> レビュー		2003年5月27日　03:00 PM 更新

カードサイズで11.7ミリ！　デジカメの概念を変えたEXILIMの3代目
カシオ計算機　EXILIM EX-S3（2/2）

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デジカメの概念を変えたEXILIMシリーズの3代目

　「EXILIM」シリーズのヒットでデジカメ市場でシェアを上げてきたカシオ計算機の3代目EXILIMが300万画素の「EX-S3」。2代目が初代EXILIMのCCDを200万画素に変更した程度のマイナーチェンジだったことを考えると、フルモデルチェンジしたこのEXILIM EX-S3こそが正統な2代目といってもいいだろう。

　相変わらずカードサイズで、薄くて（11.7ミリ：突起部を除く）て軽くて（72グラム）どんなポケットにもさっと入る超コンパクトながら、安いCMOSではなく高画質なCCDを使い、きれいな液晶モニタを搭載し、リチウムイオン充電池にSDメモリーカードと、デジカメと呼んで恥ずかしくない基本性能をしっかり確保しているのは注目に値する。

カードサイズのボディの右上にレンズがぴょこんと飛び出ているユニークなデザインがEXILIMの特徴。握る箇所にはEXILIMのロゴが入ったプレートがあり、薄い割にグリップ感もしっかりしていて好感が持てる

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レンズ部や背面の一部（おそらくはストロボチャージ用のコンデンサだろう）が盛り上がってはいるものの、ボディは12mm以下。ポケットに入れているのを忘れるほどの薄さといって過言ではない。だが、薄さ優先とはいえ、マクロモードがないのは残念

320万画素CCDを搭載して画質もそこそこ向上

　1/1.8型と大きなサイズの320万画素CCDを搭載し、レンズはF4.2の35mm単焦点（35mmフィルム換算）。絞りはF4.2のみで、明るいときはシャッタースピードを上げて対処する仕組みだ。シャッタースピードはCCD電子シャッターを使って最高1/6400秒まで上げられる。1/1.8型という大きなサイズのCCDを使った理由は、高速な電子シャッターを搭載可能なプログレッシブスキャンタイプにする必要があったためだろう。

　F4.2と暗めなのはパンフォーカスのため。被写界深度を深くして、近くから遠くまでピントが合うようにする必要があるからだ。画素数が多いほど、CCDが大きいほど被写界深度は浅くなるため、200万画素のS2よりもさらに絞り値が上がったのである。

　ピントが合う範囲は80cmから無限遠。マクロモードを持たないため、近いものを撮るのは苦手だ。それが非常に残念な点。サードパーティからレンズ部にかぶせるマクロ用コンバートレンズも出ているが、ここは同じようなキャップ式でもいいからメーカー純正を用意してほしい。

　レンズが大きくなった分本体からレンズ部が4ミリほど飛び出ているが、実用上は全く気にならない。それどころか、4ミリ飛び出させただけで自動開閉のレンズ保護シャッターまで組み込んだ方に注目したい。

　パンフォーカスだとAF機構が不要なため、半押しという概念もない。シャッターを押すとすぐ撮れるし、ピンボケの心配もないというのは大きなメリットだ。AFロックの必要もないし、0.01秒の超高速レリーズタイムラグと相まって、撮ろうと思ったら即座に撮れる。このスピード感がEXILIMのウリの1つだ。

　逆に、AEロックができないため、頻繁に露出補正を行うことになるかもしれない。露出補正は十字キーの左右に割り当てられているため、簡単に行うことができる。ただし、大きなモニタをおいた関係上、十字キーがかなり右に寄ってしまったので、露出補正時に親指を大きく曲げねばならず、指がつりそうになる。ある程度は仕方ないところか。

　画質は、今までのEXILIMより上。発色もいいし、なかなかきれい。300万画素機としてはディテールはつぶれているし、エッジ部分も無理に強調しているためかノイジーだし、暗部もざらついているしで決してよいとはいえないが、画素数が多い分つぶしがきいており、今までのEXILIMよりは上だ。これを200万画素モードくらいで使うのが一番いいかもしれない。

　とはいえ、晴天下で1.5−3メートルくらいの距離のものを撮ると、ノイズも気にならず荒れもせず、けっこうさわやかに写る。このくらいの距離で撮るのが一番向いていて、遠いものや近いものはついでに写っている、くらいの気持ちでいた方がいいだろう。ちなみにこれは、あくまでもAF機構をきちんと備えた他の300万画素デジカメと比べての話。EXILIMという製品の性格を考えると、あまり無理をいってもしょうがないだろう。

