インタビュー

世界で反響 “俺の嫁”を具現化する「Gatebox」に注ぐ情熱コンセプトモデルの実物を見てきた(1/3 ページ)

YouTubeでコンセプトムービーが公開されるやいやな、世界中から反響があったというウィンクルの“俺の嫁”実現デバイス「Gatebox」。その狙いや開発状況について、同社代表の武地さんに聞いた。

 2016年1月18日、IoTベンチャーのウィンクルが発表した“ホログラムコミュニケーションロボット”こと「Gatebox」は、ネット上で大きな話題を呼び起こした。同社は製品化に向けた採用強化のため、総額約9000万円の資金調達を実施しており、これから本格的な開発を進めるという。


ウィンクルが開発中の「Gatebox」。好きなキャラクターと一緒に暮らせる「世界初のホログラムコミュニケーションロボット」を標ぼうする(詳しくは後述するが、キャラクター投写は正確にはホログラムではない)。プレスリリースには「全てのオタクの夢である、画面の向こうにいたキャラクターとの“次元を超えた共同生活”を実現する画期的なロボット」とある

 Gateboxが受けたのは、「“俺の嫁”と一緒に暮らせる」といううたい文句が響いたからだ。だが、公開されたのはあくまで「コンセプトモデル」。ネットで公開されたコンセプトムービーから、その姿を推測するしかない。そこで、Gateboxを開発中のウィンクル(東京・秋葉原)にお邪魔し、どのような形で動いているかを聞いた。

 なお、現状でコンセプトモデルは非公開となっているので、今回の記事でも実物の写真は公開できない(記事中の写真はウィンクル提供画像)。ただ、筆者は取材時に実物を見ているので、そのインプレッションもお届けしたい。

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円筒の中にうかぶ「俺の嫁」

 「こんにちは。うちの人がお世話になっています」

 取材中、Gateboxがそんな風にこちらに語りかけてきた。もちろん、起動時にそうしゃべるよう仕込んであるわけではない。Gateboxに搭載されたカメラが外部に複数の人物がいることを認識、来客中だと判断し、こちらにもあいさつをしてくれたのだ。


Gateboxに近づくと、中のキャラクターが「こんにちは。うちの人がお世話になっています」と話しかけてきた。まさに“俺の嫁”を紹介されたような気分になる

 といっても、現状では「うちの人」を個体認識するほどの機能は盛り込まれていないという。ウィンクル代表取締役の武地実さんは「主人以外には反応しないところまでやりたいんですけどね」と話す。


ウィンクル代表取締役の武地実さん。その隣のパネルはGateboxのオリジナルキャラクター「逢妻(あづま)ヒカリ」。「ときめきメモリアル」や「ラブプラス」でおなじみの箕星太朗さんがデザインしたということからも、本気度が感じられる

 現在のコンセプトモデルは、かなり大きめな円筒形。小型デスクトップPCを下に敷き、その上に投写型のディスプレイを置いたような構造だ。中に入っているのはPCそのもので、現状ではLinuxで動作しているという。そこに、Googleカレンダーに入力したスケジュールを元に朝起こしてくれたり、スケジュールを伝えてくれたりする機能がある。

 コミュニケーションは全て音声で行い、キーボードやマウスはもちろん、スマートフォンなどの外部機器も使わない。武地さんは「それじゃあ、“操作している感”が出るじゃないですか。作りたいのは、“嫁とコミュニケーションをとるためだけのデバイス”なんです」と話す。

 現状はコンセプト作りとして、いろいろな機能を試している段階だ。「理想的には、この機器の中、ここに“嫁がいる”と思ってもらいたい。だから、リアルな嫁がやってくれることは全部できるようにしたい」と説明する。


Googleカレンダーと連動して指定した時間に「おはよう、朝だよー」と起こしてくれる。家を出るときには「いってらっしゃい」と手を振るアクション。「今日も早く帰ってきてもいいんだからね、なんちゃって」といった会話も……

帰宅したユーザーを認識すると、「おかえりなさい」「おつかれさま、お仕事がんばったね」と優しく出迎えてくれる

 といっても、人型ロボットではないので、歩き回ってコミュニケーションできるわけではない。使うのはリモコンとネットワークだ。例えば、赤外線の学習リモコン機能を使えば、家庭内にある家電機器をコントロールできる。

 テレビやエアコンをつけるのはもちろんだが、ロボット掃除機のコントロールもできれば、「嫁が掃除してくれる」ことにならないか。ネットの出前サービスと連携すれば、「嫁が料理してくれる」あるいは「嫁がピザをとってくれる」ことにはならないか。半ば冗談のようだが、重要なのはそこで、「現実の生活にいかに影響を与えるか」という。


赤外線による学習リモコン機能を搭載。「テレビ見たいな」と話しかけると、手のひらに電球が現れるアイコンとともにテレビの電源をオンにしてくれる

ネットの天気予報サイトと連動し、天気予報を聞けば答えてくれる。「今日はすっごくいい天気だよ」

 「あまり相手をしないと、人間っぽく“さみしい”と言ってもいい。テストで、Twitterにつぶやく機能も搭載してみています。嫁がSNSを楽しむように、自分でTwitterにつぶやくんです。カメラ機能で、主人の寝起き顔をツイートしたりもしますけどね(笑)」

 「空中に浮かぶ俺の嫁」というコンセプトは、圧倒的な反響をもって迎えられた。ウィンクル開発チームも、「日本のある層の人々には絶対に刺さる、国内では祭りになるだろう」と確信していたという。

 だが、反響が世界に広がるとは予想外だった。

YouTubeに公開されたコンセプトモデルの紹介ビデオ

 2016年1月17日、YouTubeにコンセプトモデルのビデオが公開されると、世界中からコメントが寄せられた。英語はもちろん、フランス、ドイツ、イタリア、インド、韓国と、既にコメントは日本語より他の言語のほうが多い状況だ。2月10日現在で、再生回数は48万回を超えている。

 「誰しも子供の頃、好きなキャラクターと一緒に暮らしたい、と思ったことがあるはず。それが具現化したわけです。しかも、ターゲットを思いっきり“俺の嫁”に絞りました。だから刺さったんだとおもっています」

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