そもそも三菱電機といえば、かつてブラウン管時代はアパーチャグリル方式を採用するユニークなダイアモンドトロン管を用いた高品位ディスプレイで知られ、その後、液晶パネルの時代になってもグラフィックス用の高品位ディスプレイで定評を得てきた実績がある。
加えて薄型テレビの開発、ディスプレイ・テレビ向け映像信号処理LSIの設計など、多くのカテゴリーに分散する要素技術も持つ。そのうえでPCディスプレイと映像用モニターの両方で蓄積してきたノウハウも備わっている。
こうした総合力こそがVISEOやDiamondcrysta WIDEなどに通じる、ユニバーサルな用途で使える液晶ディスプレイを生み出す背景になっている。RDT231WMでは、6つの技術を凝縮したギガ・クリアエンジンによる画作りに、三菱電機のこれまでの蓄積が最も生かされているという。
筆者自身、自宅でRDT231WMを試してみたが、特に平均輝度の明るい映像、すなわちスタジオ撮りのテレビ番組やアニメ、明るめのドラマなどでは、とても有効に局所コントラスト補正やダイナミックコントラスト補正が効き、ネイティブで1000:1(CRO動作時で5000:1)というコントラスト比の中にメリハリのある映像を描き出した。
これがYouTubeの映像になると、少ない情報量を重箱の隅からつまみ出すように、見えづらい細かなディテールを浮かび上がらせる。元映像のノイズが極端に多い場合は、ノイズも同時に強調する傾向はあるが、効果とデメリットを比較すれば、効果のほうがはるかに大きい。MPEG特有のブロックゆがみやモスキートノイズを緩和するノイズフィルタを有効に働かせたうえで、超解像処理をかけているためだろう。
一方、Blu-ray DiscやDVDの市販タイトルなど、最初から丁寧に調整が施された映像の場合は、それらの補正をオフにしたほうが自然で安定した挙動の映像を楽しめることが多い。補正をオフにし、色温度の設定で6500Kを選んでHDMIに接続したBlu-ray DiscプレーヤーからDVD「オペラ座の怪人」、Blu-ray Disc「マンマ・ミーア!」(いずれも海外版)を再生したところ、若干の黒浮きはあるものの丁寧に階調を描き分けた。黒浮きが気になる映像の場合は、ダイナミックコントラスト補正を有効にすれば、バックライト輝度の動きは感じられるが、黒浮き感は大幅に緩和される。
総じていえば、市販の映画ソフトの鑑賞にも耐えうる素性のよさを備えつつ、ネット動画を中心にした品位のやや低い動画に対して、可能な限りきれいに見せる味付けを行っているようだ。
「PCディスプレイで静止画だけでなく動画も楽しみたいユーザーが、どのような画質を求めているかを考えて、画質のチューニングを行っています。自動補正の動き幅は、一般的なテレビよりも大きく設定していますが、これも質の低い映像でもきちんと効果が実感できるよう設定値を追い込んだからです」(白崎氏)
もちろん、これはデフォルト設定の話であり、前述したように市販ソフトを見る際に適した設定に変更することも可能だ。エントリークラスのPCディスプレイには、そうした画質調整の余地がまったくないものもあるが、RDT231WMは上位機種とも共通する画質調整項目と調整幅を持っているので、使い慣れるほどに自分好みのディスプレイへと追い込むことができる。
しかも、動画と静止画では、異なるプリセットのセッティングが行われており、ボタンひとつで動画と静止画の画質モード(DV MODE)を切り替えることが可能だ。動画視聴時には動画に適した、PC利用時はPCに適した設定を簡単にスイッチしながら利用できる。
さまざまな映像を1台で表示できるように、映像入力端子にも工夫が見られる。PC向けにはHDCP対応DVI-DとD-Subの2系統、AV機器/ハイビジョン対応ゲーム機向けにはHDMIも2系統を用意。HDMIはPC入力も行えるほか、D-SubはD端子やコンポーネントビデオの信号にも対応し、別途市販の変換ケーブルなどを経由してD1〜D5のAV機器信号タイミングを入力できる(480iは機器設定・確認用の簡易表示のみに対応)。
「2つのHDMIを含む4系統の映像入力を備えているだけでなく、HDMIへのPC入力や、変換ケーブルを使ったD-SubへのD5入力もサポートしています。同じ端子でも、さまざまな環境での機器接続に対応できるのが大きな特徴です」(山内氏)
初代VISEOが初めて登場したころとは異なり、PCディスプレイと映像用モニターの機能を両方備える製品はライバル製品を含め多くなってきている。HDMIやコンポーネント映像の入力が可能といわれても、珍しいとは思わない読者もいるかもしれない。
しかし、端子を備えることと、実際に動画を見るための機能とチューニングが行われていることは意味が大きく異なる。単に端子を付けるだけなら、技術的に難しいことは何もない。重要なことは、本当に両方の用途で使い物になるかどうかだろう。
静止画を落ち着いた風合いで見せるPCディスプレイと、動画をキレよく鮮やかに見せる映像用モニターに求められる画質は同じではないからだ。それぞれに異なるノウハウを持ち、それを低価格帯の製品にも投入したRDT231WMは、PCディスプレイで動画を楽しんでいるユーザーにとって注目の製品だ。
しかも最新の薄型テレビでも導入例が少ない超解像技術を、3万円台の製品に投入したのだから、この製品に対する力の入れようは相当なものだ。その実力は、幅広い分野の技術と製品を持つ三菱電機ならではの総合力を示している。
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提供:三菱電機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2009年7月14日