HiDPIやRetinaを誤解してない?――4K時代のディスプレイ選びに欠かせない「画素密度」を理解する:ITmedia流液晶ディスプレイ講座III(4/4 ページ)
スマートフォンやタブレットから始まったディスプレイの高画素密度化は、PCディスプレイの世界にも波及。2014年にはPC向けの4Kディスプレイが台頭し、画面サイズ、解像度とともに、「画素密度」の把握が製品選びで重要になってきた。今回は最新の技術動向も含め、ディスプレイの高画素密度化をテーマに解説する。
4KやHiDPIを含め、多様化が進むPCディスプレイ
これまで紹介した4KやHiDPIといったトレンドを含め、昨今のPCディスプレイは多様化が進んでいる。現状におけるPCディスプレイの画面サイズ、解像度、画素密度、アスペクト比といった動向をまとめておこう。
2000年代後半からPCディスプレイ市場ではアスペクト比が5:4や4:3のスクエア画面が減少し、16:9や16:10のワイド画面が拡大してすっかり定着した。これとともにサイズも17型や19型のスクエア画面から、23型や24型のワイド画面に移行している。
さらに、より快適な環境を求めて27型ワイド以上のワイド大画面へ移行する動きも活発になっている。その移行も、より広い作業スペースを求める層は3840×2160ピクセル(UHD 4K)や2560×1440ピクセル(WQHD)へ、より低価格で視認性の高い表示を求める層は据え置きの1920×1080ピクセル(フルHD)へと分化している状況だ。
近年ではワイド画面をさらに横へ引き伸ばしたウルトラワイド画面の製品も登場した。これはシネスコディスプレイとも呼ばれるアスペクト比21:9の超横長画面を採用した製品であり、一般的なディスプレイ1台の環境から切り替えるにはあまり適さないものの、コンポーザーやスプレッドシートを日常的に使用するようなビジネス層や、横置きのデュアルディスプレイ環境からのリプレース需要がある。
一方、これまでとまったく異なる傾向として、EIZOはアスペクト比1:1の正方形パネルを採用した26.5型ディスプレイ「FlexScan EV2730Q」を2015年春に発売する予定だ。実にユニークな画面サイズだが、フルHDを縦に伸ばした1920×1920ピクセルという高解像度なので、縦横とも作業領域に余裕がある。フルHDディスプレイを縦位置にして2台並べた状態で利用しているユーザーの多さも考えると、汎用(はんよう)性は高い。
4Kなど高画素密度のディスプレイが台頭し、「解像度の高さ(画素数の多さ)=作業スペースの広さ」という概念が取り払われつつある昨今でも、画面サイズが作業スペースに大きな影響を与えることに変わりはない。選択の1つの目安としては、紙のサイズと比較するのが作業効率の面で分かりやすいだろう。下表に主な用紙のサイズをまとめたので、上に示した画面サイズの表示面積と併せて確認してみてほしい。
主な用紙のサイズ | ||||||
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用紙の種類 | A4 | B4 | A3 | A3ノビ | B3 | A2 |
用紙サイズ(横×縦) | 297×210ミリ | 364×257ミリ | 420×297ミリ | 約483×329ミリ | 515×364ミリ | 594×420ミリ |
※A3ノビとは業務印刷での位置合わせや裁断の目印となるトンボをA3の印刷領域の外側に打てるサイズだが、統一規格がなく用紙によりサイズが少し異なる |
例えば、現在主流の23型フルHDディスプレイだと表示面積は約509×287ミリで、A4用紙(297×210ミリ)1枚分を確保でき、広い余剰スペースが残る。Webブラウズやちょっとしたスプレッドシートを扱う程度なら十分に事は足りるが、A4見開きの実寸表示では縦方向が狭い。
A4見開き、つまりA3用紙(420×297ミリ)へのプリントを想定したフォトレタッチやDTP、デザインワークなどに用いるのであれば、A3サイズを実寸で表示できる領域+ツールパレットの領域を確保できたほうが、仕上がりのイメージを確認しながら遅滞なく作業を進められる。この条件では、24型ワイド(約531×299ミリ)以上が候補になるだろう。
また、A3ノビ(規格として定まってはいないが483×329ミリ程度)までを想定するならば、さらに一回り大きい27型ワイド(約582×364ミリ)という具合に、用紙サイズを指標として必要とする画面サイズの見当を付けることができる。
主なPC用外付けディスプレイの画面サイズ | |||||
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ワイド液晶ディスプレイ | |||||
画面サイズ | 表示領域 | 解像度 | アスペクト比 | 画素密度 | 画素ピッチ |
19型ワイド | 約408×255ミリ | 1440×900ピクセル | 16:10 | 約89ppi | 約0.28ミリ |
19.5型ワイド | 約434×236ミリ | 1600×900ピクセル | 16:9 | 約94ppi | 約0.27ミリ |
20型ワイド | 約443×429ミリ | 1600×900ピクセル | 16:9 | 約92ppi | 約0.28ミリ |
21.5型ワイド | 約480×270ミリ | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約103ppi | 約0.25ミリ |
