> ニュース 2003年6月4日 06:17 PM 更新
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FuturemarkとNVIDIAは本当に和解したのか?

自社の3Dベンチマークを「騙す」ドライバ改変を行ったとして、FuturemarkはNVIDIAを糾弾していたが、それを取り下げた。しかし、Futuremarkは完全に納得したわけではなく、その主張を撤回していない。

 ベンチマーク用ソフトウェア3DMark03の開発会社であるFuturemarkは、グラフィックチップベンダーのNVIDIAがNVIDIA製品のソフトウェアドライバを改変し、ベンチマークを騙す行為をとったとして糾弾していたが、それを取り下げた(関連記事)。しかし、同社は依然、NVIDIAの手法には反対しており、オリジナルのベンチマーク結果を取り下げるには至っていない。

 Futuremarkは表現は変更したものの、NVIDIAがドライバに特定のアプリケーションを最適化する決定をし、特定の3DMark03テストの存在を検知し、より高いベンチマーク結果が出るようにグラフィックチップのパフォーマンスを変更したという主張そのものは変えていない。これらのベンチマークはプロセッサまたはデバイスのアプリケーションの振る舞いをシミュレートするのに用いられるソフトウェアテストである。ハードウェアの購入者が異なる製品のパフォーマンスを比較するために設計されている。

 Futuremarkは5月23日に、NVIDIAが3DMark03テストに使われているシェーダーのいくつかを特定し、ドライバを不当に変更したとの確信のもとに、8個の実例を示した7ページにわたるレポートを掲載した。シェーダーとは、3Dオブジェクトの表面を描画するためのプログラムである。3DMark03のシェーダーはNVIDIAのドライバでより高速に実行されるが、そのぶん画像の品質が犠牲になっているとこのレポートは結論づけている。

 「この『騙し』行為は最適化とはまったくほど遠いものだということに注意してほしい。効率化を目的としたドライバのコード最適化は、ゲームのパフォーマンスを上げるためにしばしば用いられるもので、妥当なものだ。というのは、レンダリングされたイメージはゲーム開発者が意図したものと合致しているからだ」とこのレポートの中でFuturemarkは説明している。

 しかし、少なくともFuturemarkの文章表現は和らいだものに変わっている。

 フィンランドのエスポーに本社を置くFuturemarkは、月曜日(米国時間)、次のような声明を自社のウェブサイトに掲載した。

 「FuturemarkはNVIDIAの最適化戦略についての理解を深めた。その結果、FuturemarkはNVIDIAのドライバ設計はベンチマーク操作でなく、アプリケーションの最適化を目的としたものであるという結論に至った」。

 しかし、特定アプリケーションへの最適化はFuturemarkのルールでは依然、禁止事項であるとFuturemarkの販売マーケティング担当執行副社長であるテロ・サーキネン氏は説明する。ベンチマーク専門会社であるFuturemarkが最新の声明を掲載したのは、FuturemarkとNVIDIAのあいだの「トラブル」が続くことは業界にとってよいことではないからだ、と同氏。

 NVIDIAは自社の同じドライバをそのまま提供し続けており、Webサイトから引き続きダウンロードが可能であると、NVIDIA広報担当のデレク・ペレズ氏は述べている。カリフォルニア州サンタクララに本社を持つNVIDIAは、Futuremarkの反対にはあっているが、なにひとつ悪いことはしておらず、引き続き最適化は続けていくとペレズ氏は主張している。

 「彼らはたくさんのルールを作っているが、アーキテクチャーの複雑さを理解していない」とペレズ氏。「どのCPUでも、どのGPUでも特定アプリケーション向け最適化は行われている」(ペレズ氏)。

 ライバル企業のATI Technologiesは、中傷合戦が続くのを期待していた。「金持ちで、高価な弁護士を雇うことができる大会社が小さい会社を屈服させるのは、恥ずべきこと」とATIのPR担当ディレクターであるクリス・エブンダン氏は話している。

 5月23日のレポートと共に、Futuremarkはテストに必要な負荷には影響しない、わずかに異なるコードを組み込んだ新しい3DMark03ビルドをリリースした。このベンチマークでは、NVIDIAのGeForceFX 5900 Ultra processorのパフォーマンスが24%下がっており、サーキネン氏によれば、最も正確なプロセッサパフォーマンスを示しているという。

 カリフォルニア州チバロンのJon Peddie Research社長であるジョン・ペディー氏によれば、この問題は、NVIDIAとATIが異なるアーキテクチャーのグラフィックプロセッサを開発しているためだという。

 NVIDIAは16ビットと32ビットアーキテクチャーをGeForce FXチップに組み込んでいるが、ATIはRadeonシリーズに24ビットアーキテクチャーを実装しているとペディー氏。3DMark03はMicrosoftの最新のDirectX 9.0グラフィックテクノロジーに向けて書かれたプログラムだ。そしてDirectX 9.0には24ビットアーキテクチャーが使われている。

 一般的に、24ビットアーキテクチャーは32ビットアーキテクチャーよりもレンダリングを高速に実行できるが、シャープなイメージを利用できるアプリケーションならば32ビットアーキテクチャーのほうが画質はよい。このため、NVIDIAでは24ビットシェーダーを12ビットシェーダーに置き換えたが、その結果として画質が犠牲となったとペディー氏は解説する。

 このことでNVIDIAはFuturemarkと数百人ものゲーマーから「不正」だと糾弾された。なぜならNVIDIAは表示される画像の品質を変えたからだ。ペレズ氏は火曜日、最適化のせいで画質が低下したということについては否定した。

 Futuremarkはレポートの中で、ATIも自社ドライバの中で最適化を行っていると指摘しているが、ATIはこれに反論しており、ATIは3DMark03の命令がプロセッサの中を流れるときの順序を変更しているだけで、命令そのものは変えていないという。

 しかし、ATIのドライバは3DMark03テストを認識しており、これはFuturemarkのルールで禁じられている行為だとサーキネン氏は主張する。ATIはこの最適化をドライバから取り除き、3週間以内に予定されている通常のリリーススケジュールに合わせて新しいドライバをリリースすると、エブンダン氏は説明する。

 この物語の終わりは、不正と最適化の間で不明瞭になっている。Futuremarkはゲームプレイを改善する一般的な最適化には反対していない。しかし、ベンチマークソフトウェアの存在を検知して、パフォーマンスを調整すると、Futuremarkは結果の信頼性を保証できなくなるとサーキネン氏は説明する。

 どの製品を決定するかどうかをベンチマークに頼っているユーザーは、多くの情報ソースにあたって、1つの結果だけに依存しないことだ、とペディー氏は指摘する。

 「一つの数値だけしか算出しない、一つのベンチマークだけを使って複数のアーキテクチャーを評価することはできない。それは不可能で、間違いやすく、怠惰なことだ」とペディー氏。

関連記事
▼ NVIDIAのベンチマークは「最適化の結果」
▼ 「NVIDIAがベンチマーク操作」の指摘

関連リンク
▼ Futuremarkの声明

[Tom Krazit, IDG Japan]

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