第4.5世代の映像プロセッサ(開発コード名:G4plus)は2005年に開発。ナナオが得意とするカラーマネジメント機能をさらに強化しつつ、高解像度に対応させたものだ。旧世代の機能を踏襲したうえで、14ビット内部演算、12ビットLUTといった機能を追加したほか、1つの映像プロセッサでWUXGA(1920×1200ドット)、2つの映像プロセッサでQSXGA(2560×2048ドット)という高解像度をサポートした。この映像プロセッサは「FlexScan L997」や「FlexScan L887」、そしてカラーマネジメント対応モデルの「ColorEdge CG220」といった高性能機種に搭載されている。
そして現行の製品では、この第4.5世代を画像制御のメインICとして搭載し、その機能を用途別に拡張するコンパニオンICという形で第5世代の映像プロセッサが実装されている。第5世代の映像プロセッサは、動画の画質を向上させる「R系」(開発コード名:R-1/R-1mini/R-2)と静止画の画質を向上させる「CC系」(開発コード名:CC-1/CC-2/CC-3)に分かれており、前者はバックライト制御によるコントラスト拡張、動画表示時の自然な輪郭補正、オーバードライブ補正を、後者は画面全体の輝度と色を均一化させるデジタルユニフォミティ、16ビット演算の12ビットLUTによるカラーマネジメント、といった機能を追加した。
R系のICは、液晶TVの「FORIS.TV SC26XD1」、AV入力対応モデルの「FlexScan HD2451W」や「FlexScan HD2441W」などに、CC系のICはカラーマネジメント対応モデルの「ColorEdge CG241W」や「ColorEdge CG221」に使用されている。
なお、第5世代映像プロセッサのコンパニオンICは、製品の世代によってはFPGAのICを追加することで実装されているが、これは製品リリースのタイミングを早くするなどの理由によるものだ。今後は映像プロセッサの中に組み込まれていく計画となっている。また、現在は用途別に必要な機能だけを追加する形だが、将来的には1つですべての機能を実現できる映像プロセッサの開発も視野に入れているという。究極の機能統合型映像プロセッサが登場するにはまだまだ時間がかかりそうだが、ナナオは着実にそのための布石を打っているのだ。
最後に実際の液晶ディスプレイに映像プロセッサがどのように実装されているのかを簡単に紹介したい。映像プロセッサは液晶ディスプレイのメイン基板に実装されている。メイン基板は、バックライトを含む液晶パネル部の背面に配置されており、DVIからの入力信号はDVIのレシーバーへ、アナログRGBからの入力信号はデジタル信号へ変換するADCに入り、デジタル化された映像信号を映像プロセッサに送って一括処理した後で、液晶パネルに出力する。
上の基本構造図で示した通り、画像制御ICとなる映像プロセッサがほとんど液晶ディスプレイ内部の処理を一手に引き受ける仕組みだ。このことからも、液晶ディスプレイの性能向上において映像プロセッサが果たす役割の大きさが分かるだろう。
今回はナナオが独自開発を進めている映像プロセッサの歴史とその内容について紹介した。前述の通り、汎用の画像制御ICが普及する前から独自映像プロセッサを作り続けているナナオだが、昨今では汎用ICの性能も向上しており、必ずしも独自映像プロセッサでなければ実現できないという機能は減りつつあるのも事実だ。とはいえ、将来的な機能の統合化まで視野に入れ、独自映像プロセッサのロードマップを描いているナナオは、特にハイパフォーマンス液晶ディスプレイの分野で今後も優位に立つことが予想される。
もう1つ、画像制御ICに同じ機能を搭載する場合でも、チューニングが違えば表示される結果が違ってくるということも重要なポイントだ。ひとくちにデジタルユニフォミティやオーバードライブと言っても、コントロールの仕方が違えば、当然ながら性能も変わってくる。その点、ナナオは高画質化技術のチューニングにも抜かりがない。後編となるナナオイズム第4回では、映像プロセッサ開発担当者のインタビューや業務用測定器の検証データなども交えて、EIZOクオリティを現実化する差異化技術の実体に迫りたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:株式会社ナナオ
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2008年3月31日