レビュー

“45ナノ”でPhenomが飛翔する──“Denebコア”Phenom II X4の性能に迫るイマドキのイタモノ(1/3 ページ)

登板イニングが予定より長かった65ナノ版Phenomに、ようやく45ナノプロセスが加わった。消費電力やパフォーマンスがいかに改善されたか検証する。

本命Phenomが2009年初頭に登場

 AMDから45ナノメートルプロセスルールで製造されたクアッドコアCPU「Phenom II X4 940」「Phenom II X4 920」(開発コード名“Deneb”)が登場した。Denebコアは将来的にDDR3 SDRAMに対応したSocket AM3版も予定されているが、今回発表されたのは、現行のSocket AM2+に対応したマザーボードと安価なDDR2メモリで動作するモデルとなっており、既存プラットフォームからの移行が容易にできることと優れたコストパフォーマンスがインテルプラットフォームに対するアドバンテージとしてAMDはアピールしている。

 今回の評価作業ではクロックが変更できる「Phenom II X4 940」のサンプル版を用いて、Phenom II X4 940とPhenom II X4 920のパフォーマンスについて検証していきたい。

3次キャッシュ容量が2Mバイトから6Mバイトに大幅アップ

 Phenomシリーズからの変更点をスペックウからチェックしてみよう。繰り返しになるが、最大の変更点はプロセスルールが65ナノメートルから45ナノメートルにシュリンクされたことだが、3次キャッシュメモリが従来の3倍になる6Mバイトと大幅に増量されたことも改善点として挙げられるだろう。ただし、1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリの容量については、65ナノメートルプロセスルール版と同じになっている。

advertisement
製品名 コアクロック HTバスクロック 1次キャッシュ 2次キャッシュ 3次キャッシュ メモリサポート
Phenom II X4 940 3.0GHz 3.6GT/s 128KB(64KB+64KB)×4 512KB×4(2MB) 6MB PC2-8500(DDR2-1066)
Phenom II X4 920 2.8GHz 3.6GT/s 128KB(64KB+64KB)×4 512KB×4(2MB) 6MB PC2-8500(DDR2-1066)
Phenom X4 9950 Black Edition 2.6GHz 2.0GT/s 128KB(64KB+64KB)×4 512KB×4(2MB) 2MB PC2-8500(DDR2-1066)
製品名 プロセスルール トランジスタ数 ダイサイズ TDP Max.TEMP コア電圧
Phenom II X4 920 45ナノ 7億5800万 258平方ミリ 125ワット 62 0.875~1.50ボルト
Phenom II X4 940 45ナノ 7億5800万 258平方ミリ 125ワット 62 0.875~1.50ボルト
Phenom X4 9950 Black Edition 65ナノ 4億5000万 285平方ミリ 125/140ワット 61~64 1.05~1.30ボルト

 キャッシュメモリ容量が大幅に増えたことで、トランジスタ数はPhenomシリーズから1.6倍程度増えているが、プロセスルールのシュリンクにより、ダイサイズは約9割程度に小型化されており、コストパフォーマンス面での改善にも寄与している。

 なお、データシートで示されているTDPや最大周辺温度については、従来のPhenom X4よりわずかに抑えられている。メモリコントローラは、従来と同じPC2-8500(DDR2-1066)への対応となっている。

CPU-Z(1.49)で取得したCPUの情報。左がPhenom II X4 940、右がPhenom X4 9950

ライバルはだれ? DenebコアPhenom II X4のパフォーマンスをチェック

 では、実際にベンチマークテストでPhenom II X4 940と同 920の性能を見ていこう。なお、Phenom II X4 920の性能は、Phenom II X4 940のCPUのクロック倍率を変更して2.8GHzにしたものを用いている。製品版と完全に同じ条件とはいえないが、参考データとして参照していただきたい。

 今回は比較用に従来モデルであるPhenom X4 9950 Black Editionに加え、DDR2版のライバルと目されるCore 2 Quadの上位クロックモデルであるCore 2 Extreme QX9770(3.20GHz)とIntelの最新製品であるCore i7 965 Extreme Edition(3.20GHz)を加えている。Core i7 965 Extreme Editionについては、倍率とQPIの設定を変更して、Core i7 920(2.66GHz)、同 940(2.93GHz)相当の測定結果についても掲載している。Hyper-threadingはON、TurboモードもONに設定している。こちらの数値についても、参考データ程度と考えていただきたい。

テスト環境(AMD)
CPU Phenom II X4 940(3.0GHz) Phenom II X4 920(2.8GHz) Phenom X4 9950BE(2.6GHz)
マザーボード GA-MA790GP-DS4H
チップセット AMD 790GX+SB750
メモリ Patriot PSD24G800KH DDR2 PC2-6400 (5-5-5-15) 2Gバイト×2
グラフィックスカード ASUS EAH4870/HTDI/512M
グラフィックスドライバ Catalyst Drivers 8.12
HDD Deskstar P7K500 HDP725050GLA360
OS Windows Vista Ultimate SP1 英語版
テスト環境(Intel)
CPU Core 2 Extreme QX9770(3.2GHz) Core i7-965 Extreme(3.2GHz) Core i7 940(2.93GHz) Core i7 920(2.66GHz)
マザーボード ASUSTeK P5K-E ASUS P6T Deluxe
チップセット Intel P35+ICH9R Intel X58 Express+ICH10R
メモリ Patriot PSD24G800KH DDR2 PC2-6400 (5-5-5-15) 2Gバイト×2 Qimonda IMSH1GU03A1F1C-10F(7-7-7-20) 1Gバイト×3
グラフィックスカード ASUS EAH4870/HTDI/512M
グラフィックスドライバ Catalyst Drivers 8.12
HDD Deskstar P7K500 HDP725050GLA360
OS Windows Vista Ultimate SP1 英語版
開発コード名“Deneb”と呼ばれていた45ナノメートルプロセスルール版Phenom「Phenom II X4 Black Edition」。動作クロック3.0GHzで上位モデルにあたる。OPNは“HDZ940XCJ4DGI”だ(写真=左)。評価作業ではマザーボードにGIGABYTEの「GA-MA790GP-DS4H」を使用した。今回登場したPhenom IIはSocket AM2+に対応したマザーボードがそのまま利用できる(写真=中央)。グラフィックスカードはRadeon HD 4870を搭載したASUSの「EAH4870/HTDI/512M」の初期ロットタイプを使用した。GDDR5を512Mバイト搭載している(写真=右)
       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.