EZ DIYではないが、今回の組み立てで楽だと感じたのがEPS12Vの位置だ。本製品を含むMSIのIntel Z890シリーズでは、なぜかEPS12Vがメモリスロット横にある。通常ならバックパネルの後ろにあるが、PCケースの壁、トップファン、VRMヒートシンクに囲まれた窮屈な場所でマザーボード組み込み後にEPS12Vケーブルを着脱するのは困難だった。
これがメモリスロット横に移ったことで、周囲のクリアランスも十分に確保され、マザーボード組み込み後でも楽々とEPS12Vの着脱が可能になった。
もう1つ、作業の手間を軽減してくれるのが、「EZ Front Panel Cable」だ。PCケースにある電源スイッチやLEDランプ用のフロントパネルケーブルは、マザーボード上のピンヘッダーに挿す必要がある。
通常は2本組ないしはバラバラのケーブルで、電源スイッチ/リセットスイッチ/電源LED/アクセスLEDと4種個別に接続していく。マザーボードをPCケースに組み込んだ後では、窮屈なケース内、さらに細いピンに挿していく作業はけっこう神経を使う必要があった。
EZ Front Panel Cableは、これを中継するケーブルだ。先にマザーボードにEZ Front Panel Cableを挿しておけば、少し延長された見やすい位置でケーブルを接続でき、あるいは逆にフロントパネルケーブルをEZ Front Panel Cableに挿してから、マザーボードに接続することもできる。若い人はともかく、老眼が始まった年代の人方には必須のEZ機能だ。
なお、安価なケースや古いケースでフロントパネルケーブルがカラフルなものも、ブラックケーブルのEZ FRONT PANEL CABLEを使えば見栄えを良くできる。
簡易水冷CPUクーラーを使う場合、ファンやLEDのケーブルをどうしたらキレイに隠せるかに頭を悩ます方も多いだろう。2in1や3in1ケーブルで集約できるものでも、ファンとLED、2系統は必ず残る。
EZ Conn-Designは、ファン用/ARGB LED用だけでなく、製品によってはUSB用のケーブルを1本にまとめられる中継ケーブルだ。1本化できるので見栄えがよくなるし、メンテナンス時もあれこれ取り外す手間を省ける。
おおよそ組み上がってきたところで、無線LANのWi-Fiアンテナを接続する。いわゆる同軸SMAコネクターのWi-Fiアンテナは従来、根本部分のナットをぐるぐる回して固定していた。ここをはめ込み式に改めたのが「EZ Antenna」だ。
ちなみに、本製品は標準で最新の無線LAN規格であるWi-Fi 7(最大320MHz)をサポートしている。
組み立てが完了したら、ケーブルの接続などを再確認して電源をオンしよう。この時、現在のPCでは初回にメモリートレーニングというものが行われるのだが、これがけっこう長い。電源を入れたのにディスプレイ画面に何も映らない状態が続くと不安を覚える人も多いはずだ。
他にも、組み方やパーツ構成によってはCPUに問題があったりグラフィックスカードに問題があったりすることがある。しかし安心してほしい。「EZ Debug LED」を備える本製品なら、まず現在どのステップにいるのか把握できる。EZ Debug LEDはCPU/DRAM(メモリ)/VGA(グラフィックスカード)/BOOTという4つのLEDで構成されており、現在どの段階にあるのかを確かめられる。
次々にステップが移っていけば問題なし、どこかで止まっていればそこが問題箇所というわけだ。
具体的に何が問題かというのは、その横になる「EZ DIGI-Debug LED」の助けが必要だ。こちらはPOSTコードを表示するもので、もしも途中でPOSTコードが止まっていればそのコードを頼りに何が問題なのかを特定できる。
EZ Debug LEDは、ミドルレンジやエントリーゲーミングクラスの製品にも採用されている。一方でEZ DIGI-Debug LEDが搭載されるのは、本製品などのハイエンドモデルだけだ。
無事にPCが起動したら、BIOS(UEFI)以降のEZ機能をスクリーンショット形式でいくつか紹介しよう。
電源設定は統合ユーティリティー「MSI Center」の「USER Scenario」で設定していたが、いちいち切り替えるのは手間がかかる。そのような悩みは「MSI AI Engine」にお任せだ。AIが状況に基づく最適な電源設定、ファン回転数の設定を適用してくれる初心者がBIOS設定をしようとしても「どの項目?」「数値はどのくらいが妥当?」が分かりづらい。それらの悩みを、まず「MSI Performance Preset」が手助けしてくれる。
基本はデフォルトのままでOKだし、パフォーマンス設定もパフォーマンスと引き換えに消費電力が大きくなったり動作音が大きくなったりするのとのトレードオフと考えればよい。オーバークロックではないので、システムにダメージを与えない範囲のものだ。
NPUのオーバークロックも、AI世代のCPUでは注目機能だろう。また、OSをインストールした後のデフォルトではPC性能を引き出せないというのも、初心者には気づきにくいところだ。ここが分からない人は、とりあえず「MSI AI Engine」をオンにすればよい。分かる人はUSER Scenarioから最適なものに適宜切り替えよう。
最後に、本製品とエントリーモデルでのEZ DIY機能の実装の違いもまとめた。MSI自体、全ラインアップでEZ DIY機能の普及を進めているためエントリーモデルでもかなりカバーしている。しかし、ハイエンド(構成の)ゲーミングPC固有の機能や固有の問題を解消する機能となると、本製品のみの実装となる。
実際にPCを1台組んでみて、EZ DIY機能のおかげで十分に時間を短縮できたと感じる。そして肝心なのは、自作PCに慣れている人も楽に組めて親切だと感じられるが、慣れていない人の方がよりEZ DIYの恩恵を感じられるだろう点だ。
同社のミドルタワーケース「MPG GUNGNIR 300R AIRFLOW 」に、Core Ultra 9 285KのCPUと同社製グラフィックスカードの「GeForce RTX 4070 Ti GAMING X TRIO 12G」を組み込んでみた初めて自作PCを組み立てる人は、本当に問題なく組み立てられるだろうか、どんな工具が必要だろうか……といろいろと不安をお持ちだろう。もちろんマザーボードにも組み立てマニュアルが付属するのでご覧いただくのがベストだ。
それでも不安でWeb上の組み立て講座も参考にすることもあるだろう。筆者もそういったコンテンツを制作したことがあるが、その中で注意が必要な箇所として重点的に解説を割いた工程の一部を、EZ DIYならすっ飛ばしてくれる。
ハイエンドゲーミングPCを目指す人にとって、MPG Z890 CARBON WIFIのスペックは十分納得できるものと思うが、さらに一歩、組み立て手順までイメージしていただくとMPG Z890 CARBON WIFIがより魅力的な製品だと気付くことだろう。
なお同社は、2025年2月28日まで、「冬こそ自作PCレビューキャンペーン」を展開中だ。MPG Z890 CARBON WIFIを含め、対象のマザーボードや一部の同社製簡易水冷クーラー/電源ユニットを購入後に、指定サイトでレビューを投稿した全員が2000円分の「えらべるPay」をもらえる。
お得なキャンペーンなので、ぜひ活用してほしい。
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