ビジネスでは必須の高品位かつ高速な印刷/コピー機能だが、SOHOではさらに省スペース性や低コストであることも求められる。それらの要件をすべて満たしつつ、ドキュメントのスキャン機能までを提供してくれる製品が、キヤノンのモノクローレーザー複合機だ。
キヤノンが放つモノクロレーザー複合機「Satera MF3220」(以下、MF3220)は、MFの文字が示す通り「Multi Function」機能を持つSOHO/ビジネス向けの製品でSatera MF3110の後継機となる。本機の希望小売価格は4万9800円だが、ストリートプライスは3万円前後と驚くべき価格を実現しており、前モデルが3万円台後半の実売価格であったことを考えると約1万円近くもコストパフォーマンスが向上している。本機の主なターゲットはSOHO/個人事業主だが、3万円までの金額なら稟議を必要としない企業も多いはずで、このような点を考慮するとSOHO/個人事業主だけでなく企業の部署単位での導入も敷居が低いだろう。
前置きはこれぐらいにして、早速、Satera MF3220の実力を見ていきたい。
本機の特徴は、コピー/印刷とも毎分20枚の出力が可能な高速エンジンを搭載する点にある。ビジネスで求められる優先順位は、何よりスピードと印字品質だ。「印字のクオリティも高く印刷速度も高速」というのが最も望まれることだが、そうなるとコストが一気に跳ね上がってしまう。コンシューマー向けであれば「速度は遅いがハイクオリティ(写真印刷など)」を取ることもあるが、ビジネスでは「必要十分なクオリティで高速出力」を優先するのが望ましい。MF3220は、まさに必要十分な出力品質でコピー/印刷速度が高速、しかも導入コストが低いというメリットを兼ね備えている。
MF3220のプリンタ部は同社おなじみの「オンデマンド定着方式」を採用する。この点だけを見ると同社の単機能プリンタLBPシリーズの一員と思えるが、印刷方式が「間接静電転写方式」でLBPの「半導体レーザー+乾式電子写真方式」とは異なっている点に注目したい。間接静電転写方式はコピー機向けの印刷方式で、Satera MF3220にはこの方式が採用されており、ハードウェア部分を見ると本機は「毎分20枚のA4モノクロコピー機にスキャナとプリンタ機能を追加した製品」と見るのが正解だろう。ビジネスにおいてコピー機能の利用頻度は印刷同様に高く、高速コピー機をベースとしたマルチファンクション化は理にかなったアプローチと言える。設置スペースが限られるSOHO環境では、1台3役の複合機が重宝するのは改めて指摘するまでもないことだ。
ちなみに、本機の印刷可能な解像度は600dpi×600dpiで、独自のスーパー・スムージング・テクノロジーによって最大1200dpi相当×600dpiの高解像度で出力できる。加えて、微粒子スーパー・ファイントナーを採用することで、文字や図表、そして写真までも普通紙に鮮明に打ち出せる。
このような製品では、得てしてカタログの印刷速度と実際の数値がかけ離れている場合がある。実際、本機の場合はどうなのかテストを行った(*1)。計測したのは「電源オンから印刷可能になるまで」、「A4/モノクロのファーストプリント」、「A4/モノクロ20部印刷(JEITA J1)」「A4/モノクロ20部コピー(JEITA J1)」「A4/モノクロ300dpiでスキャンしてPDF化(JEITA J1)」にかかる時間である。テストに使用したPC環境は下にまとめた(*2)。
結果は下の表にまとめたが、公称値通りの性能を発揮していることが分かった。しかもファーストプリントの時間は、カタログ値のファーストコピー11秒より速く約9.5秒と高速だ。またA4/20部印刷時、ファーストプリント時間は変わらないとした場合、2枚目排出からの速度は公称値通りとなる計算だ。ファーストプリント時間を計測に含めず2枚目以降では、66.5秒から9.5秒を引いた57秒で19枚を出力しているので「57÷19=3」で1枚当たり3秒となり「60÷3=20」で毎分20枚という速度(印刷/コピー)は公称値通りということになる。ストレスを感じさせない出力速度で、これなら30枚、40枚といった印刷/コピーも苦にならない。またスキャナ機能に関しても、添付ソフトを使ってPDF出力までが30秒弱と、データの電子化を行う場合にも現実的な速度であると言えるだろう。
