橋の塗装をレーザーで除去、10月に実用化

橋などの塗装やサビをレーザーで除去する技術を国内で初めて開発したトヨコーは、前田建設工業、第一カッター興業、デジタル・インフォメーション・テクノロジーの3社と、資本業務提携を締結した。レーザー技術の実用化は2018年10月を目指す。

» 2018年05月24日 16時30分 公開
[石原忍BUILT]

 橋などに付着したサビを除去する技術を国内で初めて開発したトヨコーは2018年5月21日、前田建設工業、第一カッター興業、デジタル・インフォメーション・テクノロジーの3社と、資本業務提携を結び、合計2億円の資金を調達した。

レーザーで橋梁の塗膜やサビを安全に

 トヨコーの開発した技術は、レーザーにより橋梁(きょうりょう)などの屋外にある鉄筋構造物に付着した塗膜・サビを取り除く、「CoolLaser(クーレーザー)」。光産業創成大学院大学と共同で開発し、これまで難しかった狭隘(きょうあい)部といった施工が困難な場所でも、サビ・塗膜を完全に除去できる。

 従来工法の「ブラスト処理」は、砂などを表面に当てて削り取るため、粉じんが飛び散る他、ポリ塩化ビフェニール(PCB)などの産業廃棄物が発生すること、鉄骨などの下地を傷めることなどが課題としてあった。

 その点クーレーザーは、高出力のレーザー光が塗装・サビの部分を瞬時に蒸発させ、微粒子を吸引する。そのため、粉じん飛散や騒音、大量の産業廃棄物発生などが抑えられ、作業環境の改善につながり、作業員の負担も大幅に軽減する。

クーレーザーの施工方法(クリックで拡大) 提供:トヨコー

 国内にある橋梁は、2023年には約4割が築50年を迎える。今後は多くの橋梁で、腐食を防ぎ寿命を延ばすため、既存の塗膜を剥がして新たな塗装を施す需要が確実に見込まれる。レーザークリーニング工法が実用化すれば、橋梁だけに限らず、鉄道の線路やタンクといった腐食防止が必要な分野での適用にも期待ができる。

 トヨコーは、調達した資金を人財確保や技術・工法研究開発・機器生産に活用し、早期にレーザー技術を実用化させる。出資社の前田建設工業はインフラ維持管理の経験と技術、第一カッター興業は専門施工会社としてのノウハウ、デジタル・インフォメーション・テクノロジーは総合的なIT開発技術をそれぞれ提供してバックアップする。

レーザー照射(上)と、レーザー照射後の塗装を除去した部分(クリックで拡大) 提供:トヨコー

 トヨコー代表取締役・副社長の茂見憲治郎氏は、実用化のめどについて、「2018年10月の実用化を目指している。2008年に弊社社長の豊澤が、光産業創成大学院大学の門をたたいて開発に着手してから、10年目にしてようやくたどり着いた。現在は、実際の橋梁でテスト施工をし、そこで出た課題を研究所内で検討している」と話す。

 これからのサービス展開については、「レーザー技術は品質、安全、機器の管理が難しいため、当面は自社で工事を受注して使用する。管理方法の確立と並行して、レーザークリーニング工法協会を立ち上げ、各施工会社に技術ノウハウの提供と装置のレンタルをしながらレーザークリーニングの周知と事業拡大を図っていく。本格的な装置レンタルは3年後までにはスタートさせたい。十分にノウハウが定着できるようになれば、将来的には販売も視野に入れていきたい」と展望を語った。

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