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» 2005年07月15日 00時00分 公開

開発者公開インタビュー詳報:高画質を追求する意志が“ナナオのDNA”──「FlexScan S2110W」開発者インタビュー (1/2)

“ナナオの画質”、“ナナオならではの良さ”、“ナナオのDNA”──。画質にこだわり抜いてきたナナオマンならではの言葉だ。そしてそれは、ユーザーがナナオ製品に求める特長でもある。同社初のワイド液晶ディスプレイ「FlexScan S2110W」に込められたナナオの意志とは──。

[本田雅一,ITmedia]
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ナナオ初の21.1インチワイド液晶ディスプレイ

 ナナオが発表した新型液晶ディスプレイ「FlexScan S2110W」(以下、S2110W)は、ナナオの純粋なコンピュータ向けディスプレイとしては、初めて横長のワイド画面を採用する。このところ人気の高まっているWSXGA+(1680×1050ドット)の解像度ながら、パネルサイズは21.1インチとライバルよりも1インチ大きい。それでいて、価格も9万9750円(税込み)と、リーズナブルに仕上がっている。

 高品質のプロフェッショナル向けディスプレイのイメージが強い同社だが、液晶テレビ「FORIS.TV」などでホームエンターテイメント分野にも進出。本機はPC向けディスプレイの本質を押さえながら、動画表示性能にも気を遣い、中間応答で8ミリ秒という高速応答速度を実現している。

 ナナオがS2110Wの発表を記念して開催したイベント「新製品体験会 for E-CLUB」(後援:ITmedia)で、本機の開発に携わった同社映像商品開発部商品開発2課 開発マネージャー川越納(おさむ)氏にインタビューする機会を得た(イベントの概要は7月5日の記事を参照)。ここではその詳細をリポートしよう。

「新製品体験会 for E-CLUB」の席上でインタビューする本田雅一氏(左)とナナオ映像商品開発部商品開発2課 開発マネージャー川越納氏(右)

動画画質を重視した新基軸

 従来のナナオ製品は、どちらかといえば直線的なデザインが多く、エレガントさよりも機能性で美しさをアピールする製品が多かった。しかしS2110Wは、狭額縁のデザインながら操作部は逆アーチ型の造形となっており、これまでのナナオデザインとは少し異なる方向性を示しているように見える。

 さらに言えば、型番も従来のFlexScanのルールとは若干異なる。これは“これまでとは違うんだ”というメッセージなのか?

川越 「画質へのこだわりに関しては、従来製品と全く同じです。異なるのは、従来は静止画での画質をひたすら追求してきたのに対して、本機は動画にも十分対応できる動画性能もユーザーに提供したい、という点です」

 「デザインに関しては、プロではなく家庭でも使う一般的なユーザーに対して、プロっぽさというか、“固さ”を感じさせないものにしたかったというのもあります。また、ライバルにシネマディスプレイがある中で、どうやってお客様を本機に引き込もうかという視点でもデザインや仕様について検討しました」

WSXGA+(1680×1050ドット)対応21.1インチワイド液晶ディスプレイ「FlexScan S2110W」

 デザインと言えば、本機はパネル部が通常の製品よりも分厚い。スタンドの奥行きを考えると、設置場所など実質的な使い勝手に悪影響はない。その一方で、画質面では寄与する部分もあるという。具体的には、パネル部を分厚くした理由は何だろうか?

川越 「実は動画をキレイに見てもらうため、最大輝度をテレビ並みに高めています。しかし、従来のように液晶パネルのサイドにバックライトを配置する方式では、なかなか高輝度を実現できません。そこで、液晶パネルの背後にバックライトを複数並べることで、輝度を450カンデラにまで向上させました。確かに厚みは増しますが、それ以上のメリットを得ることができます」

 本機に採用されている液晶パネルは、中間応答速度8ミリ秒という液晶テレビ並みのスペックを実現している。実際、DVDはもちろんだが、高精細なQuickTime HDやWMV HDのデモ映像などを見ても、応答遅れによる精細感の喪失は少なめだ。この部分での工夫はどのように行っているのだろうか?

川越 「我々は動画表示にも適した中間応答速度12ミリ秒の『FlexScan M170/M190(L578/L778)』を半年前にラインナップしました。8ミリ秒への進化は、ノウハウの蓄積やデバイスの進化がもたらしたものです」

 具体的には何が変わったのか?

川越 「今回、液晶パネル自身が最新スペックになっており、応答速度をはじめ、視野角の改善などが行われています。そのうえで、液晶ドライバによるオーバードライブの実装が行われています。世の中を見回すと、TN型液晶パネルで白黒の応答速度が8ミリ秒という製品もありますが、実際には中間応答速度が重要です。画質とコストのバランスを考えると、VA系パネルで視野角を改善し、応答速度を高める方向が良かったと考えています」

 従来、たとえば筆者自身が使っているFlexScan L985EX(最新機種はL997)をはじめ、ナナオの高画質ラインナップはIPS系パネルを採用した製品が多かった。一般に、VA系よりもIPS系の方が視野角の面で有利。このため、ややコントラスト比が低いものの、色変位の少なさを重要視してIPS系パネルを採用してきたわけである。オーバードライブ回路を実装するのであれば、IPS系パネルでも中間応答速度は高められるのではないか?

川越 「それはコストと品質のバランスをどこに持ってくるか、という話になるでしょう。VA系と一言で言っても、最新のVA系パネルはかなり改良され、視野角も上下左右に178度というスペックを実現しています。厳密な視野角では確かにIPS系に一歩譲る面もありますが、ほぼ遜色ないレベルに達しています」

「加えて、動画コンテンツの再現性を重視しようとすると、どうしてもコントラスト比が欲しくなります。本機は最大輝度を450カンデラまで上げていますが、輝度を上げるだけでは黒浮きが目立ってしまいます。輝度を上げ、黒浮きを抑えるには、コントラスト比の高いVA系の方が有利です」

 たしかに動画、それも長尺の映画などの場合、2時間といった時間軸の中でまぶしい太陽から暗い夜のシーンまでを描き分けるため、ワンシーンで使う輝度レンジが狭く、特に暗部階調の表現は十分に高いコントラスト比がなければ困難だ。PCでDVD映像を高画質で楽しむには、IPS系の約2倍のコントラスト比がある本機採用パネルの方が良い結果となるだろう。

 ただ、ここまで動画画質にこだわるのであれば、ビデオ入力やコンポーネント映像入力などにも対応してほしいというユーザーも出てくるのではないか?

川越 「本機の場合、基本はPCディスプレイです。テレビのように映像だけを楽しむ場合、PC用とは異なる特性が求められます。またビデオ入力を美しく固定画素パネルに表示するには、きちんとコストをかけてI/P変換(インターレース/プログレッシブ変換)やスケーリング処理を行わなければ、せっかくの高画質は活かせません。オマケのように付けるだけのビデオ入力端子では、ナナオの考える画質基準に到達しないというのが今回の判断です」

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