エプソンが本気で作った“ビジネス”インクジェットプリンタ――「PX-B500」を試す:インク目詰まりゼロを目指して(4/4 ページ)
「PX-B500」はエプソンがビジネス向けに投入したA4インクジェットプリンタだ。家庭向けモデルにはない試みを多数搭載し、信頼性を高めている。
標準設定で不満のない印刷速度を確保、印刷品質も良好
B500はモノクロ/カラーともに約37ppmの印刷速度をうたうが、実際の速度を検証するために行ったベンチマークテストを紹介しよう。ただし、約37ppmの最速設定となるのは、インクを間引いて印刷するいわゆるドラフトモード時だ。この設定のまま通常運用するとは考えにくいため、テスト時のドライバ設定は「標準」状態とした。
ベンチマークテストの結果(すべてA4印刷) | |
---|---|
モノクロ出力(JEITA J1) | |
ファーストプリント | 12.34秒 |
37部プリント(給紙カセット) | 127.90秒 |
37部プリント(リアASF) | 159.48秒 |
37部プリント(ファーストプリント含めず/給紙カセット) | 119.40秒 |
37部プリント(ファーストプリント含めず/リアASF) | 149.52秒 |
両面38部 19枚プリント(給紙カセット) | 539.96秒 |
カラー出力(JEITA J9) | |
ファーストプリント | 13.47秒 |
37部プリント(給紙カセット) | 185.68秒 |
37部プリント(リアASF) | 196.41秒 |
37部プリント(ファーストプリント含めず/給紙カセット) | 158.24秒 |
37部プリント(ファーストプリント含めず/リアASF) | 186.26秒 |
両面38部 19枚プリント(給紙カセット) | 539.91秒 |
テストに使用したPCのスペック CPU:Athlon 64 3200+(2.0GHz)、メインメモリ:2Gバイト、HDD:Seagate Barracuda 7200.7(ST3160021A/160Gバイト)、OS:Windows Vista Ultimate(SP1) |
テストはストップウォッチによる手動計測で、各テストを5回実施し、その中間値を採用している。具体的には、いつものようにWord 2007(JEITA J1およびJEITA J9の最初の1ページ)の印刷画面で「OK」ボタンをクリックした瞬間から計測を開始し、最後の用紙が排出される瞬間までを計測している。そのほかのドライバ設定は、ソートや拡大/縮小の機能がオフ、両面印刷計測時はそれを有効にしている。
B500は消費電力の低さから常に電源を入れたまま運用すると思われるため、電源オンから印刷可能になるまでの計測は省略した。また、テスト結果はWord 2007の処理にかかる時間も含めた計測値になっている。
テスト結果は表を見てもらえば分かるが、ファーストプリントを含めたモノクロ印刷で約17ppm、カラー印刷では約12ppmとなり、ファーストプリントを含めない速度ではモノクロ印刷で約18ppm、カラー印刷で約14ppmとなった。ドライバの標準設定では、残念ながら公称スペックの最速約37ppmという値には遠く及ばない。
自動両面印刷の場合は、用紙のハンドリング時間を含めるため、モノクロとカラーで速度がほぼ変わらず、かかる時間も相当長くなってしまった。自動両面印刷は頻繁に使う機能というよりは、「いざとなれば両面印刷も可能」くらいに考えたほうが無難だ。
とはいえ、ドライバの標準設定でモノクロ17ppm、カラー12ppmのプリンタなのだから、価格を考慮すると大きな不満は出ないはずだ。実際にテスト中は両面印刷の計測時以外、印刷速度で大きなストレスを感じることはなく、小気味よく印刷されるのを見ると、インクジェット機でもビジネスユースに十分使えると思った。
印刷品質に関しては、エプソンが長年取り組んできた顔料インク搭載機だけあって、普通紙へのモノクロ印刷の品質に不満はない。また、普通紙を使ったカラー印刷も顔料インクジェット機ならではと思わせる品質だ。
なお、これは同社だけでなくビジネス向けインクジェットプリンタ全般にいえることだが、特徴として掲げる高速性を発揮するには「プリンタドライバ設定の変更が必要になる」という仕様は再考してもらいたい。ドライバの設定標準のまま、カタログでアピールする出力性能を実現できてこそ、高速エンジンを売り文句にできるのではないだろうか。
「インクを間引く設定で印刷すれば速くなる」というのは、例えるならば、追い風参考時の100メートル走で世界記録が出たときのような「あくまで公式なレコードではない」という印象を受けてしまう。
