“タフネス”ノートの新事情──デル「Latitude ATG D620」編:山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」(2/2 ページ)
日本でも「デルが変わった」と思うユーザーが増えているのではないだろうか。2006年の「新生XPSシリーズ」に続いて2007年には「ATG」ノートが登場。なぜいまデルが「タフノート」なのか。
─―デルにとって、ノートPCとはどのような位置づけになるのでしょう。
堀内氏 今までデルは堅牢性に関して保守的でした。あまり法人ユーザーにもアピールしてきませんでした。でも、日常のオフィスユースにおける耐久性の必要性はこれからはアピールしていかなければならないでしょうね。今後は弊社のWebサイトでも訴求していく予定です。
日本のマーケットにおいてデルのノートPCはこれからなんです。まだまだデスクトップPCが多いんですね。デルのノートPCを使いたいという気持ちを感情として持ってもらうにはどうすればいいか考えていきたいと思っています。継続的に販売しているユーザーでは累積台数も増えてきています。そこで、得られたフィードバックでは、(デルのノートPCは競争力が)弱いという声はあまりききません。そういうところをベースにしながら、他社がやっていることを参考にして製品を作っていきたいと考えています。デルのユーザーは85%が法人です。その企業規模や業種によってPCに対する要望は全然違います。業務効率の改善につながるならなんでもやるということでしょうか。
デルがノートPCに注力するということで、製品作りのポリシーも大きく変化します。これまでは、法人のユーザー向けということで、ITマネージャにフォーカスし、社内のPCを管理しやすくなる製品を作ってきましたが、これが大きく変わってくると思います。なぜなら、ノートPCを使うのはユーザー自身だからです。ですから、管理する人も大事にしながら、ユーザー側にもどんどん入っていこうしています。どうしたらそれができるかを今考えているところです。
2007年から2008年に出てくる製品は“エモーショナルコネクション”を重視したものになります。つまり、もっと仕事をしたいと思えるようなものですね。ユーザーとデルのPCがつながりをもてるような方向に製品企画の舵取りを変えてきています。
正直なところ、ユーザーはデルにそういうところは期待してこなかったようなところがあります。でも、そうではないユーザーもいるはずです。会社でデルのノートPCを使っていることを自慢してもらえるような製品にしていきたいですね。ノートPCを使うことで効率の向上はまだまだ計れます。デスクトップPCにはないノートの魅力を提示し、デルとデルの製品を好きになってほしいと思います
─―デルの最近の販売傾向はどのような感じになっていますか。
堀内氏 カレンダーイヤーの第3四半期と第4四半期はシェアを伸ばせました。第3四半期で5位から4位になり、さらに第4四半期に4位から3位へと推移しています。B5ノートPCがとても伸びたというのがその要因でしょう。1000台以上という大口の案件もありました。すでにお話したように、二極化のどちらかに製品が偏ってしまう傾向があるなかで、その真ん中をいける製品としてLatitude D420を用意できたのは大きかったですね。とびきり軽くはないが十分に持ち歩けて、とびきりハイパフォーマンスではないけれど1台で何でもこなせるスペックを持っているということです。
日本のマーケットではA4のメインストリームノートPCのCeleron搭載比率が世界でもまれなくらいに高いのが特徴です。現行製品は、ほとんど同じイメージで一年半続けてきました。A4ノートは日本人にとってはヘビーでも、アメリカ人にとっては、十分に軽いんですね。
─―日本市場の動向に、米国本社の開発は耳を傾けてくれるのでしょうか。
堀内氏 いろいろなことを本社にアピールしています。とくにB5ノートに関しては聞いてもらえていますね。ただ、デルは日本以外の国のニーズも聞いていかなければなりません。顧客満足度を重視するという点では、サポートも大事ですが、法人ユーザーでは、納期や大規模案件に対応できるかも重要です。最も安く最も豊富に提供できるかも要求されます。日本の案件は、それが満たされないことも多いですけどね。
ディスプレイのワイド化はひとつのトレンドとなっています。実は、法人向けモデルのワイド化はデルが最も早かったのですよ。2006年前半の時点で、他社では法人向けノートPCのワイド化に関する動きがありませんでしたが、デルはそのときからやっていました。パーツも安定して供給を受けられるし、Windows Vistaをにらめばディスプレイはワイドがよいだろうという判断です。そのことで、使われ方に広がりが出てくるはずだというのが本国の意見でした。
それを受けて、2006年の年末あたりから、15.4型ワイドの売り上げがかなり加速してきていますよね。とくにここ1~2カ月はひきが強いです。法人ユーザーは、今すぐWindows Vistaを使うわけではなくても、今のうちから大画面のワイド液晶ディスプレイを少しずつ導入していこうとしているようです。
メモリの搭載容量も1Gバイトというのが多いですし、2Gバイトを求めるユーザーも少なくありません。ハードウェアにまったく変更を加えずに、Windows Vistaに移行できるようにしておくという傾向があるようです。実際、法人向けのオンラインページでもそのようにアピールしています。
デルとしては2008年の春くらいまでWindows XPを導入した製品を販売するといっています。それ以降はWindows Vistaモデルオンリーになります。法人ユーザーは、2007年の年末ぐらいから移行し始めるのではないでしょうか。ただ、意外かもしれませんが、すでにWindows Vistaを求める法人も目立って増えてきています。
―─企業で使われるPCに特有の動きのようなものはありますか。
堀内氏 ノートPCも含めてvProを採用したいとするユーザーは増えていますね。2007年は“SantaRosa”プラットフォームのノートPCが出てきますが、ノートPCでハードウェア的にvProをサポートしていくかどうかはまだ決まっていません。デルとしては、vProに関してはもう少し様子を見ようという感じです。
生体認証はユーザーによってニーズはまちまちです。サーバも含めたソリューションがあるので、そんなもので認証しなくてもいいというユーザーもいれば、小規模、中規模のユーザーになると指紋認証を望む声が高くなります。大きな企業では、ユーザーの年齢層に開きがありますから、パスワードポリシーなどを決めても、それがたいへんな負担になっていることもあるようですね。その代わりの指紋、あるいはスマートカードをという流れのようです。それらを使ってブート時のパスワード、Windowsへのログオンをいっしょにやってしまいたいといったことのようです。
デルから「デルのPCを好きになって欲しい」という言葉を聞くとは思わなかった。コモディティ化したPCは、TCO削減のために、エンドユーザーの便宜よりも、管理しやすいことが最優先されている。そのトレンドにしっかりと照準を合わせて成功してきたイメージが強かったからだ。そのデルが、ノートPCに本格的に取り組むことで、製品作りに少なからず変化が起こる。法人顧客がWindow Vistaを本格採用するであろうタイミングに、しっかりと照準を合わせた今後の製品展開に興味は尽きない。
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