NVIDIA「RTX Spark」が登場間近 Arm版Windowsのソフト互換性は本当に大丈夫?:笠原一輝の「もう、どうなってもいいや!」(2/2 ページ)
NVIDIAが新たに投入するArmアーキテクチャ採用のPC向けSoC「RTX Spark」。Windows PCにおけるArmプロセッサの採用で懸念されるのがソフトウェアの互換性問題だが、ここではバイナリ変換技術「Prism」の役割から、アンチチートツールやドライバ対応の最新状況まで、WoAの互換性を巡る現状を解説する。
ATOKやゲーム向けアンチチートツールなどを時間を掛けて解決
NVIDIA RTX Spark搭載ノートPCにおけるカプコンのSFアクションアドベンチャーゲーム「プラグマタ」の動作デモ。NVIDIAのAI利用超解像技術「DLSS」が、2026年6月時点で既に動作していた(写真:PC USER編集部)
2018年にWoAをリリースしたMicrosoftだが、そのシリコンパートナーとなったQualcommは、この8年~9年の間にそうした問題をモグラたたきのように1つ1つつぶしてきた。
プリンタのドライバであれば、プリンタベンダーに連絡をとってArm版のプリンタドライバを作ってもらうなどの取り組みを行ってきた。こういった取り組みにより、当初は対応していなかったグローバルにはHP、日本ではエプソンやブラザー工業のプリンタなどがWoAで使えるようになった。
PC向けの主要な製品の中では、アドビのCreative Cloudのアプリが使えない問題も長い間指摘されてきた。当初はPhotoshopとLightroom程度しかサポートされてこなかったが、現在は(β版も入れると)ほとんどのアプリがWoA上で使えるようになっている。WoA向けに提供されていないのはIllustratorとInDesignぐらいで、それらの2つもβ版は提供されており、WoAで利用することが可能だ。
日本ではIME(日本語変換機能)であるジャストシステムのATOKの動作に問題がある(Arm ISA向けに書かれたソフトウェアでATOKが使えない)という課題が2018年の発売時点からずっと言われてきた。
長らくこれも解決されてこなかったのだが、2026年2月に投入されたATOKの最新版(Tech.Ver 36)からArm ISAに対応したモジュールが提供されるようになって解決した。
一般消費者向けではAAAタイトルなどのゲームとの非互換性が指摘されてきた。ゲーム本体は前出のPrismを利用することで、x86 ISA向けに書かれたゲームでも実行することができる。ゲームで変換作業とかしていたら性能面はどうなのと思われるかもしれないが、Prismでは初回起動時にCPUで書かれたコードを変換して、それをストレージ上にキャッシュとして保存する機能を持っている。
初回の起動時に若干の時間がかかることは否定できないが、キャッシュが一度作られるとArm ISAのソフトウェアを実行しているのと同じように実行できる。
GPUが担当する描画に関しては、DirectXやOpenGLといったグラフィックス系のAPIが利用される。これらのAPIではそもそもCPUのISAから独立して作られており、x86であろうがArmであろうが同じ速度で実行できる。こうした仕組みが採用されているため、ゲームそのものの実行速度に関しては、基本的に問題ない。
しかし、ゲームパブリッシャーがAAAタイトルのインストール時に導入する「アンチチートツール」に関してはArm ISA環境で互換性問題が発生してきた。このアンチチートツールは、ネット越しの対戦ゲームなどでプレイヤーがズルをしていないことを確認するために使われ、インストール時にOSのカーネルレベルで動作するデバイスドライバをインストールする。
そのデバイスドライバのArm版が提供されていなかったため、AAAタイトルは「アンチチートツールがインストールされていない」と判断してゲームを起動しないという問題が起きていた。
この問題も既に解決の終盤に向かいつつあり、多くのゲームパブリッシャーがArm版デバイスドライバを備えたアンチチートツールの提供を開始している。おおむね市場にあるAAAゲームのうち90%は対応が進んでおり、残るはEA(Electronic Arts)のアンチチートツールが提供されれば、ほぼ解決に向かう見通しだ。
このように、既に「WindowsにおけるArm ISAソフトウェアの互換性問題」は(多少乱暴だが)過去の話になりつつある。プリンタドライバの一部などには依然として課題(例えば企業向けだけに提供されているセキュリティ機能が実装されているプリンタドライバ)が残るが、逆に言うとその程度になってきており、今やWoAでもx86のWindowsとあまり変わらない状況に変わりつつある。
その意味で、NVIDIAがこの秋にRTX Sparkを出す時には、互換性問題はほぼ解消(見込みを含め)という状況を迎えている。もちろん問題の性質上100%になることはないのだが、CPUがArmだといってもソフトウェア互換性問題はもはやあまり心配する必要がない、それが今の状況だ。
関連記事
ノートPCのバッテリー持ちを劇的に変えた新世代SoC──Intel、Qualcomm、AMDの最新動向を探る
最近のノートPCは、なぜこれほどまでにバッテリー駆動時間が長くなったのだろうか。AI PCに採用されている最新のCPU/SoCを例に、バッテリー持ちの鍵を握るチップの消費電力の仕組みと、各プロセッサメーカーの最新動向を解説する。メモリ倍増でPCの価格も倍に? AI需要で高騰するパーツ価格の背景と無料ツールでメモリ不足を解消するテクニック
さまざまなIT関連イベントや、PCのテクノロジーなどを追いかける笠原一輝さんが、取材の合間に気が付いたこと、日々ぼんやり思っているけど原稿には反映されていないこと……といったアレコレをまとめた新連載がスタートです。決して、投げやりではないですよ!「RTX Spark」搭載のWindows PCは10月に登場 LAN内のPCを束ねてローカルAI処理を分散・高速化する「NVIDIA PAIR」β版も公開
NVIDIAが、RTX Spark搭載Windows PCが10月に発売されることを改めてアピールした。そのメリットを生かすための取り組みも順次進めていくという。RTX Spark搭載「Surface Laptop Ultra」がお披露目か Microsoftが10月7日にイベント開催
Microsoftが10月7日(現地時間)にサンフランシスコで開催する、WindowsとSurfaceに関する発表イベントの見どころを解説する。NVIDIA「RTX Spark」から「トークン経済圏」まで 次世代AI PCとAIファクトリーの行方を探る【動画対談】
台湾の台北市で開催されたPCおよびAI関連の見本市「COMPUTEX TAIPEI 2026」。本記事では、COMPUTEXの歩みや、今後のAI関連の動向についてダイジェストでまとめた動画をお届けする
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.