ドライバ標準設定の実測値でメーカー公称値を出すレーザープリンタが多い中で、こうした普段使わない設定での公称値を掲げるより、標準設定での実測値を素直に出したほうが、ユーザーにとって好印象なのはいうまでもない。
低価格なA4カラーレーザープリンタに十分対抗できる1台
これまで紹介してきたように、今回新たにB500に搭載された機能は、もともと同社の大判プリンタやプロ向けモデルで培い、そして改良を重ねてきたものだ。それらの技術の粋を集めることで、B500は信頼性の高いビジネス向けA4インクジェットプリンタに仕上がったといえる。
また、このような新機能はビジネス向けプリンタにとどまらず、今後はコンシューマー向けのプリンタにも、ぜひとも採用してもらいたいところだ。
B500は、実売価格が6万円弱とビジネス向けプリンタとしてはエントリークラスにあり、高速なプリントエンジンを持ち、そして低消費電力と大容量インクカートリッジでランニングコストが低い、といった部分を考えると、やはり冒頭で述べたように低価格A4レーザープリンタ対抗の選択肢となるだろう。
現在、ビジネス利用で低価格なA4カラーレーザーの購入を考えているならば、B500の導入も含めて検討することをおすすめしたい。使用環境によっては、B500のほうが適していることもあるはずだ。
関連記事
セイコーエプソン、両面印刷対応のビジネス向けインクジェットプリンタなど計4製品
セイコーエプソンは、「オフィリオプリンタ」の新モデルとなるビジネス向けA4インクジェットプリンタ計2モデル「PX-B500」「PX-B300」、およびA4モノクロ対応ページプリンタ「LP-S300」「LP-S300N」の計4製品を発表した。エプソン、26枚/分印刷対応のA3対応カラープリンタ「LP-S7500」
セイコーエプソンは、高速印刷に対応したA3カラーページプリンタ「LP-S7500」シリーズを発表した。セイコーエプソン、「つよインク200X」対応の“カラリオ”複合機新モデル2製品
セイコーエプソンは、インクジェット複合機“マルチフォトカラリオ”新モデル計2製品「PX-FA700」「PX-A640」を発表した。ともに最新の顔料インク「つよインク200X」を採用する。エプソンの“普通紙くっきり”プリンタを検証する
エプソンの複合機「PX-A740」とA4プリンタ「PX-V780」は、全色顔料インクを採用しているのが特徴だ。普通紙印刷に強い2つのモデルを使い比べてみた。セイコーエプソン、「つよインク200X」対応の“カラリオ”複合機新モデル2製品
セイコーエプソンは、インクジェット複合機“マルチフォトカラリオ”新モデル計2製品「PX-FA700」「PX-A640」を発表した。ともに最新の顔料インク「つよインク200X」を採用する。複合機07年モデル徹底攻略:第5回 複合機6モデルのスピードを比較検証する
2007年の複合機特集もいよいよ最終回。ハイエンド/ミドルレンジ計6モデルの印刷速度をじっくり比較し、最後に製品選択の指針をまとめよう。第4回 複合機6モデルの画質を解明する
失敗写真をフォローしてくれる自動補正機能は本当に使えるのか? 今回は合計約150枚もの印刷結果を4人で見比べるなど、画質の違いに迫る。第3回 複合機6モデルの付属ソフトを極める
特集の第3回では、エプソン、キヤノン、日本HPの各複合機に付属するソフトウェア、プリンタ/スキャナドライバの機能と使い勝手を検証する。第2回 複合機6モデルの機能と操作性を比較する
複合機特集の第2回は、エプソン、キヤノン、日本HPの注目モデルについて、本体だけで利用できる機能と操作パネルの使い勝手を比較する。第1回 最新複合機の傾向と注目モデルをチェック
本特集では、エプソン、キヤノン、日本HPの複合機最新モデルを横並びでじっくり検証していく。第1回は2007年のトレンドと注目モデルを解説しよう。セイコーエプソン、31枚/分の高速印刷対応A3モノクロレーザー「LP-S3000」シリーズ
セイコーエプソンは、高速印刷対応のA3モノクロレーザープリンタ「LP-S3000」シリーズなど計5製品を発表した。新カラリオは「小顔」と「美白」の効果あり――エプソンの複合機/プリンタ発表会
セイコーエプソンは複合機/プリンタの新製品発表会を開催。コンシューマー向けインクジェットプリンタ事業の現状と製品概要、販売戦略を明らかにした。エプソンが複合機/プリンタの07年モデルを発表――画像補正と高速化に注力
セイコーエプソンは「カラリオ」シリーズの新製品を発表した。複合機4モデル、A4プリンタ2モデル、A3プリンタ1モデルを10月4日から順次発売する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.