エプソンダイレクトのPCはなぜ高品質なのか。長野県塩尻市にある多数の試験施設を見学し、その秘密に迫る。
エプソンダイレクトの「Endeavor」シリーズは、4億通り以上のBTO(Build To Order)を実現しながら、短納期と高信頼性も兼ね備えるという難しいテーマを自らに課している。さらに、信頼性の裏付けとして、中1日で修理する「1日修理」、最長6年という長期の定額保守メニューも用意する。
前回の取材で明らかになったように、このようなことができる背景には「BTOを想定したオリジナル設計」「生産とプログラムの連携による生産体制の整備」「開発段階からの徹底した品質管理」といった秘密があった。
自社製品の品質に対する絶対の信頼が裏付けとなっているわけだが、この信頼はどのようにして生まれているのか、今回は「開発段階での品質管理」にフォーカスし、部品の評価、製品の検査を行う施設の現場を取材した。
エプソンダイレクトは、その名称通りセイコーエプソンを中心としたエプソングループの一員だ。同社を含めたグループ会社は、世界で86社(国内16社、海外70社)にも上り、家庭向けからオフィス、産業用まで広範囲に渡るプリンタ事業の他、プロジェクター、ウェアラブルデバイス、時計、産業用ロボットなど、幅広い事業を世界規模で展開し、売上収益は1兆円(連結、2017年3月期)を超える。
高度な信頼性を求められる産業用を含めた広範な電子機器、精密機器の開発を行っていることから、製品や部品を評価、検査するための高度な設備をグループ内で所有しており、セイコーエプソンの本社がある長野県の事業所内に設置している。
エプソンダイレクトのPCは開発段階でそうした数々の設備を使って評価を行うという。今回はその1つ、長野県塩尻市にあるセイコーエプソン広丘事業所の設備を見学した。
広丘事業所にある「半無響室」は、動作音の測定に使われる施設だ。室内の底面(床面)以外の5つの壁面全てに吸音材を張り巡らして、壁からの反射音がない環境を作り出し、機器の動作音を測定する施設である。
広丘事業所にあるこの「半無響室」は、竣工当時(1987年)開発・設計を目的とした「無響室」だった。「無響室」は、床面を含めたすべての面に吸音材が張られ、全方向に放射される音を測定できるため、開発・設計用途として優れている。
しかし、時代の流れとともにオフィス機器の動作音測定に関する国際規格(ISO7779)が整備され、「半無響室」における測定の要求が高まった。そのため2013年度に改修工事を行い、床面のみ音が反射する「半無響室」となった。
吸音材としては、楔(くさび)形の「グラスウール」が使われている。音が反射しないため、室内に入っただけで、少しばかり重苦しいような独特な感覚がする。手をたたくと、音が広がらないことがはっきりと分かるほど。マイクスタンドが4基あり、4方向から測定していた。
エプソンダイレクトのWebサイトで確認できるスペックには動作音が記載されているが、これはここで測定されたものだ。実際の測定時には半無響室は無人の状態となり、別室でモニターしながら測定を行う。スペックに記載される動作音は、ユーザーの使用状況を考慮した正面からの音圧だが、4方向全てのデータを周波数帯別に取得している。
動作音の基準は、モデルの位置付けによっても異なるが、先代モデルと同等かそれ以下が基本。単に音圧の数字が下回れば良いというものではなく、不快なうねり音がないか、放熱ファンの回転速度の変化がうるさくないかといったところまでチェックする。
動作音は、放熱設計と密接な関係があり、小さくて高性能なモデルほど「十分な放熱性能を確保しつつ動作音を抑える」ことの難度が上がる。新規に開発されたモデルでは、動作音測定と放熱試験とを何往復もすることがあったという。
さらに、通常の動作時のみならず、負荷の掛け方を変えたり、光学ドライブを利用したり、オプションを付けたりした場合など、公表はしないものの、さまざまなデータを取得し、製品開発へ生かしている。
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提供:エプソンダイレクト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2018年3月27日