ)

山田太郎参院議員が、知財・無形資産の活用を通じて企業価値の向上や日本経済の活性化を目指す一般社団法人「知財・無形資産ガバナンス協会」(菊地修理事長)の設立1周年式典で記念特別講演に臨んだ。力強い日本を作るには、「成長戦略、知財戦略、国際標準戦略の3つについて、どれも欠けてはいけない」と強調した。

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産経新聞
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「守る権利」から「稼ぐ資産」へ

 山田氏が繰り返し強調したのは、知財は「守る」だけではないという点だった。「特許や著作権を保有しているだけでは、企業価値には十分反映されない。市場や投資家、社会に価値として認識され、事業戦略の中で活用されて初めて、知財は成長のエンジンになる」との考えだ。

 そのための手法として、山田氏は、知財を起点に経営環境を分析する「IPランドスケープ」にも言及した。IPランドスケープとは、特許情報に市場動向や競合情報などを組み合わせ、自社の強みや競争環境を可視化する取り組みを指す。

 具体的には、社外に公開されている情報だけでなく、社内に蓄積された技術やノウハウ、事業データなどの非公開情報も整理し、自社がどの領域に知財を持ち、どの企業や研究機関と組めば競争力を高められるのかを見極める。知財を単なる権利保護の対象にとどめず、事業戦略や提携戦略に生かすことで、「守りの仕事」から「経営戦略の道具」へと引き上げる作業といえる。

 企業開示のあり方も問われる。山田氏は、知財・無形資産について、「上場企業の企業統治の指針となるコーポレートガバナンス・コードに沿った対応だけでなく、有価証券報告書など正式な企業開示の中で投資家に説明する仕組みを強化すべきだ」との考えを示した。投資家から見れば、企業価値の源泉である無形資産がどのように成長に結びついているのかが分からなければ、企業を適切に評価できないからだ。

 これは単なる開示制度の話ではない。「日本企業が利益を上げても、それが配当などを通じて投資家に流れるだけでは、賃上げや研究開発投資には十分につながらない」と山田氏。企業価値そのものを高め、成長ストーリーを描くには、知財・無形資産を市場に見える形にする必要があるという。

 山田氏の議論は、知財を企業価値、賃上げ、研究開発投資の循環に結びつけるものだった。知財を「守る権利」としてだけでなく、「稼ぐ資産」として捉え直すことが、日本企業に求められている。

国際標準に乗せて世界で稼ぐ

 もう一つの大きな柱が、国際標準戦略である。山田氏は、国際標準をめぐる世界の構図について、「米国は巨大企業と市場を背景に業界内の事実上の標準を押さえ、欧州は環境、人権、セキュリティなどの規制を通じてルール形成を主導している」と説明した。米国型のデファクトスタンダード(業界内の事実上の基準)と、欧州型のルールメーキング。その間で中国も国際標準化機関で存在感を強めている。

 この構図の中で、日本はどこに立つのか。山田氏の答えは明確だ。技術力だけでは足りない。どの技術を知財として押さえ、どの領域で国際標準を取りに行くのかを、成長戦略と連動させて考えなければならない。

 今回の提言で国際標準化が主要な柱として位置づけられたことにも、山田氏は意味を持たせた。従来はコンテンツ戦略の比重が大きかったが、今回は国際標準化が前面に出た。これは、知的財産戦略調査会として国際標準を重視している表れでもある。

 国際標準化は、抽象的な理念ではない。山田氏は、司令塔機能、産業界と省庁の迅速な連携、国際会議への参加、標準化人材の育成、認証機関や試験・評価機関の強化などを具体的な課題として挙げた。「闇雲に標準を取りに行くのではなく、成長戦略上の重点分野の中から、国際標準を押さえるべき戦略領域を見定める必要がある」という。

 この点で、山田氏は産業界の姿勢にも踏み込んだ。「海外企業が政府や政治家に積極的に意見を伝える一方、日本企業や業界団体は政策形成への働きかけが弱い」という問題意識である。政策形成の場に現場の声を届けなければ、制度設計に産業界の課題が十分反映されにくい。山田氏は「日本企業や関係団体に対し、生き残りと成長をかけて、もっと政策に声を上げるべきだ」と促した。

 知財戦略と国際標準戦略が結びつかなければ、成長戦略の効果も限られる。どれほど優れた技術を持っていても、知財で押さえられず、国際標準にも乗せられなければ、世界市場で主導権を握ることは難しい。逆に、知財を企業価値として見える化し、標準化を通じて市場形成に関与できれば、日本の技術は成長産業として世界に広がる可能性を持つ。

 山田氏は、政府と民間の役割も整理した。「政治と政府はルールや仕組みを整え、民間企業は知財・無形資産を自社の経営戦略に落とし込む。双方が動いて初めて、成長戦略、知財戦略、国際標準戦略は一体になる」との認識だ。

 山田氏の講演は、知財を単なる「守る権利」としてではなく、企業価値を高め、賃上げや研究開発投資につなげ、国際市場で稼ぐための中核資産として捉え直すものだった。「技術を作るだけでは勝てない。知財として守り、価値として見せ、国際標準に乗せて市場を取る」。その道筋こそが、山田氏の語る「日本の勝ち筋」である。(高橋天地)

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