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HiDPIやRetinaを誤解してない?――4K時代のディスプレイ選びに欠かせない「画素密度」を理解するITmedia流液晶ディスプレイ講座III(3/4 ページ)

スマートフォンやタブレットから始まったディスプレイの高画素密度化は、PCディスプレイの世界にも波及。2014年にはPC向けの4Kディスプレイが台頭し、画面サイズ、解像度とともに、「画素密度」の把握が製品選びで重要になってきた。今回は最新の技術動向も含め、ディスプレイの高画素密度化をテーマに解説する。

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超高画素密度ディスプレイの普及を後押しするソフトウェアサポート

 こうしたPC用のOSにおける高画素密度ディスプレイ環境のサポートは、「HiDPI」対応と言われている。OS側の対応に伴い、アプリケーション側の対応も進み、HiDPIを取り巻くPCソフトウェア環境が実用レベルになってきたことも、4Kのような超高画素密度ディスプレイの普及を後押ししているのだ。

 Windows OSは、Windows XPの時点で表示密度を変更できる設計だったが、画面のレイアウトが崩れたり、対応するアプリケーションがほとんど存在しなかったため、実用されない機能だった。画面レイアウトが大きく崩れることなく、実用レベルでスケーリング拡大機能が使えるようになったのは、Windows 7からだ。

 さらにWindows 8.1以降では、複数のディスプレイを接続した場合、ディスプレイごとに異なる表示密度の設定を適用でき、画素密度の異なるディスプレイを混在させた多画面環境での違和感が低減した(ただし、表示密度の組み合わせを細かくカスタマイズできるわけではなく、設定の段階数は限られている)。

 Mac OS Xに関しては、Windows陣営に先駆けて高画素密度ディスプレイ(AppleはRetinaディスプレイと呼ぶ)の普及を推進してきたので、Windowsより早く表示密度が可変のOS設計への最適化が進んでいる。OS X Mavericks 10.9.3以降では外部ディスプレイのHiDPI表示に対応し、他社の高画素密度ディスプレイと組み合わせて使いやすくなった。

Windows 8.1におけるスケーリング拡大率の設定画面。UHD 4Kディスプレイの場合、「特大-200%」に設定すれば、同画面サイズのフルHDディスプレイと同等のサイズでアイコンや文字が表示される。デスクトップ上のすべてのサイズを変更するのではなく、特定部分の文字サイズだけを調整する設定も持つ
PC用OSのHiDPIサポート状況
OS HiDPIサポート ディスプレイ別の表示密度設定
Windows 8.1 Modern UI
Windows 8.1 デスクトップUI
Windows 8 Modern UI
Windows 8 デスクトップUI
Windows 7 デスクトップUI
Windows Vista デスクトップUI
OS X Yosemite (10.10)
OS X Mavericks (10.9.3以降)
OS X Mavericks (10.9.2以前) △ (内蔵ディスプレイのみ)

 アプリケーションについても、オフィススイートのMicrosoft Office 2013(Windows)/2011(Mac)や主要なWebブラウザなどが続々とHiDPIに対応しているほか、画像編集ソフトのAdobe Photoshop ElementsもVer.13から対応、Photoshop CCも200%手動設定の暫定対応を行い、高画素密度ディスプレイをフル活用できる下地は整ってきた。

 ハードウェアに関しては、もともと最近のGPUは一般的な用途であればオーバースペックとも言えるほどの処理性能を備えているため、それほど高性能なPCでなくとも4Kは表示できるだろう(4Kのゲームや動画を楽しむとなると話は違ってくるが)。参考までに、EIZOの31.5型4KディスプレイであるFlexScan EV3237のGPU対応状況を下表にまとめた。

GPUの4Kディスプレイ「FlexScan EV3237」対応状況
メーカー 製品 DisplayPort(3840x2160ピクセル/60Hz)
AMD Radeon HD 7700以降
Radeon R7以降
Fire Pro Wシリーズ以降
NVIDIA GeForce GTX 650以降
Quadro Kシリーズ以降
Intel HD Graphics 4200以降
Apple Mac Pro(Late 2013、OS X 10.9.3以降、FirePro D300)

ディスプレイの「高画素密度化」が進む背景

 こうした高画素密度化のトレンドが一般化する流れは、Appleが2010年以降、大々的に「Retinaディスプレイ」をiPhone、iPad、Macといった主力製品に採用したことで一気に加速した。これは「人間の目の網膜(Retina)で識別可能な画素密度に匹敵あるいは超えた高精細表示」をコンセプトにした高画素密度ディスプレイのことだ。

Appleの「Retinaディスプレイ」を採用した「iPhone 6 Plus」(左)と「iPad mini 3」(右)。いずれも近くで画面を見ても、画素を識別できない高精細表示となっている

 やはり映像デバイスは、その表示を見ることこそが千言万語に勝る説得力をもたらすことが多い。Retinaディスプレイの登場と反響のよさ、それに追従してさまざまなメーカーがスマートフォン、タブレット、そしてPCに高画素密度のディスプレイを投入したことで、高画素密度ディスプレイが一般ユーザーにも広まっている状況だ。

 もちろん、飛び抜けて高価では普及しないが、同時に低価格化も進んでいる。これは液晶パネルの製造技術が向上したこと、高画素密度の液晶パネルを採用する製品が大幅に増えたことで生産面でのスケールメリットが出しやすい環境になったこと、高画素密度の液晶パネルを搭載した製品での価格競争が生じたことなど、複合的な理由がある。

