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» 2010年05月31日 10時00分 公開

簡単に試せるテスト動画付き:応答速度の数字はホンモノか!?――液晶ディスプレイの動画性能をチェックしよう (2/4)

[PR/ITmedia]
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応答速度の重要性を理解する

 動画の表示品質に影響する液晶ディスプレイのスペックでは、「応答速度」が最も分かりやすい指標として知られている。応答速度とは、画面上の1画素(ドット)が、ある色から異なる色に変化するまでの時間を指す。厳密にいえば、「速度」とは「キロメートル/時間」のような単位で表すが、液晶ディスプレイの応答速度は「ms」(ミリセカンド=ミリ秒)で示す。

 液晶ディスプレイにおける応答速度は、2つの値が併記されることが多い。1つは黒→白→黒(液晶の立ち上がり時間+立ち下がり時間)の応答速度で、1画素が黒から白に切り替わる時間と、白から黒に切り替わる時間の合計タイムだ。2010年5月現在、最速クラスの液晶ディスプレイは1msや2msという高速な応答速度を実現している。

 もう1つは中間階調の応答速度で、1画素がグレーからグレー(ある階調のグレーから異なる階調のグレー)に切り替わるまでのタイムだ。液晶ディスプレイのグレー階調数は「256階調」だが、いくつかの階調をピックアップして応答速度を計測し、その平均値を中間階調の応答速度としていることが多い。中間階調の応答速度が速い製品では2〜5ms前後をうたっており、スペックシートでは「グレー to グレー」や「G to G」とも表記される。動画の表示色は中間階調の色が圧倒的に多いため(黒白間を行き来するようなシーンは少ない)、中間階調の応答速度が動画の画質では重要だ。

 単純に数字だけで考えれば、応答速度が高速な液晶ディスプレイのほうが、動画の表示品質は高いことになる。画面の発色がすばやく切り替わるため、動きの速い映像がくっきりシャープに表示されるわけだ。応答速度が遅いと、発色の切り替えが遅いことが原因となり、表示がぼんやりしたり(動画ブレ)、画面内を動く物体の輪郭に残像が発生したりすることがある。

応答速度が速いディスプレイのイメージ(写真=左)。応答速度が遅いディスプレイのイメージ(写真=右)

 また、液晶ディスプレイが採用する液晶パネルの駆動方式による、応答速度の傾向も覚えておこう。一般的に、TN系とVA系の液晶パネル(特にTN系)は、黒→白→黒の応答速度を高速化しやすい半面、中間階調の応答速度は遅くなりやすい。IPS系の液晶パネルは、階調全域で応答速度を高速化しにくいものの、ほかの方式より中間階調での速度低下が少なく、表示内容が安定していると評価する向きもある。

応答速度を高速化する技術&動画ブレを低減する技術

 昨今の液晶ディスプレイは、応答速度の改善をはじめ、動画ブレを低減するための技術を搭載した製品が増えている。ここでは代表的な技術として、オーバードライブ回路、黒挿入、倍速駆動を紹介しよう。

 オーバードライブ回路は、主に中間階調の応答速度を高速化する。簡単にいうと、画面上の色が変わるときに、液晶素子に通常より高い電圧をかけることで、液晶素子の動き(発色の切り替わり)を速くする仕組みだ。オーバードライブ回路によって、液晶パネルの駆動方式(TN系/VA系/IPS系)を問わず、中間階調の応答速度を白黒間に近づけることができる。

階調変化時の応答速度をオーバードライブ回路の有無で比較したグラフ(0が黒、255が白)。オーバードライブ回路なしでは中間階調の応答速度が遅く、階調によるばらつきが大きい(写真=左)。オーバードライブ回路ありでは、階調全域において応答速度が均一化されている(写真=右)

