AI開発をブーストする「DEEP∞」が世界一を目指すエッジAIとタッグを組む理由(1/3 ページ)
パソコン工房やグッドウィルを運営するユニットコムが手がけるAI開発/ディープラーニング専用PC/ワークステーションシリーズの「DEEP∞」に、新たな相棒としてアクセルおよびaxが提供する「ailia」が加わった。本取り組みにかける思いや狙い、そこに至った経緯などを伺った。
パソコン工房(ユニットコム)が発売している「DEEP∞」(ディープ インフィニティ)シリーズは、AI開発向け業務用PCだ。最新の開発環境がローカルで使える「NGC(NVIDIA GPU Cloud)」の設定サービスが付属するのに加え、2020年6月にはディープラーニングのフレームワークである「ailia SDK」(アイリアSDK)を提供しているax(エーエックス)とコラボレーションを開始した。DEEP∞を購入すると、オリジナルのデモツール「ailia AI showcase」の利用権利が付帯する(指定された配布先からダウンロードできる)。
このailia AI showcaseとはどのようなツールなのか、そして今回のコラボレーションの意図はどこにあるのだろうか。DEEP∞シリーズを手がけるユニットコムの菅原師人氏と、ailiaの開発を手がけるaxの品部仁志氏にオンラインでお話を伺った。
DEEP∞はAI開発、研究、検証に安心して使える「素性の良いハード」
――最初に、DEEP∞のコンセプトを教えてください。
菅原氏:DEEP∞は、AI開発やディープラーニングの研究をこれから始められる方、開発中の方にも効率よく導入いただくために用意したラインアップです。AIの開発、研究、検証、デモンストレーションなどに安心して利用できる素性の良いハードウェア構成とともに、コストパフォーマンスといった部分を強く意識しています。
――ブランド立ち上げの経緯を教えてください。
菅原氏:当社のテーマとして、「ユーザーの裾野を広げる」ということは常に意識しておりまして、DEEP∞もその一環になります。以前は、法人向けのBTOパソコンでNVIDIAのハイエンドGPUの要望はあまりなかったのですが、一時期から増えてきまして、お客さまのニーズをリサーチしたところ、このような用途が浮かび上がってきました。
お客さま側の課題として、既存のPCでは開発環境がうまく動かない、(未知の領域のため)大きな予算はあまりかけられない(高額なワークステーションなどは購入できない)という課題があり、当社のPCをお選びいただいたという経緯がありました。
――実際にどのような業種の企業が購入されているのでしょうか?
菅原氏:DEEP∞ブランドを立ち上げてからは、それ以前からカスタマイズでご要望があった大学さんや基礎研究をされている大手企業さんの他、AI開発のベンチャーさんなどにもお声がけいただくようになりました。現在では特定の業種を挙げることが難しいくらい、幅広いお客さまに使っていただいています。
――具体的な活用事例などがあれば教えてください。
菅原氏:活用事例については「企業秘密」とされていることが多いのですが、伺っている範囲では、画像認識で工場ラインにおける良品/不良品判定を行うアプリの開発や、監視カメラの映像から異常な行動(倒れる、座る、暴力的な振る舞い等)をしている人物を検出する事故防止システムの開発、概念実証を行われているようです。
――通常のゲーミングPCなどに比べ、DEEP∞が違うところはどんなところでしょうか? また、どのような優位性がありますか?
菅原氏:スペックの字面だけ見るとゲーミングPCとほぼ同じモデルもありますが、ゲーミング用途よりもシビアな連続稼働環境を想定して排熱機構などを設計しており、動作検証も手間をかけて厳しく行っています。実質的に、ワークステーションに準じた品質を持つものとなっています。ノートPCについても、業務用途で実績のある製品をベースにして最適化し、同様に厳しい動作検証を課しています。
また、NVIDIA GPU Cloud環境設定サービスを標準で付帯しているのも優位点といえます。AI開発においては、ドライバの依存関係が複雑で、必ずしも最新のドライバがベストとも限らず、開発環境の構築が1つ大きなハードルになっています。DEEP∞ではあらかじめ当社で事前検証を行っていますので、開発作業へスムーズに入っていただくことができます。AI開発のプロフェッショナルであっても、必ずしもLinuxや開発環境構築のエキスパートとは限りませんので、そうした部分をフォローできるのも当社の強みだと考えています。
――現行のラインアップの中で人気のモデルは何でしょうか?
菅原氏:最近ですと、4コア8スレッドのXeon W-2123とTITAN RTXのGPUを搭載したミドルタワー型モデルが伸びていますね。また、ノートPCもよく売れています。以前にAI関連の展示会などでゲーミングPCがデモ用に使われているのを見かけ、DEEP∞にもノートPCを加えることにしたのですが、企業さまからの引き合いを多くいただいています。やはり持ち運べてデモを動かせるという点が大きいようで、展示会のデモやプレゼンテーションにご利用いただいているようです。
――TITAN RTXというのは意外ですね。
菅原氏:当初はリーズナブルなGeForceの方が多く出ていましたが、徐々にハイエンドにシフトしてきていますね。これはGeForceで始めたお客さまが、実際に開発や研究で利用しているうちにパフォーマンスの課題が分かってきて、ステップアップしているのではないかと感じています。
――今回、ailia AI showcaseのバンドルをスタートしていますが、その経緯を教えてください。
菅原氏:先程も申し上げましたユーザーの裾野を広げるという観点から、ハードウェアだけではない部分で付加価値を提供したい、既に購入された方にも新しい情報を届けたいと思っていたところに、axさんとのご縁があり取り組んでみました。
――ailia AI showcaseのバンドルによってどのような効果を期待しますか?
菅原氏:ailia AI showcaseでは、さまざまな学習モデルを試すことができますので、開発のヒントになったり、ミドルウェアであるailia SDKの導入をご検討いただいて、開発の効率化、工数削減など、業務や研究の一助になればと思います。最終的には、世に出回っている何か有名なサービスが、当社のDEEP∞とailia SDKを使って作られたというようなことになれば最高ですね。
提供:株式会社ユニットコム
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2020年9月10日
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