10人分の仕事を1台で実現、鉄筋結束作業の自動化ロボット

千葉工業大学と大成建設は、鉄筋工事の鉄筋結束作業を自動化するロボットを開発した。身体的負担が大きい鉄筋結束作業の省力、効率化により、鉄筋工事の生産性向上を狙う。

» 2017年10月18日 06時00分 公開
[松本貴志BUILT]

作業負荷の高い鉄筋結束作業を自動化

 千葉工業大学と大成建設は2017年10月16日、鉄筋工事の鉄筋結束作業を自動化するロボット「T-iROBO Rebar」を開発したと発表した。中腰の姿勢で作業をする必要があるなど、単純作業でありながら負荷の大きい鉄筋結束作業をロボットで自動化することで、鉄筋工の負担軽減や鉄筋工事の生産性向上を見込む。現在、複数の現場で実証実験中であり、2018年度中に本格導入を予定している。

「T-iROBO Rebar」の外観 左:俯瞰図、右:側面図(クリックで拡大) 出典:千葉工業大学、大成建設

 鉄筋結束工事は、鉄筋の形状を保つように交差部分を針金などで結束する作業。建造物の骨組みを構築する鉄筋工事において、約2割の工数を占めるとされている。鉄筋の交差部を結束するという単純作業でありながら、作業は広範囲にわたり、中腰の姿勢で作業を行う作業員への負荷が課題となっていた。

 そこで大成建設は、鉄筋結束工事の生産性向上および作業員の負荷軽減を目的に、ロボットに関して高い技術力を持つ千葉工業大学と共同で、ロボットを活用した新しい鉄筋結束新工法の開発を目指した。

 今回開発したロボットは、鉄筋上を自走しながら鉄筋交差部を自動判別し、ロボットに設置された自動鉄筋結束機で結束するといった動作を繰り返し行う。動作制御において重要な要素となるロボットの位置決めには、本体に設置された複数の赤外線レーザーセンサーを利用する。周辺障害物の検知と鉄筋結束を行うエリアの判別も可能で、障害物や鉄筋の端部を検知した場合、ロボットは自動で横移動を行う。

「T-iROBO Rebar」の概要 (クリックで拡大) 出典:千葉工業大学、大成建設

 動作可能な配筋は、水平面で鉄筋間隔が10〜25cm程度のもの。仮設置時の配筋誤差も吸収する機構のため、鉄筋配置に合わせ円滑な動作が可能としている。外形寸法は640×568×315mm、重量は20kg以下で作業員1人で設置できる。容量が174Whで交換可能なバッテリーにより、5時間の連続使用が可能である。

 このロボットを導入することで、鉄筋工事の約2割の工数を占める鉄筋結束作業が大幅に省力化できるとする。大成建設 技術センター 先進技術開発部長の上野純氏はロボットの費用について「将来的には、乗用車1台分以下の金額に収めて、多くの現場で導入が可能となるようにしたい」と述べる。

「T-iROBO Rebar」が鉄筋結束を行うデモ。本体は写真上下方向に縦移動を行い、障害物や鉄筋の端部に到達すると横移動装置で本体を浮かせ横移動する。 (クリックで拡大)

 現在は、大成建設が請け負う複数の現場で、現場ニーズとのさらなるマッチングや問題点の洗い出しを行っており、2018年度から本格的に現場導入を予定している。千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター所長の古田貴之氏は「10人の鉄筋工が一日がかりで作業した500m2の鉄筋結束作業を、このロボットは1台で処理することができる。単純作業はロボットに任せ、人間は現場の複雑な作業に集中できる。」と語り、ロボットと人間の協調により、現場の働き方を変えていくことへの期待を込めた。

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