転売ヤーが紙の本を殺す? 「週刊少年ジャンプ」買い占め騒動を見てマンガ家が感じた怒りと不安:サダタローのゆるっとマンガ劇場(1/7 ページ)
ボクは「週刊少年ジャンプ」で育った、いわゆる“ジャンプっ子”です。そんなジャンプが、また店頭から姿を消しました。理由は、転売ヤーによる買い占めでした。
突然ですが、ボクは「週刊少年ジャンプ」で育った、いわゆる“ジャンプっ子”です。1994年に発行部数653万部を記録した週刊少年ジャンプは、ボクが小学生だった当時も爆発的な人気でした。いつもの書店で売り切れていて、別の書店まで走ったなんてこともざらにあり、それもまたいい思い出です。
そんなジャンプが、また店頭から姿を消しました。理由は、転売ヤーによる買い占めです。
7月13日発売の週刊少年ジャンプ33号が、付録として付いていたONE PIECEカードゲームの限定カード「モンキー・D・ルフィ(P-159)」目当ての転売ヤーに買い占められたため、楽しみにしていたファンや子供たちの手に渡らなくなってしまいました。特に33号で完結した「アオのハコ」のファンからは「最終回が読めない」といった悲鳴も聞こえてきています。
集英社も転売ヤー対策をしなかったわけではありません。今号のジャンプは前号より50万部多く刷っていたようですし、同社が運営する「ジャンプ+」や「ゼブラック」といった配信サービスでは、デジタル版を定期購読している人を対象に、応募者全員サービスを実施しています。とはいえ、結果的には雑誌は十分に供給されず、一番大事にするべき子供たちやファン層に届きませんでした。
前回の記事でPlayStationのディスク版ゲームソフト生産終了の話題に触れましたが、そこでボクは、ゲームにおけるダウンロード版の魅力を認めつつも、物理メディアがなくなることは寂しいことだと書きました。これはマンガにおいても同様です。
家の中で購入でき、スマホがあればどこでだって読める。旧作から最新作まで、セール等を利用すれば割引価格で購入できる。そしてボクのような、現在書店に単行本を置いてもらっていないマンガ家の過去作品も電子書店なら並んでいて購入してもらえる……マンガのデジタル版には紙の本にはない魅力と利便性がたくさんあります。
そして紙の本にもまたデジタル版にはない魅力があります。見開きでの大ゴマの迫力や紙のページをめくる、あの感覚はデジタル版では体験できません。手元に置いておけば、デジタル版のように電子書店のサービス終了で読めなくなることもありません。
今後もマンガのデジタル化は進んでいくと思いますが、それでも一人のマンガ家として、ボクは紙の本になくなってほしくないと思っています。むしろ過渡期だからこそ両方のメリットが享受できる今は貴重で、手間やコストをかけてそれらを提供してくれる出版社はありがたい存在だと思っています。
集英社は7月17日、今回の件でジャンプを購入できなかったこと、書店・コンビニ店頭で混乱を招いてしまったことを謝罪し、付録カードなしの特別版(紙版)を「ジャンプキャラクターズストア」で受注販売するなどの救済策を公表しました。声明文には「公平な購入機会を阻害するような、転売を目的とした過度な買占めは控えて」といった内容が書かれています。そして「Vジャンプ」10月号で予定していたONE PIECEカードの付録を中止することも明らかにしました。
今回のような事態が続くと、紙版の読者離れが進んだり、編集部が紙版を売るための大胆な施策を打ち出しにくくなったりします。売上が落ちれば、経営的な判断として、デジタル化をさらに推し進める可能性もあるでしょう。だからボクは、物理メディアの寿命を縮めかねない転売ヤーの行為が許せないのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

