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» 2005年03月30日 00時00分 公開

ファイルメーカーPro ユーザーの現場を探る:第17回 ExcelとファイルメーカーProをうまく組み合わせた、人材紹介システムを自社開発

今回は、Excelユーザーが、その限界を打ち破るためにファイルメーカーProを利用し、Excelとも共存させた、高度な社内システムを構築していった例を紹介します。

[松尾公也,ITmedia]

 首都圏のベンチャー企業を中心に、人材紹介を行っている企業、ベンチャーエントリーは、ファイルメーカーProをフルに活用しています。外注すれば数百万から1000万円はかかるであろう、同社のデータベースシステムは、社内の一人の女性社員によって作られているのです。

 同社の経営管理部長、遠藤有紀さんがベンチャーエントリーに入社したのは、2000年6月のこと。それまでは完全な手作業で行われていた社内業務を、2年半かけて、Microsoft Excelを利用することにより、改善していったのは、遠藤さんの手腕によるものです。

 

ファイルメーカーPro選択にいたるまでの道のり

 遠藤さんは、一昨年、同社の辻口寛一社長から、社内データベースシステムの選定を命じられました。遠藤さんは同社の総務と経理を担当しており、社内の基幹業務の流れを把握していたためです。それまではExcelで個々の業務の補助をしていたのですが、本格的なデータベース運用を全社的に行うことが決定したのです。

 最初は、外注、既製品の利用も検討しました。しかし、外注をしようとすると、数百万円から1000万円規模になること、データベースが一種類ですむような普通の会社ではないため、既製品を無理やり当てはめることができないことから、データベースを社内(自分自身)で構築しなければならないだろう、と思い至ったのです。

 Excelをこれまで使ってきたこともあり、同じMicrosoft製品のAccessも検討してみました。実際に勉強し、仮のシステムを組んで、Excelでやっていたことを組み込んでみるところまではいったのですが、社長から「外部の開発会社を使わず、自分で組むのは危険ではないか」という意見が出て、「素人でもできるファイルメーカーProなら、遠藤さん一人でもだいじょうぶじゃないか」と、ファイルメーカーProを試してみることにしました。

 価格も魅力の一つでした。ファイルメーカーProなら、社員全員13人分のライセンスを購入しても、5、60万円ですみます。数百万円と数十万円、桁が違うわけです。

 「ファイルメーカーProを最初に購入してしばらくして、ファイルメーカーユーザーズグループであるFM-Tokyoのミーティングに、勉強のため参加したときに、ファイルメーカーProのパワーユーザーのお医者さんから、『とにかく作ってみること』とアドバイスがあり、やってみる決心がつきました」と、遠藤さん。

 本を読みながら、こつこつ作っていた遠藤さんですが、開発をスタートさせてから4カ月後には徐々に稼働するようになり、6、7カ月後には完全に動くようになりました。現在では、「日々、要望に応じて変更しているのと、別個に作りかけているものを合体させようと試みているところです」と遠藤さんは言います。

 最初は、3年前から作ってあった、Excelのマクロベースのシステムを、ファイルメーカーProに移していくことからスタートしたそうです。「Excelではイレギュラーへの対応が難しく、たとえば、お金の入金が二分割、三分割で行われるような例外処理は、難しいのです。返金、値引きがきれいに出てきません。営業マンの数字を反映させるところまで、Excelでやるのはたいへんなのです」というふうに、苦労はしましたが、無事にファイルメーカー化することができました。

ファイルメーカーProとExcelを組み合わせた「人材紹介システム」を拝見

 ベンチャー・エントリーのシステムは、外部公開は行わない、完全なイントラネットとして利用しています。社員13人中9人がファイルメーカーProを利用。サーバには、ファイルメーカー Serverを使っています。

 では、その社内システムの中身をみていきましょう。

 人材紹介システム・メイン。これが人材紹介システムのトップメニュー

 事務系のトップメニュー。契約書類、名刺の発注、取引先への贈答をはじめとする、遠藤さんの管理業務のほとんどは、ここからコントロールできる

 求人カード作成。ファイルメーカーProから、Excelのファイルを呼び出す

 取引先データから求人データへ:取引先企業の情報と、そこに紹介する人材データを、ここで閲覧できる

 求人データから紹介履歴入力。企業が求める職種別に、求人紹介の履歴を残し、管理している

 登録者の閲覧・別ファイルの管理:登録者の履歴書データが入力されており、職務経歴書や登録カードなどの添付ファイルを、ここから開くことができる

 確認書の作成(1):紹介決定時の書類作成画面

 確認書の作成(2):確認書のプレビュー画面。ここから直接印刷することができる

 確認書の作成(3):人材紹介の売り上げ伝票を印刷する

 入金確認を行う画面

 入金伝票作成:入金伝票を作成し、その後、社内向け入金報告用メールを作成する

 

ExcelからファイルメーカーProへ、その共存方法

 遠藤さんが開発したシステムで特徴的なのは、ExcelやWordファイルとの共存でしょう。応募者の申し込みフォームがExcelであること。Wordの添付書類があることなどから、これらをうまくハンドリングできるシステムが必要でした。しかし、Excelだけで業務を処理していると、いろいろと無理がきます。「データベースが2次元的なものだったらExcelでも間に合うけど、要素が大きくなってくると難しくなっていくのです」と遠藤さん。Excelからすんなりと移行させることを考えると、ファイルメーカーProという選択は、「関数も似ているし、こわくなかった」そうです。

 「スクリプトは、最初はよくわからなかったけど、Excelのマクロと違って、日本語だから、とても楽。Excelのマクロは、横文字が難しいので、復習しないとできないですね」と、ファイルメーカーProのスクリプト作成の容易さを評価します。

 これまでのExcelベースの業務システムをファイルメーカーProで置き換えつつ、必要な部分はExcelやWordファイルを直接開くスクリプトを使って、うまく共存させる方法は、ファイルメーカーProの現行バージョンであるFileMaker Pro 7ではさらに使いやすくなっており、ExcelやWordのファイルをデータベースに直接埋め込むことができるのです。遠藤さんはこの機能を非常に喜んでいおり、新機能を使ったさらなるシステムの発展が期待できそうです。これまでも、共有ボリュームにファイルを置き、そのパスをデータベースに書き込んでおくことで利用可能でしたが、今度はずっとシームレスに使うことができるようになるのですから。

 ここで取り上げたのは、オープンできる内容のものに限定しましたが、遠藤さんは、外部には公開できないシステムも多数、開発しているそうです。「でも、遊び感覚のネタが積み重なって成果になるというのは非常に楽しい仕事だと感じる部分が多いです。ファイルメーカーについては取り組んでからまだ間もないため、もっと勉強して、自分の引き出しを増やしていきたいと思っています」と、遠藤さんは、さらに意欲を燃やしています。

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