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» 2005年03月18日 00時00分 公開

ファイルメーカーPro ユーザーの現場を探る:第16回 スピーディーな自転車メッセンジャー
サービスを、さらに高速化する
ファイルメーカーPro

自転車を使った配送サービス、ディスパでは、ファイルメーカーProを活用した配車システムで、限界ぎりぎりのスピード化を図っています。

[松尾公也,ITmedia]

 自転車を使った特急配送サービスとして、近年台頭しているメッセンジャーサービスで、ファイルメーカーProを使った効率化に成功しているという会社があります。それは、東京都新宿区にオフィスを持つ、ディスパ メッセンジャーサービス(TEL: 03-5366-6530 FAX: 03-5368-6918)。今回の「ユーザーの現場」は、そのオフィスを訪問しました。飯島直子がライダーを演じた映画「メッセンジャー」の世界が、そこにありました。

 お話をうかがったのは、このシステムを構築した大森雄介さんと、ディスパの代表、北川孝章さん。大森さんはもともとライダーだったのですが、ディスパではシステムの開発を担当、現在は別の会社でシステム開発を行っています。そして、北川さんは配車などのマネジメント業務のかたわら、自らメッセンジャーをこなすこともあります。

「このシステムは、もともと自分が開発したものではなく、前任者が土台を作ったのです。そのときは、顧客情報の登録受注履歴や、請求書の自動作成を行うもので、最初は業務をしながら、カスタマイズをしていく、という状況でした」と大森さん。大森さんは現在では別の会社に勤務しているのですが、システムのメンテナンスが必要なときだけ手伝うのだそうです。

 システム構築を担当した大森さん

 

メッセンジャーの要、「配車業務」のレスポンスを最短にする

 メッセンジャーサービスの業務で最も大変な部分といえば、「配車」でしょう。クライアントからの電話を受けて、「どこ」から「どこ」までの便か、荷物の種別、時間などを確認してから、最も速くアクセスし、荷物をピックアップできるライダーを無線で呼び出します。

 こう説明すると簡単なようですが、「23区内なら最速の便」とも言われる自転車サービスを利用するのですから、利用者にとっては時間が命です。

 「このライダーならば、この速度で行ける。こいつは遅れるだろう、という判断をして配車するのですが、そのスケジュールを組み立てたところで、『迷いました』と連絡が来ることがあります。各ライダーの状況を把握しながら、道路を思い浮かべなければならないのです」と、配車を担当する、代表者の北川さん。

 「荷物が集中したとき、お客様からの配送をするときに、人の配置が追いつかないときにどうさばくか。その瞬間の判断になります。少しでも早く到着できるルートを考えなければ」と北川さんは続けます。

 配車を担当するディスパの北川代表

 普段配達をしている人が、内勤で配車業務を担当すると、「湯気が出るほど」忙しいのだそうです。大森さんも、この配車などの内勤業務を担当しながら1年ほど、ファイルメーカーProの業務システムのカスタマイズを行っていきました。

 以前の配車がどのようなものだったかというと、これがまったくの手作業。ホワイトボードにライダーのネームプレート、サインペンで書いた案件のプレートを貼り付けて、配達の担当が決まると、そのプレートを動かして、ということを勤務時間中、ずっとやっているのです。頭から湯気が出るのも当然というもの。ものすごく忙しいときには、確かに売り上げは上がりますが、リアルタイム処理のきつさに悲鳴を上げる、「笑い泣き」状態だったそうです。

 メッセンジャーサービスのレスポンスの「肝」となる、配車システムですが、競合会社はどうしているのでしょうか? 大手のバイク便では配車まで自動化しているところがありますが、「効率はよくないのでは」と、北川さんは疑問視しています。「エリアをわけて、ライダーの待ち順番を決めて、携帯のメールで配車するようなシステムもあるようですが、ライダーが取りこぼしたり、リトライまで待たされる場合もあります。うちは無線との組み合わせで、短時間で確実に処理できます」と北川さん。

 同社でも、メールでライダーに連絡することは検討したそうですが、プロバイダ経由のメールでは、リアルタイム性が必ずしも期待できないことと、北川さんは説明します。

 映画「メッセンジャー」では、加山雄三さんがこの配車係を演じ、無線を使うことのメリットを語っていました。東京の地理に詳しいという役柄で、この重要な任務を担当していたのですが、途中からはパソコンを導入し、なにやら操作しているようです。この映画では、主要クライアントは1社で、ライダーの数もわずか5人と、非常に限定された状況ですが、ディスパでは、顧客数もライダー数もはるかに多く、「商品」の種類も多いのです。

