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» 2006年10月20日 21時00分 公開

CRT高画質神話は本当か?──前編CRT vs 液晶ディスプレイ(2/2 ページ)

[林利明(リアクション),PR/ITmedia]
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「画質はCRTが有利」は技術的に本当か?

 続いて画質面について、技術的な観点からCRTと液晶ディスプレイを比較してみる。「画質」を構成する要素としては、色域、輝度とコントラスト、階調性、視野角、応答速度という5つのポイントを考える。

 重要なのは、現在ではCRT(ブラウン管)はほとんど生産されておらず、技術的な投資も行われていないことだ。一方の液晶ディスプレイは、現在でも画質面の改良が進められている。進化の止まったCRTと現在の液晶ディスプレイを比べても、なおCRTのほうが高画質と言えるのだろうか。

色域

 色域とは、CRTや液晶ディスプレイで表示できる「色の範囲」のことだ。通常は色度図で示され、sRGBやAdobe RGB、NTSCといったように、色域を定義した規格がいくつかある。高画質指向のCRTと液晶ディスプレイとの比較では、色域は同等と考えてよい。最先端の液晶ディスプレイなら、CRTよりも広い色域を達成している。

ナナオの古いCRT「FlexScan T566」と、現行の液晶ディスプレイ「FlexScan S2410W」、およびAdobeRGB対応の「ColorEdge CG221」で色域を実測したグラフ。中央が白色点、右のプロットが「R」、上が「G」、下が「B」だ。これを見ると、FlexScan T566とFlexScan S2410Wでは、色域の差はほとんどない。ColorEdge CG221は、現在の液晶ディスプレイでは最高峰の色域を誇り、特に「G」(緑)方向の色域が大幅に広いことが分かる

輝度とコントラスト

 輝度とコントラストは液晶ディスプレイが有利だ。スペック上の数字だけを見ても、液晶ディスプレイの輝度は数百cd/m2、CRTは高輝度でもせいぜい200cd/m2程度である。

 一方コントラストについては、液晶ディスプレイはだいたい500:1以上である。CRTは原理上コントラストは無限大であるが、実環境のように外光が入るような場所(オフィスや書斎など)では画面が白っぽく浮きやすく、デバイスとしての特性上、高いコントラスト比を出すことが難しい。

 ただし暗室で使う場合は、CRTのほうが適切に調整できる。CRTは黒レベルをほぼ「0」(真っ黒)にできるが、液晶ディスプレイは不可能だ。液晶ディスプレイの原理上、バックライトの光が画面の表面に漏れるからである。

階調性

 階調性はRGBのガンマカーブで示され、RGB各色が256段階(0〜255)の階調を持っている。RGB各色の256階調がきちんと識別され、RGB各色を重ねたガンマカーブが1本の曲線としてぴったりそろっているのが理想だ。RGBのガンマカーブが乱れたり、曲線がガタついていたりすると、色相の転びや階調ロスとなって現れる。

 「CRTが高画質」と言われる理由は、ガンマカーブの特性によるところが大きい。デバイスの特性上、CRTは滑らかなガンマカーブを出しやすいのだ。

 ただし、CRTとPC(ビデオカードの出力)はアナログ接続なので、RGBの256階調を厳密には識別していない(できない)。データ上は存在しない階調があり、ガンマカーブ自体はガタついている。つまり、トーンジャンプ(階調ロス)を発生していることになる。それでもCRTの画面で階調性が滑らかに見えるのは、アナログ接続であるからだ。画面上で色差の輪郭がボケ気味になるため、人間の目には滑らかな階調として映るのである。

 階調性を256段階のデジタルデータとして見た場合、デジタル接続(DVI-D)の液晶ディスプレイがもっとも正確だ。アナログ接続のCRTと違って、ビデオカードの画質(出力信号の品質)の影響を受けにくいのもメリットである。

 例えばCRT全盛の時代は「Matroxのビデオカードは高画質」などと言われたものだが、DVI-D接続した液晶ディスプレイの画質は、ビデオカード側の出力信号には基本的に影響を受けない。10ビット/14ビットのガンマ補正を搭載する液晶ディスプレイなら、CRTとほぼ遜色のない滑らかなガンマカーブが描け、RGB各色の256階調をデータとしてしっかり識別できる(画面上で再現できるかどうかは、液晶ディスプレイの品質に左右される)。

 ちなみに、液晶ディスプレイをアナログ接続で使っても、CRTのような見た目の滑らかさは得られない。入力されたアナログ信号は、液晶ディスプレイの内部でデジタル変換されるため、階調ロスが逆に目立ってしまう。

 まとめると、アナログ的な柔らかさや滑らかさならCRTが優れるが、階調データの正確性ではデジタル接続の液晶ディスプレイに軍配が上がる。極論を言えば好みの問題になるかもしれない。

視野角による色変化の大きさ

 CRTは視野角が大きくなっても、見た目の発色はほとんど変化しない。液晶ディスプレイでは視野角による色変化が発生するが、IPS系方式の液晶ディスプレイならば、CRTとほぼ同等の視野角特性がある。また、画面と正対する個人使用では、VA系方式の液晶ディスプレイでも、視野角による色変化はそれほど気にならない。液晶ディスプレイの方式については、ITmedia流液晶ディスプレイ講座:第4回「TN? VA? IPS? ──液晶パネル駆動方式の仕組みと特徴を知ろう」も参照していただきたい。

応答速度

 応答速度はCRTが完全に上回る。最速クラスの液晶ディスプレイでも応答速度は2msくらいだが、一般的にCRTは1ms以下だ。詳細は省くが、画素発光の仕組み(CRTはインパルス型、液晶ディスプレイはホールド型)も大きく影響するため、モーション系のスムーズな表示にはCRTが有利だ。

発色特性ではCRTよりも液晶ディスプレイが高画質

 階調性のところでも述べたが、CRTの発色がきれいに見えるのは、アナログ表示ゆえに階調がほどよくボケているからだと言える。また、CRTを支持する多くのユーザーは、家庭のテレビを含めて、液晶デバイスに接している時間よりも、ブラウン管を見てきた時間のほうがはるかに長いはずだ。CRTが高画質だと感じる背景には、液晶ディスプレイの表示に対して、目と脳が慣れきっていないという一面も考えられる。

 視野角と応答速度に限定すれば、「液晶ディスプレイよりCRTが高画質」という見方は正しい。しかし、色域と階調性による発色特性では、CRTよりも液晶ディスプレイのほうが高画質だ。新品のCRTでもそうなのだから、何年も使い続けて劣化したCRTと新品の液晶ディスプレイを比較すれば、後者のほうが圧倒的に有利である。「色」を重視する用途においては、古くなったCRTを使い続けるよりも、新品の高画質な液晶ディスプレイに買い替えたほうが快適な環境が得られるだろう。

 機会があれば、CRTと液晶ディスプレイを並べて見比べられるグラフィック系の展示会などに足を運んで、両者の発色を比較してみてほしい。


 後編では、CRTと液晶ディスプレイの実機による画質比較を中心に、CRTから液晶ディスプレイに買い替えるメリットをまとめる。

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提供:株式会社 ナナオ
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年3月31日