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「HDR時代」到来 テレビからiPhoneまで、HDRの現状を分かりやすく解説(2/3 ページ)

4Kの“次”の技術として映像分野で注目を浴びているHDR(High Dynamic Range)。「圧倒的なリアル感」とは聞くものの……そもそも何がすごいの? 静止画HDRとの違いは? HDRを楽しむには何が必要?

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4K/8Kを超える衝撃! HDR映像の圧倒的なリアル感

 色々と書いてきたが、4Kや8Kなどの数字で理解しやすい技術と異なり、HDRは理屈では分かってもなかなか想像しづらい。逆に言うと、実際に見さえすればSDRとHDRの違いは歴然だ。そうした機会のない方のために、現在EIZOで開発中のHDRリファレンスモニター「ColorEdge PROMINENCE CG3145」を内覧した拙い雑感を記しておく。

ColorEdge PROMINENCE CG3145

 今回、ColorEdge PROMINENCE CG3145に映し出された様々な映像を眺めながら第一に思ったのは、「本当にリアルさを求めたものなのだなあ」ということ。実際に体験するまでは、写真におけるHDR合成のイメージが強かったため、やや派手目の描写を思い描いていたのだが、実際にはそのようなこともなく、シャドーとハイライトが素直に伸びている印象を受けた。レンジが広いため、細部もしっかりと再現されており、非常に奥行きのある描写だ。映し出されたモノが本当にそこにあるかのようなリアルさがある。

 人の目は暗部の階調に敏感と聞くが、筆者が最も驚いたのもまさにこの点。夜の水面に街の灯が映り込んでいる映像は、水面の微妙な揺らめきがシャドーのみで表現されており、しかもその真横では街の灯が白飛びせずに色を保ったままキラキラと映り込んでいる。一般的には描写が難しいとされる、シャドーとハイライトが混在しているシーンだが、ColorEdge PROMINENCE CG3145ではしっかりと再現できていた。

 SDRのディスプレイと見比べるまでもなく(実際、隣に並べて映像を流していたのだが)、その違いは一目で分かる。もちろん、今回内覧したColorEdge PROMINENCE CG3145の試作機は、HDRコンテンツを制作するための業務用リファレンスモニターであり、一般的なHDR対応テレビとは異なるが、それでもHDRの世界観を手軽に体験したいなら、一度家電量販店のテレビ売り場に足を運び、HDR対応テレビを視聴してみる価値はあると思う。

4KとともにHDRが大々的にうたわれている量販店のテレビ売り場

HDRコンテンツを楽しむためには何が必要?

 さて、HDRが今までない映像体験をもたらしてくれるのは分かった。では、一般ユーザーがHDRを堪能するためには何が必要だろうか。

 まず第一には、テレビがHDR10の信号入力に対応していること。これはHDR対応をうたっているかどうかを見ればすぐに判別できるだろう。ただし、4KのテレビでもHDR非対応の製品はまだ市場にあるので、その点だけは注意したい。

 また、信号入力に対応しているだけで輝度やコントラスト比が低いテレビも存在する。当然ながら高いほうがHDRのコンテンツをよりリアルに表示できるが、なぜかテレビではこれらのスペックが公表されていないことも多い。そのようなときに1つの目安になるのが「ULTRA HD PREMIUM」ロゴだ。これはUHD Allianceがコンシューマーの混乱を避けるために制定したもので、デバイス、ディストリビューション、コンテンツの3種からなる。認証されたデバイスで、認証されたコンテンツを見れば、HDRを十分に堪能できますという保証である。

UHD Allianceが進める「ULTRA HD PREMIUM」ロゴ(写真=左)。一方、ソニーは独自の「4K HDR」ロゴを策定している(写真=右)

 ロゴを取得するための要件は多岐に渡るので詳細は割愛するが、この中でディスプレイは「ピーク輝度が1000cd/m2以上、黒レベル0.05cd/m2以下」または「ピーク輝度が540cd/m2以上で黒レベルが0.0005cd/m2以下」と定められている。前者は液晶、後者は有機ELを対象とした規定だ。難点は、その他の要件もかなりハードルが高いため、ロゴを取得した製品は、現状ではほぼ例外なく高めの価格帯になることだ。

 次に必要となるのは、HDRに対応したコンテンツ。どのようなコンテンツを視聴するかで変わってくるが、キーとなるのは「HDR10」と「Dolby Vision」という2つのフォーマットだ。HDR10はHDRの標準的なフォーマットであり、HDR対応という表記があればHDR10対応と思って問題はない。続くDolby Visionとは、その名の通りDolbyが開発した独自のHDR規格だ。ビット深度を12ビットに拡張(HDR10は10ビット)することで、より臨場感のある映像の実現を目指している。

 Dolby Visionで何よりユニークなのはメタデータの仕様だ。HDR10のメタデータはコンテンツ毎に定められているが、Dolby Visionではフレームごとにメタデータを定めているため、シーンごとに輝度を動的に設定することができる。これにより、Dolby Visionに対応したテレビであれば、それぞれのテレビの輝度性能に応じて最適な表示が得られる。

 なお、Dolby Visionの普及状況をみると、国内ではNetflixやひかりTVなどの動画配信サービスが採用・配信している。当然ながらデバイスもDolby Visionに対応する必要があるが、テレビはここにきて採用する機種が増え、待望のプレーヤーも発売されるなど、今後の伸長が予想される。

動画配信サービスも4K/HDR対応コンテンツを配信している(画面はNetflix

 そのほか、HDRを採用しているデバイスとしては、家庭用ゲーム機のPlayStation 4やXbox One Sなども挙げられる。実写をリアルにという方向だけでなく、CGを実写のようにという動きもあるわけだ。考えてみれば、PCゲームの世界においてもHDRレンダリングは半ば当たり前の存在だった。これまではSDRのレンジにスポイルせざるを得なかったが、今夏にはHDR対応PCディスプレイもポツポツと発表されており、テレビの勢いと合わせて一気に普及が進むかもしれない。

家庭向けゲーム機もHDRに対応している(写真はMicrosoftのXbox One

提供:EIZO株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2017年9月21日

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