人と情報をつなぐSymantecへ――エンリケ・T・セーラムCEO来日会見
「人と情報を中心とする新しいアプローチでSymantecが信頼を提供していく」――米Symantecのエンリケ・T・セーラムCEOが初来日し、同社の事業戦略について語った。
米Symantecは11月30日、同社の事業戦略を説明する記者説明会を実施した。発表会では2009年4月にCEOへ就任したエンリケ・T・セーラム氏が登壇し、同社が目指す今後のビジョンを語るとともに、富士通との戦略的提携も発表された。
セーラム氏はまず、ネット社会における大きなトレンドとして、「仮想化」「クラウド」「ソーシャル」など8つのキーワードを挙げ、IT化が進んだ将来のライフスタイル像を1つのシナリオで説明した。「ジュリーの一日」と題したそのシナリオでは、主人公のジュリーが起床してすぐにタブレット端末でスケジュールの確認を行い、出勤途中やオフィスで会議の手配をしたり、母親に贈る花を購入するなど、仕事とプライベートの両面でITを活用するライフスタイルが描かれている。
セーラム氏は「このシナリオは今まさに展開されていることだ。ITはあくまでバックグラウンドであり、中心にはユーザーがいて、情報がついてくる状態になっている」と説明。今後の予測として、すべてが人と情報を中心に動き、ビジネスとプライベートが融合し、シンプルで安全な情報へのアクセスが期待されるようになるという。
スライドで紹介されたシナリオでは、ジュリーはうっかり端末を壊してしまうが、会社から支給された代替端末をすぐにセキュリティを確保した状態でパーソナライズしている。また、ジュリーが会議でプレゼンをするバックグラウンドでは、データセンターで火災事故が発生するが、すぐにバックアップが運用され、サービスが分断されることなく、会議は無事に進んでいく。そして会議を終えたジュリーは、仕事の合間に安全だと認証されたWebサイトから花を購入して母親に贈る――セーラム氏は「重要なのはデバイスでもインフラでもなく、人と情報だ」と強調し、いつでも、どこにいても、どのデバイスでも安全に必要な情報へアクセスできる世界を提示する。
さらに同氏はこれを実現するための要素として「個人認証セキュリティ」「デバイスセキュリティ」「情報の保護」「(情報の)前後関係と関連性」「クラウド」の5つを挙げ、2010年に行ったVeriSignのセキュリティ関連事業の買収や、暗号化ベンダーであるPGPとGuardianEdgeの買収に触れて、同社が個人認証やデータ保護の分野でも主導的に地位にいることをアピールした。
セーラム氏は、情報と人を中心にした新しい考え方、具体的には人と情報に属性をつけ、その情報は誰が作ったのか、誰がどこでアクセスするのか、どのレベルまでアクセスを許すのか、どのくらいの頻度でバックアップをするのかといったポリシーに基づいて情報を扱うアプローチにシフトする必要性を訴え、「人と情報を中心にSymantecが信頼と自信を提供していく」と語った。
一方、企業買収を繰り返してきたSymantecだが、IBMやオラクルのように、ハードウェアからアプリケーションまですべてを提供する垂直統合型サービスではなく、あくまで水平展開を行い、その戦略にマッチするパートナーと提携してビジネスを進めていくとも表明している。同日はその一環として、富士通のクラウドサービス「オンデマンド仮想システムサービス」にSymantec Endpoint Protectionが採用されたこと、富士通のPCサーバとSymantecの「BackUp Exec」を組み合わせたバックアップソリューションを提供していくことも発表している。
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