　撮影機能はフルオート中心だが、ISO感度、ホワイトバランス（カスタム設定も可能）、露出補正を変更できる。さらにベストショット機能を使えば、風景モードではより色が鮮やかになるなど、写りのコントロールが可能だ。30秒までの音声付きムービーが撮れるのもいい。

2型の液晶モニタが素晴らしく楽しい！

　EXILIM S3のもう1つの特徴は、カードサイズで11.7ミリという薄いボディに2型の液晶モニタを搭載したこと。もともと大きなパネル（多くのコンパクトデジカメは1.5型を搭載している）なうえにボディがカードサイズと小さいため、余計でかく感じる。

小さなボディに大きなモニタが一番の特徴。モニタが大きいために円形十字キーが親指に隠れる位置にきてしまうのはしょうがないところか。前モデルの十字スティックから円形十字キー＋SETボタンに変更され、誤動作が減って使い勝手もよくなった。背面のボタンは非常に少なく、ほとんどの操作は液晶メニューを介して行う

　この液晶モニタは画素数こそ多くないが、大きくて明るいため、使っていて気分がいい。カシオはこのモニタをカメラでの再生を楽しむためのものと位置付けていて、そのためのユニークな機能としてカレンダーがある。この機能は、画面にカレンダーを表示し、その日に撮影した写真があれば日付にサムネイルを1枚表示してくれるというもの。

　記録メディアをフォーマットしないで入れっぱなしで撮りだめていく人には、すごく便利で楽しめる機能だ。また、再生時にSETボタンを押しながらシャッターを押すと、画面が上下反転するという小技もある。これは向かい合わせの人に写真を見せるときに便利だ。

　充電やパソコンとのデータのやりとりはクレードルを介して行うのだが、クレードルには液晶モニタを手前にしてセットするのが面白い。この状態でPHOTOボタンを押すと自動的にスライドショーが始まり、USBボタンを押すとUSBマスストレージクラスで起動してパソコン側にマウントされ、転送が可能になる。

小型のクレードルに液晶モニタを手前に向けてセットするのがユニーク。PHOTOボタンとUSBボタンが用意されている

　パソコンとの連携で機能を追加していこうという試みもある。Web上に公開された「PhotoTransport」を使うと、パソコン上の任意の画像をEXILIM用に変換して転送する機能を追加できる。好きな画像をEXILIMに入れて持ち歩けるわけで、地図を入れておけば見ながら歩けるなど、工夫次第でいろいろ使えるわけだ。

　EXILIM用プラグインともいえる追加機能もダウンロードして使える。現在のところ、任意の画像をランダムに素早く表示してボタンを押したところで止まるというルーレット機能や、エンディングにアニメーションを追加するエンディング機能などが公開されている。

　カメラとしては決して高性能でも高画質でもないが、毎日気軽に持ち歩いて気軽に撮りまくり、気軽に見て楽しむという、新しいタイプのデジカメとしてはなかなか遊べる。遊びが中心だからこそいろいろなアクセサリが出ているし、Webを通してあれこれと新しい遊びが追加されていくのも面白い。

　よってEXILIMは、「写真を撮る」ではなくて、「日常を記録する」「友達とのコミュニケーションに利用する」「写真で遊ぶ」という使い方をしたい人のセカンドデジカメなのだ。メインカメラにはなりづらいが、この薄さ軽さでこの性能を確保しているデジカメは他にはなく、十分尊敬に値する。

EXILIM EX-S3：作例

　このページの画像はWeb掲載用に加工してあります。リンクをクリックすると、手を加えていないオリジナルの画像を見ることができます。

花屋さんの前でさっと撮影。発色はなかなかよくて満足できるが、やや日陰なのでよく見ると少しざらついている。でもこのくらいの距離の被写体が一番きれいに撮れる。絞り：F4.2、露出：1/250sec（オリジナル画像はこちら）

パンフォーカスなので遠くの建物はちょっとざらついててディテールがつぶれているが、手前の看板はくっきりと撮れている。でもコントラストや発色はよく、目を凝らしてディテールをチェックしない限りなかなかいい絵だ。絞り：F4.2、露出：1/640sec（オリジナル画像はこちら）

[荻窪圭, ITmedia ]

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