VersaPro VY11Fでは従来機に比べて、さらに“書く”機能が進化を遂げている。
液晶ディスプレイのサイズは従来同様10.4インチ。解像度も1024×768ピクセルで一緒だが、VY11Fでは、上下左右どこからも視野角120度を確保。たとえば会議室などで中央に置いて周囲のどこからも画面が見えるように工夫が施された。
周囲から見るということで言えば、ローテーションボタンだけで画面が90度づつぐるっと回転することになったのは、うれしい改善である。
NECの従来機はタブレットPCとして保護パネルに強化ガラスを最初に使用したマシンとして知られるが、今回保護パネルがさらにブラッシュアップ。従来機は厚さ約1ミリであったが、今回厚さが約0.5ミリとさらに薄いものを採用。よりペン先と液晶側で視差が少なくなり、書きやすさが向上している。NECの第一世代の後から登場した東芝第二世代機の保護パネルの厚さが約0.5ミリだったことを考えれば、保護パネルの厚さとして東芝をキャッチアップしたことになる。
また保護パネル表面に適度な摩擦感が出るように加工が施されているのは従来どおりだ。
さらにOSのバージョンアップも、操作感の向上に繋がっている。
ペンで長押しすると右クリックになるのは以前のバージョン同様だが、アニメーションが明確になり、わかりやすくなった。赤いポイントがくるっと回ってゆき、最後まで行くと右クリックマークが登場し、コンテクストメニューが表示される。
そしてWindows XP Tablet PC Edition 2005のもっともわかりやすい変更点は、Tablet PC入力パネルのバージョンアップだ。文字入力中にパネルの行の終わりに近づくと、自動的に新しい入力行が下に追加されるようになり、より長い文章が一度に入力できるように変更された。
変換ミスを修正する際の機能も複数搭載された。文節を調節することができるようにあったほか、間違った字の上に上書きして書き直すことで直感的に修正することができるようになった。
Tablet PC入力パネル自体の振る舞いも進化した。入力パネルを画面下部だけでなく上部に配置することができるようになったほか、入力パネルを自由な位置に動かすことも可能となった。
さらに以前のバージョンのOSではツールバーのアイコンをクリックするなどしないと入力パネルが起動しなかったのだが、今回、入力パネルの起動方法が追加され、ペンの無駄な動きが相当軽減した。
ペンを左右にすばやく振るというジェスチャーによる起動が可能となったほか、テキスト入力カーソルがある場所に入力パネル起動ボタンが自動で出現させることができるようになった。
ここまでハードとソフトのきめ細かい改良点を見てきたが、俯瞰的に述べるのであれば、実際の使い勝手はどのように向上しただろうか。
今回試作機を試してみたのだが、持った感触で言えば、重さという点では本当に申し分ない。十分にスタンディング・コンピューティングに耐えられる重量だろう。キャリングケースが標準添付するため、従来機で直接肌を接触させている場合に少々つらかった熱の問題もおそらくある程度軽減されるはずである。
“書く”という意味で言えば、説明はしにくいのだが、実はOSの文字認識エンジンのバージョンアップとCPUパワーの向上が一番利いている印象を受けた。割合に汚い字で殴り書きをしても、最初のバージョンよりも認識率が高い。ベースのOSのエンジンの変更と、エンジンの動作を処理するCPUパワーの向上とが相まっているといった感がある。
本機はフレームモデルで26万6000円(税別)。スタンド、無線LAN、バッテリーパック(S)がセットのスマートセレクションモデルで29万3000円(税別)となっている。企業モデルであるため、使用環境にあわせ必要な組み合わせをよく検討しておきたい。導入規模の大きさによってはオーダーメイドの可能性も出るはずである。
マシンパワーと“書く”機能は、現在購入できるピュアタブレット型のタブレットPCとして、最高の部類のものに仕上がってきている(コンバーチブル型を含めると、さらにハイパフォーマンスマシンも存在するが)。カスタマイズのベースとして選択するには、世代が下って熟成した、良いバランスのマシンと言っていいだろう。
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