CRT高画質神話は本当か?──後編CRT vs 液晶ディスプレイ(2/2 ページ)

» 2006年11月06日 09時30分 公開
[林利明(リアクション),PR/ITmedia]
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階調性

 階調性も、液晶ディスプレイよりCRTが優れるという認識が根強い要素だ。だが、前編でも述べたように、データ的には、10ビットや14ビットの内部ガンマ補正を備えた液晶ディスプレイをデジタル接続(DVI-D)した場合が、もっとも正確である。CRTとPC(ビデオカード)はアナログ接続であるがゆえに、階調の境界がほどよくぼけて、人間の目には連続的で滑らかな階調に映るのだ。

 CRTでもトーンジャンプ(階調ロス)は発生しており、トーンジャンプの程度も上記のような比較的高性能な液晶ディスプレイより大きい。もちろん、色域と同じように、CRTと液晶ディスプレイの性能や劣化具合、設定によってある程度の差は生じる。

ガンマカーブの比較グラフ T566とS2410Wのガンマカーブ比較。基準となる「γ2.2」は、Windows環境の標準だ。実測値では、0〜128階調(シャドウから中間調)あたりでは、T566の方がγ2.2に近い。128〜255階調(中間調〜ハイライト)だと、S2410Wがγ2.2に近くなる。このグラフでは分かりにくいのだが、1階調単位で細かく見ていくと、S2410Wの方がきれいなガンマカーブを描く。実際、T566とS2410のガンマカーブグラフは、PC用ディスプレイの中でもトップレベルの精度だ。特にT566に関しては、発売時期や使用時間を考えると驚異的ともいえる。

視野角と応答速度

 これは完全に68Tの勝ち。あえて実際の画像で示すまでもないだろう。とはいえ、S2410Wでも、画面と正対してグラフィック作業やレタッチ作業をしたり、少し離れた位置から映像を鑑賞するぶんには、視野角も応答速度も気にならない。CRTとの違いを感じるのは、やはりアクション系やシューティング系のゲームをプレイするときだろう。

画質以外を比較してみる

 画質以外のさまざまな要素では、液晶ディスプレイが優れる部分が多い。分かりやすいのは設置スペースと消費電力だ。

 設置スペースは写真で示したが、特に奥行きがまったく違う。20インチ以上でワイドタイプの液晶ディスプレイだと、画面の面積はCRTより大きくなる場合が多いが、奥行きはCRTよりはるかに短い。

68TとS2410Wの設置スペースの比較。68Tのサイズは幅490×高さ486×奥行き520ミリ、S2410Wは幅566×高さ358.7〜480×奥行き230ミリ(スタンド含む)で、設置面積では約2倍の差がある。また重量も、68Tは35.5キロもあるのに対し、S2410Wは10.2キロ(スタンド含む)と3分の1以下だ

 消費電力についても、液晶ディスプレイはCRTの約半分から数分の1であるケースがほとんどだ。家庭で1日当たり数時間の使用なら、電気代の差も微々たるものだが、オフィスでまとまった台数を導入する場合は、電気代に大きな差が生じる。

 発熱量の差も見逃せない要素だ。液晶ディスプレイに比べると、CRTの発熱はかなり大きい。CRTを大量導入しているオフィスでは、真夏の冷房コストがかさむだけでなく、真冬でも冷房をかけているところがあるくらいだ。

 また、画質とも関連するのだが、ハード的な構造上、液晶ディスプレイには画面のちらつきがない。CRTは画面の横方向の走査線を1本ずつ常に高速描画し続けているため、その速度(リフレッシュレート)が遅いと画面のちらつきとして感じられる。言うまでもなく、液晶ディスプレイの方が長時間の作業でも目が疲れにくい。目の負担は、先述したフォーカス精度も大きく影響し、こちらも液晶ディスプレイが優れる。

 もう1つ、CRTでは磁気による画質への影響も無視できない。CRTは電子ビームで画面を描画するので、周辺の磁気によって多少なりとも電子ビームの軌跡が曲がり、画質が劣化する。極端な例を挙げると、線路の近くにCRTを設置すると、電車が通るたびに画面が大きく歪んだりして、実用にならないのだ。これは経験したことのある人も多いのではないだろうか。

 また、前編で紹介したナナオ カスタマーリレーション推進部 商品技術課 課長の森脇浩史氏によると、スピーカーなどが発生する磁気も、CRTの画質に影響を与えるとのことだ。現代のライフスタイルでは、こうした磁気の発生源は部屋中にごろごろしているだろう。一方、液晶ディスプレイの画質は磁気に影響されず、どこに設置しても実力通りの画質が得られる。

CRTを使い続けるべきか? 液晶ディスプレイに買い替えるべきか?

 結論から言うと、特定ジャンルのゲーム用途やヘビーなゲームユーザー、モーショングラフィック系の作業を行うユーザーは、手持ちのCRTを大切に使い続けてほしい。こうした用途には応答速度が大切なので、高速応答と言われる液晶ディスプレイや、オーバードライブ搭載の液晶ディスプレイでも、CRTの応答速度には及ばない。

 それ以外の用途では、液晶ディスプレイに買い替えた方が快適になるだろう。画質的にも(視野角と応答速度を除いた発色性能)、古くなったCRTより最新の液晶ディスプレイの方が高画質であることが分かったと思う。にわかには信じられないかもしれないが、これはデータが証明している。CRTに分があるとすれば、アナログ的な柔らかさが感覚的に心地良いということだろう(この点には筆者も大いに同意する)。

 ただし、色の正確性や再現性を重視する場合、古いCRTを使い続けるのはマイナスだ。繰り返しになるが、10ビットや14ビットの内部ガンマ補正を備えた液晶ディスプレイならば、表示可能な色域はCRTとほとんど同じか広いくらいで、PC(ビデオカード)とデジタル接続することで、階調性の「正確さ」もCRTを上回る。さらに、WSXGA+(1680×1050ドット)やWUXGA(1920×1200ドット)といったワイドタイプの液晶ディスプレイを選べば、作業領域やコンテンツの視聴領域も大きく広がって、一挙両得だ。

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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年3月31日