液晶ディスプレイ講座IIの第4回では、最大表示色とルックアップテーブル(LUT)がもたらす階調特性について取り上げる。これらは一般ユーザーが製品選びでチェックするポイントから一歩踏み込んだ要素になるが、色再現性に大きく影響するため、特にフォトレタッチやデザインなどの用途で「色」にこだわって液晶ディスプレイを選ぶ場合は、ぜひ知っておきたい。
液晶ディスプレイのカタログには、たいてい「最大表示色」の数が記されているが、この数値を気にする人はそれほど多くないだろう。昨今はほとんどの製品が1600万色を超える膨大な色を表現でき、色数の少なさが不満になることはまずないからだ。しかし、この最大表示色には思わぬ落とし穴がある。
現在販売されているPC向け液晶ディスプレイは、PCから入力されるRGB各色8ビット(=合計24ビット)の発色数、つまりは「フルカラー」の映像信号を画面上できちんと描き分けることが求められる。RGB各色8ビットの発色数とは約1677万色を意味する。その計算式は以下の通りだ。
・8ビット(2の8乗)=256階調(色)
・256階調(R)×256階調(G)×256階調(B)=1677万7216色
・1677万7216色≒約1677万色
ここで覚えておきたいのは2点だ。1点は「現在主流の液晶ディスプレイのすべてが約1677万色フルカラーを実現しているわけではないこと」、もう1点は「約1677万色フルカラーを実現する手法にも違いがあること」だ。現在、単体で販売されている液晶ディスプレイの最大表示色と発色の手法には、主に3つのタイプがある。
液晶ディスプレイにおける最大表示色と発色の手法 | |||||
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最大表示色 | 液晶パネルの仕様 | 階調表現力 | 一般的なコスト | ||
1 | 約1677万色 | 8ビット駆動 | ◎ | 高 | |
2 | 約1677万色 | 6ビット駆動+FRC | ○ | 中 | |
3 | 約1619万色/約1620万色 | 6ビット駆動+FRC | △ | 低 | |
本当の意味でのフルカラーを実現している液晶ディスプレイは、RGB各色8ビットの発色を8ビット駆動の液晶パネルによって再現する、表の「1」に当たる製品だ。これに対し、表の「2」や「3」は、いわゆる「疑似フルカラー」と呼ばれており、一般に製造コストを低く抑えられる半面、8ビット駆動の液晶パネルと比べて原理的に階調表現力で劣る。
スペック表記においては、表「3」の約1619万色/約1620万色は数字が異なるので判別しやすいが、表「1」と「2」はどちらも約1677万色なのでカタログから見分けるのが難しい場合もある。ただし、8ビット駆動の液晶パネルはそれが画質における優位点となるため、グラフィックス用途などにおいては注意して選択したい(RGB各色8ビットの合計で24ビットと表現される場合もある)。
余談だが、液晶テレビや業務用の液晶ディスプレイには、RGB各色を10ビット駆動で表現する液晶パネルを採用した製品もある。理論上では、実に「10億7374万1824色(約10億7300万色)」という発色性能を持つが、10ビットの発色を扱えるグラフィックスアクセラレータやソフトウェアも必要になるため、PC業界ではまだまだ一般的ではない。
ここで、FRCについて簡単に解説しておこう。FRC(Frame Rate Control)とは、画面のフレーム書き換え/フレームレート、および人間の目の残像効果を利用して、見かけ上の発色数を増やす仕組みだ。例えば「白」と「赤」を交互に高速表示すると、人間の目には「ピンク」に見える。これと同じ理屈だ。
「6ビット駆動+FRC」の液晶パネルの場合、液晶パネル本来の発色数は「6ビット(2の6乗=64)の3乗(RGB各色)=26万2144色」しかない。FRCはRGB各色に対して機能し、液晶パネル本来の1色と1色の表示間隔を変化させることで、その1色と1色の間に「3色」の疑似色を生み出す(4ビット駆動のFRC)。これにより、RGB各色で「(6ビット−1)×3=189色」の疑似色が追加される。計算すると「(6ビット+189=253)の3乗(RGB各色)=1619万4277色」(≒約1619万色/約1620万色)となるわけだ。
さらに昨今では、FRCを発展させた技術を搭載した製品が増えている。従来のFRCを超える多ビットの駆動により、多階調の疑似色を生み出し、その中から「液晶ディスプレイのフルカラー」である8ビット(256階調)ぶんの階調を取り出し、約1677万色を実現するという。
ところで、8ビット駆動と6ビット駆動+FRCの画質差だが、実際はパネル以外の要素(画像制御ICの質など)が画質に与える影響も大きいため、製品を見比べても違いが分かりにくい場合がある。照明を落とすなど環境光の影響を極力減らし、シャドウからハイライトまでリニアに変化するグラデーションパターンなどを表示すると、比較的違いが見えやすいだろう。この表示傾向は、静止画、動画、ゲームなどを問わない。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2009年3月31日