では実際にTS-328でRAID5を構成してみよう。インストールの途中までは特に難しいところはないので画面のみで紹介する。
「クロスプラットフォームファイル転送サービス」の設定の次に出てくるのが「ディスク構成の選択」だ。ここではボリュームタイプとRAIDタイプの2つを選ぶ必要がある。その前に「ストレージプール」について説明しておこう。
複数のディスクをまとめてRAIDを構成した際、ベイ数が多いと複数のRAIDグループを作成できる。例えば、6ベイモデルで6台構成のRAID 5を組もうとすると利用効率は83%と非常に高くなるが、同時に2台故障すると回復は不可能になる。そんな偶然ありえない、と思われるかもしれないが、実は珍しい話ではない。
RAIDの場合は同時に購入した同一ロットの同型ディスクを使うことが多く、それらを同じ環境で同じアクセス頻度で使用するため、経年的な劣化による障害は近いタイミングで複数台に起きやすい。
さらに故障したディスクを交換するとRAIDの再構築のために既存ディスクの読み出しが激しく行われる。それが“最後のとどめ”となって再構築中にもう1台故障してしまうことがあるのだ。
台数が多ければその分再構築にも時間がかかり、負荷も大きくなる。効率が良いからといってやたらとRAID 5の構成台数を増やしてしまうとそうした危険も大きくなる。そのため、6ベイモデルで3台構成のRAID 5を2つ作る、という判断もあり得るだろう。
だが、そうするとせっかく複数のディスクをRAIDでまとめても、空き容量の足りないRAIDグループと、スカスカなRAIDグループができてしまいかねない。そこでQNAP NASに導入されたのが複数のRAIDグループを1つにまとめたストレージプールだ。
例えば、RAID 5を2つ作って1つのストレージプールにまとめ、そこにボリュームを1つ作る。そうすれば全ての共有フォルダでディスク全体を分け合うことができるようになる。もし、1台のHDDが故障しても1つのRAID 5グループだけ再構築すればよい。
ストレージプール上に作成するボリュームタイプは3つある。
1、静的ボリューム(シングルボリューム)
静的ボリュームはRAIDグループ(RAID 5などでまとめられたディスク群)内に直接作成される、最もシンプルな形だ。旧来からのものであり、単純に「RAIDグループそのもの」と考えればいい。
2、シックボリューム(マルチボリューム)
シックボリューム(マルチボリューム)はストレージプール上に作成されるボリュームで、静的ボリュームよりもパフォーマンスは劣るものの、後述のシンボリュームよりもパフォーマンスは良い。また、ストレージプールに未割り当て領域があればデータを保持したままボリュームを拡大できるため、パフォーマンスと柔軟性を両立させた構成といえる。なお、シック(Thick)はシックプロビジョニングの意味で、必要なリソースをあらかじめ確保しておくことを指す。
3、シンボリューム(マルチボリューム)
シンボリュームはシックボリュームと同様、ストレージプールに作成される。シン(Thin)はシンプロビジョニングの意味で、「必要になったときに確保する」ことを指す。シックボリュームが事前に領域を確保しておくのに対し、シンボリュームはデータが書き込まれるときに初めて領域を確保する。そのため、実際の容量よりも大きな領域を確保できる。より柔軟な運用が可能である半面、シックボリュームと比較してもパフォーマンスは低下する。
各ボリュームのパフォーマンス計測結果は次の通りだ。TS-328とSeagate ST6000×3台で構成したRAID 5上にそれぞれのボリュームを作成し、Core i7-7700と16GBメモリを搭載したWindows 10上のCrystal Disk Mark x64版 6.0.0で計測した。シーケンシャル性能はほぼ変わらず、ランダムアクセスは静的ボリュームとシックボリューム・シンボリュームで13〜60%の速度低下が見られる。
シックボリュームとシンボリュームは「マルチボリューム」と注意書きがあるように、1つのストレージプール上に複数作成できる。シックボリュームとシンボリュームの混在も可能だ。
だが、せっかくストレージプールで1つに統合したのに、その上のボリュームを分割する意味があるのか、また、TS-328のようにRAIDグループが1つしか作れないモデルでシックボリュームにする意味はあるのか、という疑問を持つ人もいるかもしれない。それを明らかにするにはまず、スナップショットについて説明する必要がある。
スナップショットはシックボリューム・シンボリュームで利用可能な機能で、ある瞬間のボリュームのイメージをそのまま保存するものだ。2回目以降のスナップショットは前回からの変更点のみを記録して容量を節約する、ボリューム全体の増分バックアップのような機能だ。スナップショットの保存領域はストレージプール上の空き領域であり、空き容量が少なくなってくると古いスナップショットから自動的に削除される。これは静的ボリュームにはない機能だ。
このスナップショットはボリューム単位で作成されるため、フォルダ単位でスナップショットを取る、取らないといった設定はできない。だが、スナップショットを取るフォルダと取らないフォルダでボリュームを分けてしまえばこの問題は解決する。
さらにシックボリュームはストレージプールに空き容量があればボリュームサイズを拡大できる。当初はストレージプールに空きを作っておき、利用状況に応じて拡張するなどの柔軟な運用が可能だ。
台湾メーカー製を中心とするNASキットにはLinuxベースの独自OS、パッケージマネージャーによる機能拡張といった共通の特徴がある。だが、特定用途を想定して導入する場合を除き、NASとしての真価はやはり、Network Attached Storage、ネットワークに接続されたストレージという点に表れる。
その点、QNAP NASはストレージ管理というNASの基本的な機能部分が頭ひとつ飛び抜けている印象だ。RAID 5にジャストフィットする3ベイモデルのリリース、スナップショットやシンプロビジョニングをサポートするストレージプールの採用など、QNAP NASの進化はまだまだとどまるところがなさそうだ。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2018年5月31日