“ThinkPad”を生かしつつ“Lenovo”を主力ブランドに──レノボ副社長兼CMOが語る:ThinkPadは“サブ”に(2/2 ページ)
急ピッチで世界進出を図るLenovoにとって、世界規模での“Lenovoブランド”の確立が成功の鍵を握る。今後のブランド戦略を同社副社長兼最高マーケティング責任者に聞いた。
最高のPCキャンペーンで10年後の“レノボPC”を語る
もちろん、Lenovoは通常の広告も展開中だ。Lenovoでは同社のノートPCを「世界最高の技術が凝縮されたPC」というイメージに育てるため、極限状態下におけるLenovoの技術力を示す広告キャンペーン「最高のPC」(Best Engineered PC)を行っている。
そのうちの1つとして、炎天下での動作や水没状態、大きな衝撃などに同社のPCが耐えうるというイメージ動画を同社Webサイト(こちらから「Anthem」を選択)で公開している。ちなみに、オフィシャルではないもののYouTubeでも同じものが閲覧可能だ。
Lenovoのブランド知名度が向上しつつも「中国メーカー=クオリティが今ひとつ」という一般的なイメージをどうしても払拭しきれない日本市場においても、今年6月と8月に「最高のPC」キャンペーンを展開した。東京をはじめ大阪駅や名古屋駅、仙台駅といった鉄道網中心のキャンペーンだが、同社のWebサイトでも日本語版の動画が公開されている。興味深い映像なので、見てみるのも一興だ。
ちなみに、6月に行った同キャンペーンでは、ThinkPadシリーズは神奈川県大和市の大和研究所で開発され、以前と変わらないクオリティが保持されているといった内容の広告を地下鉄構内の広告板や車内の吊り広告を展開した結果、地下鉄利用者のうち62%が以前よりもLenovoのイメージが向上したとする調査結果が出たという。また、米国においては空港で同様のキャンペーンを行う予定だ。これらの宣伝場所が選ばれた理由としては、利用客が多いにも関わらずLenovo以外のPCメーカーが積極的に展開していない場所であり、ほかの場所よりも広告効果が高いからとのこと。
上記のような取り組みのほか、Lenovoは2007年になってインドにグローバルマーケティング本部を設置した。IBMから引き継いだPC事業は各国で独自のPR活動が展開され、一貫した広告効果が得られないという状態だったため、全世界に対して効率のよいマーケティングサービスを提供できる場が必要だと考えられたからだ。
単純に全世界に同じ広告を発信するわけではないので、大幅なコスト削減効果には直結しないものの、今後LenovoがPRするメッセージに一貫性が持たせられるほか、Lenovoの全広告のポートフォリオを作成して国や地域、目的に合わせてカスタマイズできるようになったのが大きな利点だという。
最終回となる次回では、同社がワールドワイド・スポンサーをつとめる2008年北京オリンピックの舞台裏に入り、同社とオリンピックの関係性に迫る予定だ。
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