独特のボディデザインも印象的だ。本体下部に最大250枚収納できる給紙カセットを配置し、その上に手差しトレイがあり、排紙はスキャナ部/操作パネルの下にフェイスダウンで最大60枚まで収納される。印刷可能な用紙はA4/B5/A5/レター/リーガル、封筒(洋形4号/洋形2号/ISO-C5)、郵便はがき、往復はがき(216×356ミリ〜76.2×127ミリ)までと幅広い。
トナーは感光体との一体型カートリッジで、前面のカバーを開けてそのまま挿入するだけで装着可能だ。紙詰まりした際は本体背面のカバーから用紙を簡単に除去可能と、メンテナンス性は良好だ。なお、トナーはSatera MFシリーズ共通のカートリッジU(希望小売価格9800円)で、A4用紙5%原稿使用時で約2500枚印刷でき、1枚当たりのランニングコストは約3.92円(用紙代は含まず)になる計算だ。
操作パネルは扱いやすい前面上部にある。ボタン類はコピー機能向けの部分がほとんどを占めており、「コピー」「スキャン」ボタンが独立して用意され、シンプルで迷うことなく利用できる。2ライン表示の液晶ディスプレイには標準で倍率/用紙サイズ/濃度/画質などが表示されるようになっており、必要十分な情報を確認可能だ。ちなみに、コピー時のズームは50〜200%(1%刻み)で、拡大はA5→A4/A5→B5/B5→A4、縮小はA4→B5/B5→A5/A4→A5となっている。また、2枚以上の原稿を複数部コピーする際に自動でページ順に仕分けるソート機能や、A4原稿2枚をA4用紙1枚にまとめてコピーする2 in 1コピー機能を備えるなど芸が細かい。
PCとは背面上部にあるUSB 2.0の端子で接続する。オプションで有線LANのプリントサーバ(AXIS 1650/希望小売価格1万7800円)が用意されており、ネットワーク経由でのプリントやスキャン機能を利用したい場合に別途購入するとよいだろう。
スキャナ部分は同社製スキャナでおなじみのCISセンサを採用している。CISセンサは消費電力が少なくてすむほか、ウォームアップにかかる時間が短くすむゆえにファーストコピータイムが速いというアドバンテージを持つ。また、レンズやセンサや光源を一体化した読み取りヘッドを採用することで、CCDセンサに比べて薄型・軽量化を図れるのもポイントだ。
スキャナ利用時の読み取り可能な光学解像度は600dpi×1200dpi(モノクロ:RGB各色8ビット入出力/カラー:24ビット入出力)で、ソフトウェア補間により最大9600dpi×9600dpi相当、コピー機能利用時には600dpi×600dpiの256階調固定となる。読み取り速度は600dpi時で1.5ms/Line、スキャナドライバはTWAINとWIA(Windows XPのみ)が用意されており、対応するアプリケーションからならどちらのドライバも利用できる。本機はモノクロレーザー複合機だが、言うまでもなくスキャナはカラー対応だ。
高速かつ高品位な印刷/コピー性能に目を奪われがちな本機だが、実はこのカラースキャナと付属ソフトの抜群のコンビネーションも大きな魅力となっている。次のページではその点を詳細に述べていこう。
*1テストはストップウォッチによる手動計測で、Word 2003(JEITA J1印刷)の印刷画面で「OK」をクリックした時点で計測を開始し、最後の用紙が排出された段階までを5回計り、それぞれの中間値を掲載した。ドライバの設定は標準設定とし、印刷時にはソートや拡大/縮小機能はオフにしている。コピー時は印刷したJEITA J1用いてスタートボタンを押して計測を開始、最後の用紙が排出された時点、スキャナ機能は標準ユーティリティのMF Toolboxに用意されているPDFボタンをクリックし、その後に表示される画面にあるスタートを押した時点で計測を始め、最終的にPDFが表示されるまでを計った。
*2使用したPC環境 CPU:Athlon 64 3200+(2.0GHz)/メインメモリー:512MB/HDD:Seagate Barracuda 7200.7(ST3160021A、160GB)/OS:Windows XP Professional(SP2)
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提供:キヤノンマーケティングジャパン株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年9月30日