まさに要塞!! 世界最先端の設備を持つ「データ復旧ラボ」に潜入した業界最高峰の技術に迫る(1/2 ページ)

データ復旧業界で不動の地位を占める日本データテクノロジーが、この春、新歌舞伎座の背後にそびえ立つ、地上29階建ての「歌舞伎座タワー」に移転した。エンジニアチーム責任者である小菅大樹氏が「この移転はどうしても必要だった」と語るその意図とは?

» 2013年05月08日 09時30分 公開
[ITmedia]
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業界実績トップを誇るデータ復旧企業「日本データテクノロジー」(www.ino-inc.com)

日本データテクノロジーが運営する「データ復旧.com」

 日本データテクノロジー(www.ino-inc.com)は、「データ復旧.com」を運営するデータ復旧企業だ。故障したHDDからデータを復旧するビジネスは古くから存在しており、その歴史でみると同社は後発だが、海外の専門家たちと積極的に交流を図り、世界最先端の技術をどん欲に取り入れることで、2006年以降、業界実績で「7年連続トップ」という不動の地位を築いている。

 その技術力の高さは、日本国内の企業や官公庁だけでなく海外にも広く知られ、2012年に海外向け事業を始めてからわずか数カ月にも関わらず、すでに13カ国と取引を行うほど。日本には100社を超えるデータ復旧業者がいると言われるが、その中でも世界屈指の技術を有する同社は、まさに日本を代表するデータ復旧企業と言っていい。

 もちろん、実際のデータ復旧率も95.1%(公称)と非常に高い。これは、一般的に復旧が難しいとされる、ヘッドやプラッタが破損した「物理障害」も含めた数字であり、ファイルシステムが壊れてデータが読み出せなくなる「論理障害」に限れば、99%は復旧が可能だというのだから驚かされる。

 いまや4TバイトHDDが2万円を切る価格で購入できる時代。企業だけでなく、個人で所有するデータも増加の一途を辿り、それに比例してデータ消失のリスクも増大している。いざというときのために、日本データテクノロジー(www.ino-inc.com)の名前を覚えておいて損はないだろう。

 さて、その同社がこの春、新しい歌舞伎座に併設された地上29階建ての超高層オフィスビル「歌舞伎座タワー」に本社を移転したという。狙いは何か? 歌舞伎座タワー8階フロアに入ったデータ復旧ラボを訪問し、エンジニアチームの責任者を務める小菅大樹氏に話をうかがった。

「歌舞伎座タワー」は“要塞”だった

新しい歌舞伎座の後ろにそびえる「歌舞伎座タワー」

 125年の歴史を受け継ぎ、新たな幕を開けた第5期歌舞伎座。そこに併設される形でそびえるのが地上29階建ての高層複合ビル「歌舞伎座タワー」だ。日本データテクノロジー(www.ino-inc.com)の復旧ラボはその8階に入っている。東京・銀座の歌舞伎座とデータ復旧ビジネスというなんとも奇妙な取り合わせだが、歌舞伎座タワーはIT関連企業も入居するハイテクオフィスビルでもある。

 日本データテクノロジー(www.ino-inc.com)が今回の移転を決めたのは2012年5月ごろ。入居を公表している企業の中で、最も早く名乗りをあげたという。「わたしたちのビジネスを継続するうえで、どこよりもこの新しい歌舞伎座ビルが最善の選択でした」――同社で物理障害復旧を担当する技術エキスパートでありながら、今回のオフィス移転の指揮をとった小菅氏は、その理由をこう語る。

データ復旧事業部復旧チーム責任者の小菅大樹氏

 「これまで弊社は、『1秒でも早く、1つでも多くのデータを復旧します』という基本理念を掲げてきました。この理念をもとに前のオフィスでも、アクセスのよい銀座にラボを構え、『一刻も早くデータを取り戻したい』とHDDを持ち込まれるお客さまのご要望に応えてきました。ただ、東日本大震災が発生したとき、非常に多くのご依頼を頂く一方で、安全面において絶対の保証ができないとも感じていました。旧オフィスが入っていたビルは耐震性能が低く、震災当時は何の問題もなかったのですが、もしもう1度、同等かそれ以上の地震が起きたときに、お客さまのデータを絶対に守れるだろうか、という不安がありました。その悶々とした気持ちで業務を行う中で決定したのが今回の歌舞伎座タワーへの移転です」。

