SLAMや振動検知センサーを搭載するインフラ点検ロボット、イクシスJapan Robot Week 2018

イクシスは、これまで培ってきたロボットなどのハード開発に加え、インフラ点検に必要なシステムの構築に力を注ぐ。周囲の地図作成と自己位置推定を同時に行うSLAM搭載の「自律走行ロボット」、振動検知センサーを内蔵した「ワイヤ吊り下げ型の目視点検ロボット」など、豊富なラインアップを取りそろえている。

» 2018年11月19日 10時00分 公開

 ロボットシステム開発のイクシスは、インフラ点検機器の先進性を追求するばかりでなく、点検品質の安定や予防保全に主眼を置く。従前より定評のあるロボットなどのハード開発に加え、実際に点検データを収集するためのシステムやソフトの構築に注力。大手ゼネコンの建設現場で採用が進むSLAM搭載の「自律走行ロボット」、高速道路の橋梁(きょうりょう)点検で活躍する「目視点検ロボット」などが、2018年10月17〜19日に東京ビッグサイトで行われた「Japan Robot Week 2018」で披露された。

SLAM搭載の「自律走行ロボット」
カメラ部分の拡大

 自律走行ロボットの3輪移動台車「iWs14」は、レーザーセンサーにより周囲の地図作成と自己位置推定を同時に行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を取り入れている。これにより、ロボットが自動で障害物を回避しながら目標位置へ移動する他、その走行位置と撮影画像のひも付けも容易にした。

 一例を挙げれば、プラントなどの自動巡回であれば、定期的にロボットを動かすだけで、それぞれの設備や壁・柱ごとの経年変化を簡単に可視化することができる。事前準備は巡回ルートの設定だけで、業務終了後の夜間にロボットが始動し、翌日の朝に収集データを確認するだけのような自動化の方法も取れる。

 基本スペックは、外形寸法がW370×D445×H290mm(ミリ)、重量が約18kg(キロ)、最高速度が1秒あたり約1m(メートル)、Li-Feバッテリー搭載・内部と外部電源の2系統から供給を受けられる。

高架や橋梁の床版下を目視点検するロボット「Rope Stroller」

 ワイヤ吊(つ)り下げ型の目視点検ロボット「Rope Stroller」は、高速道路の高架や橋梁における鈑桁の床版(しょうばん)下面、水切り部のコンクリート面など、近接目視が難しい箇所の点検を目的に開発した。

ワイヤ吊り下げ型の目視点検ロボット

 このロボットも、位置情報と合わせて画像データを収集することが可能。まず検査対象物全ての画像を連続撮影し、そのデータをPCに取込む。これを継続的に保管することで、点検員の主観による検査結果の誤差を低減するとともに、数年後に異常が判明した場合でも当時のデータを遡(さかのぼ)って確認できる。経年変化も追えることから、今後の予防保全にもつなげていけるとしている。

高速道路の橋梁などをワイヤで伝って点検

 主な構造としては、一定張力を持つ2本のワイヤ上に、6個の滑車でカメラ搭載型ロボットが吊り下がるイメージ。胴体にはPan/Tilt雲台を持ち、デジタル一眼レフカメラなどを固定する。ロボット上には6軸姿勢センサーも搭載することで、撮影対象面に常時正対するようにカメラの向きを制御している。

 一般的には、橋下にワイヤを50m張ると、揺れや弛みなどが懸念される。同社では検査対象物全ての画像保管を目指しているため、一枚でも手ブレがあれば再撮影となってしまう。

 そこで、ロボット内部に振動検知センサーを搭載し、手ブレが起きるような揺れを識別すると、カメラのシャッターが切れないような設定とした。点検員は振動の収まりを待つことになり、結果的に点検品質の安定につながる。

 基本仕様は外形寸法がW560×D565×H140mm、重量が約4kg、給電方式が外部、操縦方式が遠隔・有線(LANケーブル・電源ケーブル)、カメラ角度調整がPan軸±30度・Tilt軸±30度となっている。

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