クリエイター守らねば産業伸びない 自民・山田太郎氏語る日本のコンテンツ戦略 AI時代の権利保護にも言及<後編>(2/2 ページ)
前編で自民党の山田太郎参院議員は、力強い日本を作るには「成長戦略、知財戦略、国際標準戦略」の3つが欠かせないと訴えた。では、漫画、アニメ、ゲームなど日本発コンテンツを世界で稼ぐ資産に変えるには何が必要なのか。9日に開かれた一般社団法人「知財・無形資産ガバナンス協会」(菊地修理事長)の設立1周年式典での記念特別講演から、AI時代の権利保護、海賊版対策、正規版流通、クリエイター支援の課題を読み解く。
AI時代に問われる声と肖像の権利
さらに、AI時代には創作物の作られ方、使われ方が大きく変わる。声、肖像、演技、イラスト、文章などが、本人の意図しない形で利用される可能性も高まる。米国では、女優スカーレット・ヨハンソン氏が、生成AIの音声が自身の声に酷似しているとして問題提起した例もあり、声の権利をめぐる議論は国際的にも広がっている。
山田氏は「声の権利」にも触れ、「すべての声を権利化すれば社会が混乱する一方で、声優や実演家の声が無断で利用され、利益が本人に還元されない仕組みでは不十分だ」と指摘した。
声や肖像には、財産的な価値だけでなく、人格的な価値も含まれる。パブリシティ権、不正競争防止法、人格権、実演家の権利などをどう整理するのかは簡単ではない。だからこそ、山田氏は慎重な議論が必要だとした。
知財侵害時の損害賠償の実効性も課題になる。権利があっても、侵害されたときに実際に救済されなければ意味がない。損害額の算定や推定規定などを整え、権利者が現実に救済される仕組みを作る必要がある。これは、クリエイターを守るだけでなく、コンテンツ産業を持続可能な産業にするための基盤でもある。
山田氏の議論を読み解けば、コンテンツ戦略とは単に作品を海外に売ることではない。創作の担い手を守り、契約や対価を整え、AI時代の権利保護を設計することまで含む。クリエイターを守らなければ、産業は伸びないのである。
海賊版対策と正規版流通を両輪に
海外展開で避けて通れないのが、海賊版対策である。山田氏は、日本の漫画やアニメに海外で強い需要があり、作品が日本で出た直後に海賊版が出回ることもあると指摘した。
海賊版がすぐに出るということは、それだけ読みたい人がいるということでもある。海外の読者が必ずしも「お金を払いたくない」わけではない。正規版をすぐに読めない、買いにくい、翻訳が遅い。こうした事情が、海賊版利用につながる場合もある。
だからこそ、山田氏は海賊版を取り締まるだけでなく、「正規版を迅速に海外へ届ける仕組みが重要だ」とした。具体的には、翻訳、配信、決済、流通を整え、海外の読者が正規版にアクセスしやすい環境を作る。これは海賊版対策であると同時に、市場を広げるための戦略でもある。
一方で、権利侵害を放置すれば、日本側の収益機会は失われる。漫画やアニメ本編だけでなく、関連グッズ、カードゲーム、2次利用などにも収益機会は広がっている。海賊版を「宣伝になる」と見なして放置すれば、最終的に日本側が最も損をする。山田氏は、権利保護と収益回収の仕組みを強化する必要性を訴えた。
海賊版対策は、民間企業や権利者団体だけで完結するものではない。海外に拠点を置く違法サイトや、国境をまたぐ侵害行為に対しては、国際協力や刑事罰の実効性も問われる。山田氏は「国としてもクリエイターや企業が生み出した知財を守る姿勢を明確にする必要がある」とした。
文化資産を次世代へ残す仕組み
コンテンツを長期的な資産として残すためには、デジタルアーカイブも重要になる。漫画、アニメ、書籍、雑誌、制作資料、美術品、文化財などをデジタル化し、保存し、検索し、活用できる形にしていく。コンテンツは一過性の消費物ではなく、次世代に引き継ぐ知財・文化資産でもある。
また、スマートフォンやデジタルプラットフォーム上の公正な競争環境も欠かせない。コンテンツやサービスを届ける上で、スマホや配信基盤は重要なインフラになっている。一方で、特定の事業者が掲載条件や手数料を一方的に支配すれば、クリエイターや事業者の収益機会は制約される。山田氏は、知財やコンテンツを伸ばすには、市場がフェアでなければならないとの考えを示した。
山田氏の講演は、コンテンツを単なる文化発信ではなく、守り、活用し、収益化し、次世代に残す知財・無形資産として捉え直す必要性を示すものだった。日本IPは強い。だが、稼ぐ仕組みが弱ければ、その価値は日本に十分戻ってこない。
政府が制度やルールを整え、民間が知財を経営戦略や海外展開に落とし込む。クリエイターを守り、正規版を世界に届け、海賊版には実効的に対処する。そうした仕組みを整えられるかどうかが、日本発コンテンツを「稼ぐ資産」に変える鍵になる。
前回の連載で山田氏は、成長戦略、知財戦略、国際標準戦略の3つは「どれも欠けてはいけない」と強調した。今回示されたコンテンツ戦略も、その延長線上にある。「日本の創作力を知財として守り、産業として育て、世界市場で収益化する」。その道筋を描くことが、山田氏の語る「日本の勝ち筋」である。(高橋天地)
コンテンツ産業の海外展開などをめぐる意見交換会に臨む高市早苗首相ら。左から小室哲哉さん、デーモン閣下さん、こっちのけんと氏、高市首相、Awichさん、村上隆さん、押井守さん=2025年12月22日午前、首相官邸(春名中撮影)
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