「仕様書と違うから作り直せ」は通用しない? メーカーが語らないOEMビジネスの実情:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
OEMやODMのビジネスでは、要求した本来の仕様とは異なる製品が外注先からメーカーへと納品されてきても、メーカー側が泥をかぶらざるを得ないケースが多い。契約に従って外注先に責任を取らせるのが難しい理由とは?
外注先を切ると既存のラインアップにも影響が及ぶ
また、メーカーが用意した設計図の通りに製造を行うOEMならまだしも、自ら企画製造した完成品を売り込んでくるODM先は、いったん取引を切ってしまうと、既に自社製品として販売中の製品を継続して仕入れるのが困難になる。早い話、製品ラインアップそのものが人質に取られるわけだ。
こうしたことから、たとえOEM・ODM元の外注業者に不手際があろうとも、メーカー側は粘り強く交渉し、正しい仕様の製品が納入されてくるのを待つことになる。ミスを怒鳴りつけ、「1週間やるから必ず数をそろえて持って来い」といった要求が通る相手ではないし、きちんと契約を取り交わしていても、こうしたトラブルは日常茶飯事と言っていいくらい発生する。
そして、いよいよその業者では話にならないと判断し、取引を切って別の業者に鞍替えすることになった場合も、新しい業者を見つけて取引口座を開き、販売中のラインアップを順次移管してからでないと完全な乗り換えはできないので、ラインアップの数によっては2~3年のスパンが必要になる。工場を持たないファブレスメーカーであることが、逆に足かせになってしまうというわけだ。
しかも新しい業者への鞍替えで全ての問題が解決するかというとそうではなく、想定していなかった新しい火種が潜んでいる可能性も少なくないし、鞍替えを画策していることを相手に悟られると、露骨に対応が悪くなるなど、嫌がらせを受けるケースもある。
こうした裏事情を知ってしまうと、「仕様書と違っているのだから作り直させろ」「契約に従って外注先に責任を取らせるべし」といった原則論がいかに的外れであるか、よくお分かりいただけるのではないだろうか。
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