 このようにHiDPI表示を行うための環境がソフトウェア、ハードウェアとも整ったこと、これを受けてディスプレイメーカーが積極的に4Kディスプレイを投入し始めたことにより、一気に「超高画素密度ディスプレイ」の気運が高まっているというわけだ。

 下表に主な高画素密度ディスプレイの仕様をまとめた。スマートフォンやタブレットに比べてPC用ディスプレイの画素密度は低いが、PCの場合は視聴距離が50センチ前後は離れるため、これらに劣らない滑らかで高精細な表示に見える。目安として、PC用外付けディスプレイの場合、画素ピッチが約0.2ミリより狭いと、等倍表示での常用は厳しくなってくるため、スケーリングの設定による拡大表示が求められる

高解像度・高画素密度ディスプレイの例
PC用外付けディスプレイ
画面サイズ 解像度 アスペクト比 画素密度 画素ピッチ
23型ワイド(参考) 1920×1080ピクセル 16:9 約96ppi 約0.27ミリ
23.8型ワイド(UHD 4K) 3840×2160ピクセル 16:9 約185ppi 約0.14ミリ
25型ウルトラワイド 2560×1080ピクセル 21:9 約111ppi 約0.23ミリ
26.5型スクエア 1920×1920ピクセル 1:1 約102ppi 約0.25ミリ
27型ワイド 2560×1440ピクセル 16:9 約109ppi 約0.23ミリ
28型ワイド(UHD 4K) 3840×2160ピクセル 16:9 約157ppi 約0.16ミリ
29型ウルトラワイド 2560×1080ピクセル 21:9 約96ppi 約0.26ミリ
30型ワイド 2560×1600ピクセル 16:10 約101ppi 約0.25ミリ
31.1型ワイド(DCI 4K) 4096×2160ピクセル 約17:9 約149ppi 約0.17ミリ
31.5型ワイド(UHD 4K) 3840×2160ピクセル 16:9 約140ppi 約0.18ミリ
32型ワイド(UHD 4K) 3840×2160ピクセル 16:9 約138ppi 約0.18ミリ
34型ウルトラワイド 3440×1440ピクセル 21:9 約110ppi 約0.23ミリ
40型ワイド(UHD 4K) 3840×2160ピクセル 16:9 約110ppi 約0.23ミリ
PC用内蔵ディスプレイ
画面サイズ 解像度 アスペクト比 画素密度 画素ピッチ
11.6型ワイド 1920×1080ピクセル 16:9 約190ppi 約0.13ミリ
13.3型ワイド 1920×1080ピクセル 16:9 約227ppi 約0.11ミリ
12型ワイド 2160×1440ピクセル 3:2 約216ppi 約0.12ミリ
13.3型ワイド 2560×1440ピクセル 16:9 約221ppi 約0.12ミリ
13.3型ワイド 2560×1600ピクセル 16:10 約227ppi 約0.11ミリ
14型ワイド 3200×1800ピクセル 16:9 約256ppi 約0.1ミリ
15.4型ワイド 2880×1880ピクセル 16:10 約223ppi 約0.12ミリ
15.6型ワイド(UHD 4K) 3840×2160ピクセル 16:9 約282ppi 約0.09ミリ
タブレット
画面サイズ 解像度 アスペクト比 画素密度 画素ピッチ
7型ワイド 1920×1200ピクセル 16:10 約323ppi 約0.079ミリ
7.9型スクエア 2048×1536ピクセル 4:3 約324ppi 約0.078ミリ
8型ワイド 1920×1200ピクセル 16:10 約283ppi 約0.09ミリ
8.9型スクエア 2048×1536ピクセル 4:3 約288ppi 約0.088ミリ
8.9型ワイド 2560×1600ピクセル 16:10 約339ppi 約0.075ミリ
9.7型ワイド 2048×1536ピクセル 4:3 約264ppi 約0.096ミリ
10.1型ワイド 1920×1200ピクセル 16:10 約224ppi 約0.113ミリ
10.5型ワイド 2560×1600ピクセル 16:10 約288ppi 約0.088ミリ
スマートフォン
画面サイズ 解像度 アスペクト比 画素密度 画素ピッチ
4型ワイド 1136×640ピクセル 約16:9 約326ppi 約0.078ミリ
4.3型ワイド 1280×720ピクセル 16:9 約342ppi 約0.074ミリ
4.6型ワイド 1280×720ピクセル 16:9 約319ppi 約0.08ミリ
4.7型ワイド 1334×750ピクセル 約16:9 約326ppi 約0.078ミリ
4.95型ワイド 1920×1080ピクセル 16:9 約445ppi 約0.057ミリ
5型ワイド 1920×1080ピクセル 16:9 約441ppi 約0.058ミリ
5.1型ワイド 1920×1080ピクセル 16:9 約432ppi 約0.059ミリ
5.2型ワイド 1920×1080ピクセル 16:9 約424ppi 約0.06ミリ
5.2型ワイド 2560×1440ピクセル 16:9 約565ppi 約0.045ミリ
5.5型ワイド 1920×1080ピクセル 16:9 約401ppi 約0.063ミリ
5.6型ワイド 2560×1440ピクセル 16:9 約525ppi 約0.048ミリ
5.96型ワイド 2560×1440ピクセル 16:9 約493ppi 約0.052ミリ

提供:EIZO株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2014年12月17日

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