液晶ディスプレイで黒つぶれや白飛びが目立ったり、Macで作成した画像をWindowsで見ると暗く表示されるといったトラブルは、「ガンマ」に原因がある場合が多い。今回は液晶ディスプレイの表示に大きな影響を与えるガンマについて解説する。ガンマの知識はカラーマネジメントや製品選びで役立つため、特に画質を重視するユーザーはぜひチェックしてほしい。
ガンマとは、そもそもギリシア語アルファベット第3字のことで、大文字が「Γ」、小文字が「γ」と表記される。γ線やγ星、γGTPなど、普段の生活で見かけることも少なくないガンマだが、コンピュータの画像処理においては「中間調(グレー)の明るさ」を示す用語として使われるのが一般的だ。
もう少し詳しく説明しよう。PC環境で「色」を扱うハードウェアには、ディスプレイ、プリンタ、スキャナなどがある。これらの機器をPCとつないで利用する際には、それぞれに色情報の「入力」と「出力」が発生するが、各機器には固有の発色特性(いわば、クセ)があり、入力された色情報をそのまま素直に出力できない。この入出力における発色特性のことを「ガンマ特性」という。
PCディスプレイに表示される色のデータは、光の3原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)の組み合わせで成り立っており、RGBそれぞれが8ビット(2の8乗=256階調)の情報を持つ。256階調の3乗(Rの256階調×Gの256階調×Bの256階調)が約1677万色となり、これを一般的に「フルカラー」と呼んでいるわけだ。
一部にRGB各色10ビット(2の10乗=1024階調)、つまり1024階調の3乗(約10億6433万色)の発色に対応したディスプレイも存在するが、OSやアプリケーション側のサポートが進んでおらず、現状ではRGB各色8ビットの約1677万色表示がPCディスプレイにおけるスタンダードな色環境となっている。
PCとディスプレイで色をやり取りする場合は、PCからディスプレイに入力したRGB各色8ビットの色情報を正確に出力できる関係、つまり「入力:出力」=「1:1」の関係が理想だ。しかし前述の通り、PCとディスプレイではガンマ特性が違うため、色情報の伝達は「入力:出力」=「1:1」の関係にはならない。
ではどのようになるかというと、各ハードウェアのガンマ特性を数値化した「ガンマ値(γ)」を当てはめた関係になる。色情報の入力を「x」、出力を「y」とすると、ガンマ値を適用した関係は「y=x^γ」という式で表される。
通常、ディスプレイのガンマ特性は中間調が暗くなる傾向にある。そこで、あらかじめ中間調を明るくしたデータ信号を入力し、「入力:出力」のバランスを「1:1」に近づけることで、色情報を正確にやり取りできるように工夫している。このように機器側のガンマ特性に合わせて、色情報を調整して帳尻を合わせる仕組みを「ガンマ補正」と呼ぶ。
PCのOSがWindowsの場合は、ガンマ値が「2.2」のディスプレイを使うと、理想に近い色を再現できることが多い。Windowsはガンマ値「2.2」のディスプレイを使うことを想定しているからだ。このことから、Windows標準のガンマ値は「2.2」といわれており、大半の液晶ディスプレイはガンマ値「2.2」に合わせて設計されている。
一方のMac OSでは、標準的なディスプレイのガンマ値を「1.8」に設定している。考え方はWindowsの場合と同じで、ガンマ値「1.8」に設定されたディスプレイを接続して表示すると、理想に近い色再現が得られるというわけだ。
WindowsとMac OSでは標準のガンマ値が異なるため、Windows環境で作成・調整した画像をMac OS環境で見ると明るくなったり、Mac OS環境で作成・調整した画像をWindows環境で見ると暗くなったりという現象が発生する。同じ画像でもガンマ値「1.8」では中間調が明るくなり、ガンマ値「2.2」では中間調が暗くなるからだ。
Windows環境とMac OS環境の発色を合わせるには、両OSでガンマ値を統一すればよい。ただし、Mac OSではガンマ値を簡単に変更できるが、Windowsにはそのような機能が標準で用意されていない。Windows上ではグラフィックスカードのドライバで色調整したり、別途色調整のソフトウェアを使うことになるので、意外に面倒な作業がともなう場合がある。Windows環境で使用しているディスプレイに「ガンマ値」を調整する機能があれば、そちらを使うほうが簡単かつ正確な結果が得られるだろう。
表示する画像がガンマ値「1.8」のMac OS環境で作られたと分かっている場合や、Macユーザーから受け取った画像が不自然に暗く表示されるならば、ディスプレイのガンマ設定を「1.8」に変更すると、制作者の意図通りの発色で画像を表示できるはずだ。
余談だが、WindowsとMac OSの標準ガンマ値が違うのは、両OSの設計思想や歴史が関係している。Windowsではテレビに合わせてガンマ値「2.2」、Mac OSは業務印刷のプリンタに合わせてガンマ値「1.8」を採用した。特に、業務印刷やDTPの分野では古くからMac OSが使われており、現在でもガンマ値「1.8」が基本となっている。一方で、インターネット・デジタルコンテンツ全般で標準的なsRGBや、広色域の印刷業務で普及が進んでいるAdobe RGBといったカラースペースでは、ガンマ値「2.2」が標準だ。
2009年9月にアップルがリリースする予定の最新OS「Mac OS X 10.6 Snow Leopard」では、sRGBやAdobe RGBの普及などを考慮し、デフォルトのガンマ値が「1.8」から「2.2」に変更される予定だ。したがって、今後はMacでもガンマ値「2.2」が主流になっていくと予想される。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2009年9月30日