“6.1”を超えた完成度──「Corel Painter X」発表:IntelMacでパフォーマンスが大幅アップ
プロにとって「最高のPainterは6.1」だったという。新しい“X”は「黄金比」「リアルブリスル」という派手な機能以外も地道に強化された。
コーレルは3月1日に、ペイントソフト「Corel Painter X」(以下、Painter X)を発表した。同日行われた製品発表会ではカナダのCorel本社から来日したプロダクトマネージャーのリック・シャンペン氏による新機能の説明や、イラストレーターの吉井宏氏による新機能のデモンストレーションなどが紹介された。
シャンペン氏は、Painter Xに実装された新しい機能のなかから、とくに構図支援に使う「黄金分割」ツールや現実の筆の挙動を正確に再現する「リアルブリスルペイントシステム」、フォトペインティング機能に追加された「スマートストローク」を説明。
「黄金分割」ツールとは、「黄金比」として広く知られている法則に則った構図になるように、Painter Xのキャンパスにガイドラインが表示される機能だ。シャンペン氏は、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」や葛飾北斎の「富嶽三十六景・神奈川沖浪裏」をPainter Xで表示し、そこに「黄金分割」ツールのガイドラインを重ねることでこれらの作品の構図が「黄金比」で構成されていることを示し、さらに、作成している作品の構図をガイドラインに合わせて修正する作業をデモを交えて紹介してくれた。
「アーティストが使っている現実の“筆”を今までになく徹底的に再現する画期的なもの」とシャンペン氏が紹介するリアルブリスルペイントシステムは、筆の毛先の1本1本の動きを反映した描画をPainter Xで実現できる機能だ。筆の動かす方向にあわせて現実の筆と同じように毛先のスジやケバが描画される。「フォトペンティングシステム」はすでに既存のPainterでも実装されている機能で写真画像を絵画調に加工する。Painter Xはこのシステムに「スマートストロークペイント」オプションを追加した。このオプションでは元画像の輪郭を認識した描画処理が可能になった。従来のフォトペインティングシステムでは輪郭とは関係なくランダムなストローク処理で描画を行っていたが、スマートストロークペイントでは、最初に画像を分析して太いストロークで大まかな描画処理を行い、次いで輪郭を認識して細いストロークで詳細な描画処理を行っている。
このほか、シャンペン氏はPainter Xのブラシの描画速度やファイルのオープン、保存など、全般的なパフォーマンスの向上もアピールした。 とくに、「Painter 9.5でRosetta(Power PC搭載Mac用プログラムコードをx86搭載Macで使えるように変換するモジュール)を使っていた処理がPainter XではRosettaを使わなくなった」(シャンペン氏)ため、IntelMacにおいてパフォーマンスの向上が顕著に感じられるだろうとアピールした。
イラストレーターの吉井氏は、実際に使う立場から注目するPainter Xの特徴を説明。最初に「地味だけど大きなポイント」と吉井氏が評価する作業領域の保存機能が紹介された。Painter Xには豊富なブラシが用意されているが、「多くのブラシから自分の使いたいモノを選ぶのは大変」という吉井氏は、普段使う3種類程度のブラシを抜き出したメニューを用意している。(作業領域の保存機能は)「自分だけのPainterを作ってとっておけるだけでなく、自分の環境をブラッシュアップしていけることで、アーティストの作業環境を改善していける」(吉井氏)
次いで紹介されたが「レイアウトグリッド」機能。従来のPainterにも搭載されていたものだが、Painter Xではグリッドの間隔や傾き、不透明度の設定ができるようになって「いままでの機能は使えなかったが、Painter Xではようやく使い物になった」と吉井氏も評価する。「タブレットで描いていると水平垂直が鈍感になり左右のバランスも狂ってくる」という吉井氏はレイアウトグリッドによってその問題が解決できるとその効果を説明した。
Painter Xの最も大きな特徴であるリアルブリスルペイントシステムについても、ユニバーサルミキサーパレットと併用した実演で、その筆先のリアルな挙動の再現を高く評価。あわせて、ペンの傾きやストロークの方向にあわせて動的に変化して表示してくれる「ブラシゴースト」機能や、スマートストロークを実装して「従来の“無造作”から輪郭を意識した処理ができるようになった」(吉井氏)フォトペインティングシステムも実演で示してくれた。
「Painter Xは派手な部分より地味だけど使うものの足元を強くしてくれるパージョンアップではないか。これまでのPainterは徐々に使えるようになっていったが、“X” はこの時点で仕事に使える完成度を持っている。従来のPainterユーザーには“6.1”が最高のPainterという意見が多いが、Xはその先にいけた」(吉井氏)
Painter Xは4月13日から出荷される予定で、パッケージは「通常版」「特別優待版」「アカデミック版」「アップグレード版」が用意される。また、先行販売(4月6日)向けのESD版として通常版とアップグレード版が登場するほか、日本国内500本の限定版で「ペインター缶」も通常版とアップグレード版がCorelストアを含むEC販売Webサイトで用意される。ペインター缶には限定特典として「ジェレミー・サットンのCorel Painter X講座 トレーニングDVD、Corel Painter Xコレクターズポスター、記念特典構図ツールが付属する。
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