 「お客さんから電話が入ってきて、受注するとき、どこそこのお客様だということがわからないと、対応が遅れてしまいます。こちらとしては、できるだけ早く電話を終わらせて、早いところライダーに発注したいのです」(北川さん)という事情がある。紙とホワイトボードを使った従来のシステムでは、電話を受け取ってからライダーに発注するまでは、早くても45秒はかかっていました。仮にメールでライダーに送信するシステムをとったとしたら、さらに遅く、1分はかかるでしょう、と北川さんは推測します。

 では、この対応時間はどの程度まで短縮することが可能なのでしょうか? 結論から言いましょう。電話の受け答えは最短で10秒、担当への連絡は、「だれだれ、どこ行き、サービス名」とだけ連絡し、早ければ5秒で終わります。コンピュータへの入力は15秒で終了し、電話を受けてから発注するまでに15秒しかかかっていないことになります。

 これを実現したのが、ファイルメーカーProによる配車システムなのです。

 まず、電話を受けた時点で、どのお客様なのかを判断しなければなりません。単純に顧客情報データベースを作って、それに照らし合わせればよいかというと、そうではない。いろいろとイレギュラーな部分があるのです。たとえば、ある企業は、一つの会社が20、30と分社化しており、担当者も、複数の企業に所属していたりするのですが、これを解決するために、「顧客グループという概念を入れ、グループ化した」のだそうです。こういうふうに、思い通りにデータベースをいじることができるのも、ファイルメーカーProならではのメリットです。

 これには、着信番号通知などを使ったさらなる改良が可能なのではないか、と尋ねると、北川さんは「それも検討しましたが、たとえ導入したとしても、番号を非通知にしているお客様がいらっしゃるので、ぜんぶに使えるわけではないし、各マシンに導入すると、TA(ターミナルアダプター)も含めたコストがかかってしまうことになります」と説明してくれました。

 実は、ディスパで運用しているマシンは、すべて非常に低価格で手に入れたもの。ファイルメーカーProは5クライアント分で、サーバに使われているのは、なんと、Power Mac 7300。クライアントのほうも、初代iMac、PowerBook G3、Windowsマシンも使われていますが、こちらはWindows 95、Windows 98で動いているといった具合。合計5台中、実働3台で動かしているそうです。なにしろ古いマシンなので、検索スピードが多少遅いというのはありますが、それでも十分、実用に足りているのです。

自転車便配車システムの中身を拝見

 受注画面:依頼主、荷受け先、荷届け先、そして商品(サービス名)を記入する
 受注詳細:ピックアップ、デリバリー、リレーなどの、メッセンジャーの担当者名、時間などを入力する
 支払詳細:請求の詳細が記されている
 受注の内訳書
 コンソール:売り上げ計算、ライダー別内訳書作成などのメニュー画面
 配車画面:案件別に、荷受け、荷届け、必要があれば立ち寄り、中継と、ライダーを割り当てていく
 顧客情報:受注履歴も参照できるようになっている

 

安く、速く、しかも確実に

 スピードが勝負の、メッセンジャー業務をみごとに切り回しているディスパ。その中核になっているのはファイルメーカーProのシステム。代表の北川さんは、「いまの仕事量を(ファイルメーカーProを使わない)前と同じ体制でやれと言われれば、こなすことはこなせるかもしれないけど、1週間もたないでしょう」と言います。メッセンジャー業務のキャパシティを、確実にアップさせているのです。

 ディスパのサービスメニューには、直行便の「HAYAI」、受け付けから3時間以内に配送する「SENYEN」、そして、安価な当日便の「1COIN SERVICE」の3種類があります。中でも3番目の「1COIN SERVICE」は、その名のとおり、500円で当日内に届けるというものですが、混載便になるため、マネジメントがうまくないと、成立しません。このようなサービスを可能にしているのは、まさにこの社内システムによるものと言えるでしょう。ディスパのモットーは、「速さだけじゃない。」というものですが、それを支えているのは、スピード処理を実現するファイルメーカーProの業務システムなのです。

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