 ただし、オーバードライブ回路には仕組み上の弱点もあり、見た目では輪郭の偽色(本来の映像ソースにはない色)となって現れる場合が多い。液晶素子に過電圧をかけるため、目標とする階調を飛び越してしまうことがあるのだ。例えば、グレー階調「50」から「100」に変化するとき、瞬間的に「100」を越える階調が画面に表示されてしまう。これをオーバーシュート/アンダーシュートという。

 オーバードライブ回路を強くすれば応答速度も高速になるが、強度を上げすぎるとオーバーシュート/アンダーシュートが目立ってしまう。この辺りのさじ加減が、オーバードライブ回路をチューニングするメーカーの腕の見せどころだ。

右から左にスクロールする四角形を撮影した画像。左がオーバードライブが正しく効いた例、右がオーバーシュートが発生してしまった例だ。右ではオーバードライブが強く効いているため、ブレは少ないものの、四角形のエッジに偽色が発生している

 黒挿入は、動画ブレや残像感を低減する技術だ。液晶ディスプレイのリフレッシュレートは基本的に60Hzなので(例外もある)、フレームレートは60fpsとなる。つまり60分の1秒ごとに画面(フレーム)が切り替わっているわけだが、描画するフレームとフレームの間に真っ黒な画面を挿入表示することで、見た目の動画ブレや残像感が減るのだ。家電の液晶テレビでも多く採用されていた技術で、効果も高い。

 デメリットとしては、輝度の低下や画面のちらつきが挙げられる。黒画面の挿入頻度を高くすれば、動画ブレ/残像感の低減効果も高くなるが、画面上が「真っ黒」な時間が増えるため、見た目の輝度が下がってしまう。また、本来のフレームと黒画面が頻繁に切り替わることで、画面がちらついて見えやすい。そこで、液晶パネルのリフレッシュレートを120Hzに倍増してから増やしたぶんに黒画面を挿入することで、輝度低下やちらつきを抑える製品も存在する。

黒挿入のイメージ図。フレームごとに黒画面(もしくは画面の一部に黒い領域)を挿入することで、目に画面の切り替えを認識させ、キレのいい動画を再現する

 最後に倍速駆動だが、液晶パネルのリフレッシュレートを120Hz(あるいはそれ以上)に増やし、動画の1フレームと1フレームの間をつなぐ中間フレームを生成することで映像を補間する技術だ。一般的な60Hz駆動に比べて、1フレームの描画速度が倍になり(120fps)、各フレームのつなぎが滑らかになるため、動画ブレや残像感が大きく低減される。

 中間フレームの生成精度が低いと画質に悪影響を与えるほか、中間フレームの生成に処理性能が必要なため、映像入力から出力までの時間が遅れやすいといったデメリットもある。とはいえ、動画ブレ対策に非常に有効な技術なので、液晶テレビでは採用例がかなり増えており、今後はPC用の液晶ディスプレイへの普及も予想される。

3製品で動画ブレをチェックする

 応答速度と動画ブレ低減技術について説明したところで、改めて冒頭で紹介したサンプル動画を使って、実際の液晶ディスプレイを細かくチェックしていこう。

 ここで試用する液晶ディスプレイは、EIZOの「FlexScan EV2334W-T」「FlexScan SX2462W」「FlexScan EV2303W-T」だ。液晶パネルの駆動方式ごとに、3モデルを用意した。SX2462WがIPS系、EV2334W-TがVA系、EV2303W-TがTN系だ。動画の表示性能に関連するスペックは下表に抜粋した。

今回動画再生をチェックした液晶ディスプレイ
製品名 FlexScan EV2334W-T FlexScan SX2462W FlexScan EV2303W-T
駆動方式 VA IPS TN
画面サイズ 23型 24.1型 23型
解像度 1920×1080ドット 1920×1200ドット 1920×1080ドット
最大輝度 300カンデラ/平方メートル 270カンデラ/平方メートル 250カンデラ/平方メートル
コントラスト比 3000:1 850:1 1000:1
応答速度(黒→白→黒) 25ms 13ms 5ms
応答速度(中間階調) 7ms 5ms
オーバードライブ回路

動画ブレの確認動画(モノクロ)