22型ワイド | 約474×296ミリ | 1680×1050ピクセル | 16:10 | 約90ppi | 約0.28ミリ |
23型ワイド | 約510×287ミリ | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約96ppi | 約0.27ミリ |
23.6型ワイド | 約521×293ミリ | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約93ppi | 約0.27ミリ |
23.8型ワイド | 約527×296ミリ | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約93ppi | 約0.27ミリ |
23.8型ワイド(UHD 4K) | 約527×296ミリ | 3840×2160ピクセル | 16:9 | 約185ppi | 約0.14ミリ |
24型ワイド | 約531×299ミリ | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約91.8ppi | 約0.28ミリ |
24.1型ワイド | 約518×324ミリ | 1920×1200ピクセル | 16:10 | 約94.3ppi | 約0.27ミリ |
25型ウルトラワイド | 約585×247ミリ | 2560×1080ピクセル | 21:9 | 約111ppi | 約0.23ミリ |
27型ワイド | 約598×336ミリ | 1920×1080ピクセル | 16:9 | 約82ppi | 約0.31ミリ |
27型ワイド | 約597×336ミリ | 2560×1440ピクセル | 16:9 | 約109ppi | 約0.23ミリ |
28型ワイド(UHD 4K) | 約620×349ミリ | 3840×2160ピクセル | 16:9 | 約157ppi | 約0.16ミリ |
29型ウルトラワイド | 約673×284ミリ | 2560×1080ピクセル | 21:9 | 約96ppi | 約0.26ミリ |
30型ワイド | 約641×401ミリ | 2560×1600ピクセル | 16:10 | 約101ppi | 約0.25ミリ |
31.1型ワイド(DCI 4K) | 約699×368ミリ | 4096×2160ピクセル | 約17:9 | 約149ppi | 約0.17ミリ |
31.5型ワイド(UHD 4K) | 約697×392ミリ | 3840×2160ピクセル | 16:9 | 約140ppi | 約0.18ミリ |
32型ワイド(UHD 4K) | 約698×393ミリ | 3840×2160ピクセル | 16:9 | 約138ppi | 約0.18ミリ |
34型ウルトラワイド | 約800×335ミリ | 3440×1440ピクセル | 21:9 | 約110ppi | 約0.23ミリ |
40型ワイド(UHD 4K) | 約878×485ミリ | 3840×2160ピクセル | 16:9 | 約110ppi | 約0.23ミリ |
スクエア液晶ディスプレイ | |||||
画面サイズ | 表示領域 | 解像度 | アスペクト比 | 画素密度 | 画素ピッチ |
17型スクエア | 約338×270ミリ | 1280×1024ピクセル | 5:4 | 約96.4ppi | 約0.26ミリ |
19型スクエア | 約376×301ミリ | 1280×1024ピクセル | 5:4 | 約86.3ppi | 約0.29ミリ |
21.3型スクエア | 約432×324ミリ | 1600×1200ピクセル | 4:3 | 約93.9ppi | 約0.27ミリ |
26.5型スクエア | 約476×476ミリ | 1920×1920ピクセル | 1:1 | 約102ppi | 約0.25ミリ |
4K時代の液晶ディスプレイ選びは「画素密度」と「作業スペース」を要確認
このように今後は液晶ディスプレイを選ぶにあたり、画面サイズと解像度の組み合わせによる「画素密度」も考慮に入れる必要がある。繰り返しになるが、超高画素密度のディスプレイは基本的にスケーリングによる拡大表示で利用することになるため、「解像度の高さ(画素数の多さ)=作業スペースの広さ」とはならない。ここは十分に注意すべきポイントだ。
液晶ディスプレイの多様化によって、ユーザーが自身の用途に合った製品を細かく選択できるようになったのは喜ばしいことだが、これは見方を変えると目的に合致しない製品を誤って購入してしまう危険性も増えたことになる。
「作業スペースを増やしたかったのに、超高画素密度ディスプレイを導入しても拡大表示しないと使えないため、買い替え前と作業効率が変わらなかった」などという悲劇を回避するためにも、超高画素密度ディスプレイは「非常に高精細な表示」にメリットがあること、作業スペースを広げるには画面サイズの大型化が有効なこと、という特徴をしっかりと把握したうえで、最適な機種を選定していただきたい。
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提供:EIZO株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2014年12月17日
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