ASUS「EAH2600XT D4」で“GDDR4”Radeon HD 2600 XTの実力を知る:イマドキのイタモノ(2/2 ページ)
期待の新世代RadeonのミドルレンジGPUであるが、まず登場したのはクロックを抑えたGDDR3版だった。ようやく姿を見せつつある「定格動作」2600XTでこのGPUの真価を検証する。
繰り返しになるが、今回評価した「EAH2600XT D4」はビデオメモリにGDDR4を採用したおかげで、メモリクロックが定格とおりの1100MHz(DDRデータ転送レートで2.2Gbps)に設定されており、今回測定したベンチマークテストの結果にもその効果が表れている。
3DMark 06の結果において、もともと成績のよかったHDRとシェーダモデル3.0における性能を測定する「HDR/SM3.0 Score」やシェーダユニットの演算能力を見る「Perlin Noise」だけでなく、GDDR3採用のRadeon HD 2600 XTでGeForce 8600 GTの値に届かなかった総合スコアの「3DMark Score」でもEAH2600XT D4の結果はほかを上回ることができた。シェーダユニットに関連するテスト結果が優れている傾向は、グラフを掲載していない3DMark 06のPixel Shaderテストや3DMark 05でも同様だ。ただし、シェーダモデル2.0における性能を見る「SM2.0 Score」の結果はGeForce 8600 GTを超えることができなかった。
市販ゲームを使ったベンチマークでは、前回のRadeon HD 2600 XT GDDR3と同様にゲームタイトルによって結果が大きく変動しているが、その度合いが一層極端になっている。とくにその傾向が強いのがFarcryで、EAH2600XT D4の結果はRadeon HD 2600 XT GDDR3版をも下回る。このあたり、Catalystのチューニングによって挙動が安定し性能が向上する余白が残されているようにも思える。
それぞれのゲームにおける優劣は上位モデルRadeon HD 2900 XTやRadeon HD 2600 XT GDDR3のベンチマーク結果とほぼ共通している。EAH2600XT D4も同じ3Dエンジンを採用しているDOOM 3とQuake 4で良好な結果を出している。とくにQuake 4では、解像度に関係なくアンチエイリアシングや異方性フィルタリングの設定が軽い条件でほかのGPUを上回る値を残している。しかし、設定条件が重くなるとGeForce 8600 GTを下回ってしまうのはほかのRadeon HD 2000シリーズと変わらなかった。Farcryの結果がRadeon HD 2600 XT GDDR3を下回っているのは先ほど紹介したとおりだが、F.E.A.R.の結果もRadeon HD 2600 XT GDDR3とほぼ同じで、GeForce 8600 GTを大きく下回り負荷の重いテストでは旧式のGeForce 7600 GTにもかなわない。
Radeon HD 2600 XT GDDR3のレビューで、「定格から7割のクロックに抑えられた状態における比較であるので、GDDR4を搭載してメモリクロックが1100MHzで設定されたときに、GeForce 8600 GTを上回る可能は高い(GeForce 8600GTをわずかに超える結果が出ているという海外の情報もある)」と述べたが、実際にベンチマークで計測してみると、3DMark系とDOOM 3、Quake 4でGeForce 8600 GTを上回ることができたが、F.E.A.R.やFarcryで示す測定値は依然として低い。Radeon HD 2000シリーズに共通する、アンチエイリアスや異方性フィルタリングの設定を重くすると結果がいきなり落ち込んでしまう傾向も改善されていない。
実売価格を見た場合、EAH2600XT D4は2万5000円前後に設定しているショップが多い。ビデオメモリにGDR3を採用したRadeon HD 2600 XTの実売価格が1万7000円から1万8000円の間で、GeForce 8600 GTの実売価格は1万8000円から2万円の間で推移している。
この価格差とベンチマークで示した値の関係を並べてみると、EAH2600XT D4を選ぶかGeForce 8600 GT(例えば価格がほぼ同じのASUSの「EN8600GT SILENT/HTDP/512M」)を選ぶか迷うかもしれない。UVDのサポートやHDMIインタフェースアダプタの付属などHD向け機能を評価するユーザーならEAH2600XT D4を選ぶのはいい判断といえる。3Dゲームのウエイトがそれほど高くないならGDDR3を載せた「EAH2600XT/HTDP/256M」を選びたいところだが、こちらはHDCPに対応しているものの、HDMIアダプタが付属していないので、そこが気になるユーザーはやはりEAH2600XT D4となる。
一番悩むのは3D性能を優先するユーザーだ。それでも、3DMarkの値が気になってしょうがないというベンチマークフリークは比較的簡単で、EAH2600XT D4を選べばいい(ただ、そういう志向のユーザーはハイエンドGPUに走るほうがいい)。困るのがゲームのパフォーマンスを重視するユーザーで、たしかにベンチマークではDOOM3、Quake 4でいい結果を示していたものの、そのほかのゲームタイトルの結果を見ると、すべてのゲームで優れた性能を発揮できるとは言いがたい。Catalystのチューニングによる性能向上はまだまだ期待できるが、それが実際にどうなるのかは未知数だ。自分が楽しみたいゲームでRadeon HD 2600 XTが性能が発揮できるようになってから購入しても「遅くはない」というのが、現時点におけるこのGPUの評価となるのではないだろうか。
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