 モノクロ背景にモノクロの文字列がスクロールする動画を再生し、白黒の応答速度をチェックする。再生を開始すると「● ▲ ■ E I Z O 画 質」という文字がスクロールするので、文字の輪郭を注視しよう。白黒の応答速度が遅いと、文字の輪郭がブレたり、スクロールの向きと逆方向の輪郭に残像が発生したり、糸を引くような表示になり、偽色が見える場合もある。

 動画の最初は右から左へ横スクロール、次は下から上へ縦スクロール、次は左斜め上から右斜め下へスクロールだ。文字のスクロールは5回繰り返すごとに高速化し、最初は画面の端から端まで10秒程度、次が5秒程度、最後が3秒程度となる。スクロールが高速になるほど、輪郭の残像感や偽色が見えやすくなると思ってほしい。

動画ブレの確認動画(カラー)

 カラーの背景にカラーの文字がスクロールする動画。動画の内容は先のモノクロ動画と同じだが、途中で2回背景と文字の色が変化する。スクロールする文字列と動き方、およびチェック方法は、先のモノクロ動画と変らない。


 これらのサンプル動画は、応答速度のあら探しがしやすいように作ったものなので、標準的な動画コンテンツの表示ではもっと見やすい場合がほとんどだろう。実際、スクロールする文字の残像やチラツキが一切なく、完全に表示できるPC用液晶ディスプレイはまずないのが現状だ。試用した3モデルでも、スピードが上がると残像とちらつきが発生したが、文字がガタガタに崩れたり、輪郭の偽色が特に気になるようなことはなく、動画コンテンツを十分観賞できるレベルにはある。

EV2334W-Tはオーバードライブの強度を3種類から選べる

 個別に見ていくと、EV2334W-T(VA系)はオーバードライブ回路の強度を設定でき、「オフ」「普通」「強」の3通りが選べる。特にカラーのサンプル動画では、オーバードライブする回路が「無効」だとスクロール文字の「糸引き」が大きいが、「普通」ではかなり緩和され、「強」だともっと少なくなり、設定の効果がしっかり確認できた。パネル自体の黒→白→黒の応答速度は25msと遅めなので、モノクロのサンプル動画は少しもたつくが、中間階調の応答速度はオーバードライブ回路で7msまで高速化されており、通常の動画コンテンツに多いカラーの表示切り替えに不満はない。

 SX2462W(IPS系)はどちらかというと静止画に強いディスプレイだが、EV2334W-T(VA系)のオーバードライブ回路「普通」設定に近い印象で、あらは目立たなかった。パネル自体の黒→白→黒の応答速度は13msとIPS系にしては速いほうで、オーバードライブ回路の搭載によって中間階調の応答速度も7msに底上げされていることから、動画の表示はなかなか安定している。

 EV2303W-T(TN系)は黒→白→黒の応答速度が5msと最も速く、モノクロのサンプル動画はブレが少ないものの、カラーのサンプル動画は残像が見えやすい。中間階調の応答速度は非公開だが、オーバードライブ回路は搭載していないため、TN系の特性として白黒間より大幅に遅くなる階調もあるからだ。一見、TN系は応答速度が高速に思えるが、通常の動画コンテンツに多い中間階調が遅れる(ブレやすい)点は覚えておきたい。

モノクロの文字列サンプル動画を再生し、低速でのスクロールをデジカメで撮影した。左から、EV2334W-T(オーバードライブ設定:強)、SX2462W、EV2303W-Tだ。シャッタースピードは1/60秒

カラーの文字列サンプル動画を再生し、低速でのスクロールをデジカメで撮影した。左から、EV2334W-T(オーバードライブ設定:強)、SX2462W、EV2303W-Tだ。シャッタースピードは1/60秒

EV2334W-Tにおけるオーバードライブ設定の違い。左から、オフ、普通、強となっている。強度によってブレ具合が違うことが分かる

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提供:株式会社ナナオ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2011年3月31日