大事なデータを守るために今できることは何だろうか。NASメーカーごとに見られる故障の傾向やその対策を、データ復旧のプロに聞く。
バグのないプログラムがないように、壊れないデジタル機器は存在しない。日々増大していくデータを保護するためには、定期的なバックアップや冗長性の高いRAIDシステムを構築するのが一般的だ。これはPC USERの読者であれば、ほとんど常識といっていいかもしれない。
ただ、そうした一般的な対策だけでなく、いま自分が使用している機器で特に起きやすい障害の傾向が分かれば、もう1歩踏み込んだ対策がとれるはずだ。そこでこの連載では、データ復旧の最大手である日本データテクノロジーの技術エキスパートに、メーカーごとに見られる故障の傾向とその対策を、全8回に渡ってまとめていく。
もちろん、ここで挙げられる“障害の傾向”は、「日本データテクノロジーに持ち込まれた製品の中で」という限定的な内容だが、7年連続業界トップ※の復旧実績を持ち、量・種類ともに非常に多くの製品を扱う同社のデータには大きな意味があるだろう。またこれに加えて、対策を取っていてもなおデータが失われてしまった際に、それぞれのケースでどれくらい復旧の見込みがあるのかも聞いた。事故を未然に防ぐだけでなく、事故が起きてしまった後のことを考えておくのも重要だ。読者のみなさんにとって有益な情報になれば幸いである。
本記事で取り上げた製品に関する見解は、日本データテクノロジーに持ち込まれた製品の傾向であり、すべてに当てはまるものではありません。
―― 第1回はバッファローの製品を取り上げます。データ復旧で持ち込まれる製品の中に、特にバッファロー製でよくみられる症状や傾向はありますか?
趙氏 その前に、第1回ということでまずお断りしておきたいのが、持ち込みの多い製品がそのままイコールで壊れやすい製品ではない、ということです。これは市場に流通している数やユーザー数を大きく反映するので、人気の製品ほどウチに持ち込まれる数も増えます。
例えばバッファロー製品なら、数年前までは“銀テラ”と呼ばれる、銀色の筐体をした古い「Terastation」が多かったのですが、最近では見かけなくなった代わりに、法人だけでなく個人でも気軽に利用できるHDD2本組の「Linkstation」の持込みが非常に増えています。
また、これは特にバッファロー製品に限ったことはありませんが、持ち込まれるのはやはり4、5年前に製造されたHDDを内蔵するモデルが多い傾向にあります。先ほど挙げたHDD2本組のLinkstationも、3〜4年前ごろに製造されたウェスタンデジタル製HDDのCaviarGreen EADSや当時発売のシーゲイト製Barracudaシリーズを採用しているものがほとんどです。
バッファロー製品で発生した障害の内容を、HDDの物理的な障害と、ファイルシステムにエラーが発生する論理障害に分けた場合では、6割ほどが物理障害に該当しています。“銀テラ”のときは、OSのファイルシステムにext3を使用していたのですが、現在のモデルはxfsに変わり、以前よりもパーティションが増えています。これが直接的な要因かは分かりませんが、銀テラに比べて論理障害が発生しにくくなった印象は受けます。ただ、Terastationの「X」シリーズでは、OSを管理するファームウェアをアップデートしたらデータが消えてしまったという報告もあるので、該当するユーザーは注意が必要です。
また、極端に古い製品は、筐体不良の発生率もあがります。RAID機器に関しては筐体不良での持込み非常に少ないのですが、やはり「銀テラ」以前のものになると、筐体自体の不良で持ち込まれるケースが全体の15%を占めています。
―― 現在バッファロー製品を使っているユーザーはどんなことに気をつければよいですか。
趙氏 まずはご自分の使っている製品の型番と、中のHDDに何が使われているか再確認することをオススメします。筐体不良が発生しやすい極端に古い製品、バッファローなら「銀テラ」以前のモデルは、リプレースも視野に入れたほうがいいかもしれません。
また、HDDの耐用年数を考えれば当然なのですが、製造から5年も経ったHDDは、物理障害率がぐっと上がります。RAID 5を組んでいるので故障してから交換しても間に合うだろう、と考えるのは間違いで、もう1本のHDDが壊れる可能性は、最も負荷がかかるリビルド中に高くなります。ですので、HDDが古くなっていたら、きちんとバックアップを取ったうえで、HDDの換装も検討したほうがいいでしょう。
先ほども触れましたがTerastationのXシリーズを使っている人は、ファームウェアアップデート前に必ずバックアップを取っておくことを忘れないでください。
―― バッファロー製RAID NASユーザーがデータ復旧で依頼した場合、復旧の見込みはどれくらいでしょうか。
趙氏 もちろんケースによりますが、HDDにバッドセクタが発生した単純な物理障害であれば、ほぼ100%復旧可能です。これはバッドセクタの発生カ所がデータ領域であれば、RAIDシステムでも同様です。
HDD基板上の破損も正常なパーツの移植で95%は直せます。やや低くなるのはヘッドの不良で、理由はヘッドが押し下げられてディスクにスクラッチが入ってしまうケースがあるためです。ファームウェアの部分が傷ついてしまうと復旧の難易度が上がり、復旧率は75%くらいになります
これらの復旧率は、バッファロー製品固有のものというよりは、使用されているHDDに依存する数字ですが、いずれにせよ、バッファロー製品で使用されているHDDはほぼすべて弊社に蓄積されているので、「このモデルだから難しい」ということはありません。
一方、論理障害の場合は、2013年に依頼されたバッファロー製品のうち96%はデータを復旧しています。RAIDシステムの論理障害は基本的に、技術者が16進数で表示された画面を見ながら手作業でRAID構成情報を修復していくのですが、バッファロー製品では、これまでの研究によって復旧に必要な特定の情報を即座に割り出す独自技術を開発しているため、作業時間も従来の3割ほどに短縮しています。
RAID 5のシステムで2台のHDDが同時に故障し、RAID構成情報の破損が破損したり、リビルドを重ねてフォーマットされてしまったといった場合でも復旧実績がありますので、是非安心してご依頼いただければと思います。
対策のポイントまとめ
なお、日本データテクノロジーでは「データ復旧のプロ直伝。RAIDトラブル時の対処法」としてブログも公開しているとのこと。バッファローNAS機器で表示される“エラーメッセージ”について解説しているので、いざというときに役立ちそうだ。
データ復旧事業では、個人情報や企業の重要な情報が入った数多くストレージを取り扱う。このため、何よりも重要なのが情報の管理体制だ。
日本データテクノロジーでは、指紋認証/顔認証システムによる社員の入退出管理とともに、飛行機に搭乗する際と同じ精度を持つ金属探知機を入り口に設置し、執務室内への記憶媒体の持ち込みを一切禁止している。高度な復旧技術だけでなく、こうした情報保護に対する取り組みも7年連続業界実績No.1を誇る同社の特徴だ。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2013年10月28日