見えてきたPenrynとNehalemの「革新性」:元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)
インテルが45ナノCPUとして予定している「Nehalem」は「Pentium Pro」以来の変革が施される。そのキーワード“組み合わせ”はCPUに何をもたらすのだろうか。
以上のようにPenrynは、現行Coreマイクロアーキテクチャを用いたシュリンクと言いながら、多くの点で改良が施される。
45ナノプロセスで2世代めとなるNehalemについて、まったく新しいマイクロアーキテクチャであり「プロセッサとシステムデザインに関するPentium Pro以来の最大の飛躍」と、Intelは発言している。新しいマイクロアーキテクチャというと、CPU内部のパイプラインに対する変更を連想しがちだが、Nehalemにおけるマイクロアーキテクチャの新しさには、必ずしも該当しないようだ。
2008年の量産を予定しているので、まだ時間的な余裕があることもあり、今回のブリーフィングでもNehalemについてはそれほど詳細が明らかにされたわけではない。したがって、まだ公開されていない“機能”がある可能性も高いものの、同時発行命令数が4のままであるなど、Coreマイクロアーキテクチャを継承した部分がうかがえる。逆にCoreマイクロアーキテクチャになかった機能として、NetBurstマイクロアーキテクチャで採用されたハイパースレッディングに類似したスレッディング技術が採用されることが明らかにされた。
今回明らかにされた「Nehalemの新しさ」は、コアの中身(もしくは構成)ではなく、その“組み合わせ”にある。Nehalemでは、1つのCPUパッケージの中に「プロセッサコア」「キャッシュメモリ」「メモリコントローラ」、さらにクライアントPC向けの製品には「グラフィックスコントローラ」といった多様なモジュールを内蔵できるのだ。現時点で明らかにされている情報によると、1つのCPUに内蔵できるコアの数は、1個から8個とされている。おそらくそのコア数に応じてキャッシュメモリの容量やメモリコントローラの数も増減できるものと考えられる。上のスレッディング技術と組み合わせれば、Nehalemは最大で同時に16スレッドまで処理できることになる。グラフィックスコントローラの性能については明らかにされていないが、「メインストリームのデスクトップPC、ならびにノートPCに十分な性能」ではあるものの、ハイエンド向けの外部グラフィックスチップを不要にするようなものではないらしい。
CPUと外部を接続するインターコネクトには、シリアルインタフェースが採用される。そのリンク数も、1本、2本、4本と必要に応じて増減できる。このシリアルインタフェースは、これまで“Next Generation Interconnect”と呼ばれていたもので、将来的にIA-64との共通化が図られる(CSI: Common Socket Interface)のではないかと思われる。このCSIの採用により、インテルがPentium Pro以降採用してきた“GTL+”インタフェースと決別することになる。FSBアーキテクチャの終焉を意味するこのことこそが「システムデザインに関するPentium Pro以来の最大の飛躍」という言葉の表すものだろう。
Nehalemは、設計時にコアの数や同時処理可能なスレッド数、メモリの帯域、キャッシュの容量、など、必要に応じて変更できる。が、こうしたスケーラビリティは、動作中にも必要な性能や電力消費量に応じて、ダイナミックに変更できるようだ。Nehalemのようなモジュラー構造のCPUというアイデアは、今回急に出てきたわけではない。以前からIntelだけでなくAMDも、同様なアイデアを披露している。ついに実用化のときがきた、という印象だ。
その一方で今回の情報ではIntelがNehalemにおいて、各モジュールをどのように実装するのかは明らかではない。が、1つのダイ上にすべてを集積するということはないのではないかと思われる。IntelはPentium Pro以来、MCPについて豊富な経験を持っており、現時点でのクアッドコアCPUが2つのダイを内蔵していることはよく知られている。シリアル化されたインターコネクトによりFSBボトルネックが解消し、MCPを用いることによるコストアップがそれほど大きくないのだとしたら、複数のダイを組み合わせて実装すれば自由度は高くなる。IntelがNehalemにおいてCPUの機能をどう分割してパッケージ化してくるのか、いくつくらいのダイを1つのパッケージに入れることになるのか、そのあたりも注目したいところだ。
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