 「利益だけを考えれば、地価の高い都心にオフィスをおかず、地方に復旧拠点を移してしまうほうがよいのですが、それでは弊社の基本理念に反します。中央区という、官公庁をはじめとした国の主要機関や、大手法人さまが集まるエリアに拠点を構えることにより、重要度、緊急度が高いデータを『1秒でも早く』復旧することができます。また、この移転を機に、震災後から懸念されていた安全性の問題が解決され、『1秒でも早く、1つでも多くのデータを最も安全に復旧する』という理念に変更して再始動することになりました」と同氏は振り返る。

日本データテクノロジーは8階にある。歌舞伎座タワーは広々とした7階エレベーターホールまでは一般開放されているが、8階〜29階のオフィスエリアはセキュリティを考慮し部外者の立入は禁止されている

依頼者との打ち合わせは、プライバシー保護のために完全防音の部屋で行われる。旧オフィスは6部屋だったが、セキュリティ面を気にする顧客の来社が年々増えているため、新オフィスでは11部屋に増設した。海外から来た顧客のために、和の雰囲気をイメージした畳の部屋もあるとか

 歌舞伎座ビルは、世界的建築家の隈研吾氏と、日本を代表する設計会社である三菱地所設計により共同設計され、巨大地震に耐えうる最新の建築技術を結集することで、銀座地区の防災拠点としての機能も備えている。

 「日本最大級のメガトラス構造(地震の力を分散し、部材のたわみ、変形を防ぐ構造)や、最先端の耐震、免震、制振構造もそうですが、避難場所として3000人の被災者を受け入れることができ、災害用の食料備蓄まであるビルですからね。“銀座で最も安全なビル”ということで、お客さまの大事なデータを守るのにこれ以上の環境はないでしょう」と小菅氏は移転の経緯を語る。

 「もちろん、入れ物(建物)だけでなく、オフィス内の設備についても、災害コンサルタントを招いて、相談しながら配置しています。重要なものがある棚はできるだけ低く抑えたり、情報セキュリティの観点からオフィス内の人の導線を計算したりと、これまで以上に安全面、セキュリティ面に配慮しました」と説明しながらオフィス内を案内してくれた。

執務室内の入り口には警備員が常駐し、空港ゲートでおなじみの高精度な金属探知機が設置されている。情報漏えい対策のため記録メディアの持ち込みは一切禁止、靴の中も調べられる(写真=左)。従来の指紋認証に加え、新たに顔認証システムも導入して社員の入退出を厳しく管理している。双子も見分けられる高精度なシステムだ(写真=右)

新オフィスは敷地面積が1.5倍に拡張され、人の導線を再設計して作業効率を高めている。電話オペレーターがいる区画と復旧作業区画は、赤外線感知器によって明確に区分けされており、許可のないものが立ち入ると警報がなる仕組み。「将来的には新たなセキュリティシステムを導入したいんですよね。セキュリティ対策にやりすぎはないですから」と小菅氏は熱く語る

 また、物理復旧のエキスパートとして特に注目したのが、歌舞伎座ビルの電源供給システムだった。

 「このビルは2つの変電所から電源供給を受ける仕組みで、さらに自家発電設備まで備えているんです。停電はおろか瞬断の不安さえない、というのは物理復旧にとっては非常に大きな意味を持ちます。物理障害に分類されるHDDは、場合によっては正常な部品の移植によって一時的に利用可能な状態にし、目的のデータを吸い出すわけですが、そうした“外科手術的な復旧”はワンチャンスであることがほとんど。もしこのときに電源供給が止まれば、2度とデータを取り戻せないかもしれません。HDDの大容量化に伴ってプラッタの記録密度はどんどん上がっていますが、そうなるとHDDの物理障害が起こる可能性も増えていきます。将来的なHDD復旧にとっても、歌舞伎座ビルの電源供給システムはとても信頼できるんですよ」とのことだ。

ヘッドの交換などHDDを解体して復旧する作業は、帽子とマスクをつけた技術者がクリーンルームで行う。実はもう1つ、同社でも数名しか入室することができない研究用のクリーンルームが存在するのだが、今回は撮影が許可されなかった

部品交換のためのHDDストックも同社の復旧技術を支える資産。その数は延べ2万を超えるという。レアなHDDはオークションで入手することもある(写真=左)。RAIDの障害などにも対応する論理復旧エリア。新オフィスでは従来比1.5倍でデータコピーを完了する新システムも導入されている(写真=右)

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提供:OGID株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2013年6月7日

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